小説

イカサマG@ME 10

舞い上がるように喜び合ったわたしたち2人。 千佳がこれほどまでに 全身を使って歓喜するような子だとは思ってなかったけど きっとそれくらい不安で それくらい嬉しかったってことだよね。 ホント…いろいろごめん。 床に捨てられたトランプを 抜いたジョーカーと合わせてまとめ 箱に仕舞うわたしと千佳。 そんなわたしたちを、座りながら見つめていた森くんは ある程度 やるべきことをわたしたちが済ませたのを確認すると ショックから、まだ床の上で倒れ込んでいる三浦の元に 膝移動でゆっくりと歩み寄り 三浦の隣りに身を寄せると 項垂れる三浦の肩にポンッと手を置いた。 その行為に三浦は顔を覆う手を解き、森くんの顔を見る。 既に顔がまっかっかだ。ホント…なんか猿みたいだな。 森くんはそんな三浦を 微笑を交えた顔で何も言わずに見つめる。 「ごめん…。」と、顔で謝っているようにも 「腹くくれよ。」と 奮起させようとしているようにも見えた。 そんな森くんの意思を感じ取ったのか 三浦は見るからに重そうな腰をゆっくりと上げる。 わたしと千佳は、そんな2人の姿と決意を目で確認し 三浦たちが身を置く部屋の隅の方を見ながら 部屋の中央付近で腰を下ろす。 いわゆる、即席の観客席って感じかな。 三浦と森くんには悪いけどさ… イカサマしてたことは内緒だけどさ… ルールだもんね、…全部、脱いでもらうよ。…ふふ。 …なーんて 自分たちが危機を回避した途端にこの余裕っぷり。 我ながら良く出来た精神構造と言うか まだまだ子供と言うか…。 わたしたち2人が部屋の中央に座って見ているのを 横目で確認した森くん。 三浦ほど顔を赤らめてはいないけど 森くんなりに少し頬を染めているように見える。 どこか大人びていると言うか すっぽんぽんになる覚悟が出来ていると言うか とにかく隣りの照れ猿と違った、厳格たるオーラを感じる。 なよなよして弱そうなイメージしかなかったけど 実際は違うのかもしれないな、とか思ったりもした。 きっと比較対象の動物が 急に弱々しくなっちゃったから 感じるものなんだろうけどさ。 「…えっと…、ここで、脱げばいいの…か?」 ピンク色の顔をわたしたちに向けながら、そう言う森くん。 「…え、う、…うん、そーだね!」 脱げばいいのか?なんて改めて聞かれちゃうと なんて答えたらいいのか 一瞬分かんなくなっちゃったけどさ。 そう…答えるしかないモンね。 ついさっきまで勝利確定に浮かれてたわたしたちだけど 森くんから発せられた重低音な問いかけによって 一気にさっきとはまた違う空気に 部屋のそれがガラリと変わったことを感知し 動揺しないはずがなく、ドキドキと胸の高鳴りが増したけど それを悟られることのないように あえて陽気にその問いに答えた…つもり。 実際、あまりにも能天気なテンションで答えたのが 逆に怪しまれたかも…なんて思ったりもしたんだけどね。 …とか そんなどうでもいいことに頭使って気持ちを紛らせたいほど これから目の前で起こるであろう出来事に 恥ずかしさを隠せなくもあり、興味津々でもあった。 だって、あのいつもバカばっかりやってる三浦が 今からすっぽんぽんになっちゃうんだよ… わたしの目の前で。 すっぽんぽんだよ、何も着てない姿だよ、つまり… …駄目駄目。 何こんな奴の裸想像してドキドキしてんのよわたし。 あくまで、こいつに大したものが付いてないってことを 確認するための罰ゲームであって 別にわたしがこいつのソレを見たいって思ってるワケじゃ ないんだから…。 …一応大前提は、改めて確認しておく。 すぐ隣りで座る千佳はと言うと… すでに顔を俯かせ、頬を少し染めながらモジモジしている。 さっきの狂喜に満ちたような姿は何処へやら… きっと千佳、男の子の裸、ましてや全裸姿なんてきっと 見たことないはずだもんね。 …かく言うわたしもだけどさ。 しかもそれが2人同時って言うね…。 余裕を撒き散らしてるわたしですら 動揺を必死で隠してるって言うのに 千佳にとっては ちょっと刺激が強すぎるんじゃないかな…なんて 一応被害者でもあるわたしの救世主兼親友を 心配してみたりもした。 そんなわたしの1人人間観察が一通り終わったあたりで ようやく森くんがその場で腰を上げる。 三浦は…どうしても腰が重いのか そんな森くんを少し収まった赤い顔で見上げている。 「…三浦、仕方ねぇじゃんもう…  俺だって恥ずかしいんだから。」 そう照れながら言い ゆっくりと上のTシャツを脱いでいく森くん。 そんな森くんの姿を目の前に、無言で顔を逸らす千佳。 と、今になって 千佳の左手がわたしの右手を掴んでいることに気づく。 自分の身に不幸が振りかかるわけじゃないんだけどね。 せめてもの照れ隠しなんだと思う。 …となると わたしの照れは一体何処に隠したらいいんだろう…。 無理だと承知の上で 必死で顔に恥ずかしサインが表れるのを抑えながら わたしは目の前のプチストリップショーに立ち向かう。 「ほらっ!!いつまで寝てんだよ。」 Tシャツと両靴下を脱ぎ終わった森くんが いつまでも座ったままの三浦を 力ずくで立ち上がらせようとする。 そんな級友兼ある意味裏切り者の行為に さすがに観念したか 「わぁったよ!!」とぶっきら棒に応えると その場で、『重いです。』と書かれているような腰を 文字通り重そうにあげる。 そして頬を赤く染めたまま、そのまま男の子らしく Tシャツと両方の靴下を 潔く…かは分からないけど一気に脱ぎ猿…いや、去る。 一瞬にしてハーフパンツオンリーになった三浦、と森くん。 何処か男子更衣室を(もちろん合法的に) 覗き見しているような感覚に陥り その勢いのままハーフパンツ、パンツと 一気に脱いじゃうんじゃないかと勝手に察し 無意識に心拍数を向上させている自分がいたけど そこはやはりしっかりとストップモードに入る2人。 千佳の握る手の力が 一瞬ギュッっと強くなったように感じたのは 千佳もそのまま、視界に2人の宝物を入れてしまうと 衝動的に感知したからだと思う。 毛づくろいをする小猿のように頭を無駄に掻き続ける三浦に さてどう脱ごうかと きっと全てをある意味諦めたような顔をして 腰に手を当て静止している森くん。 その後しばしの沈黙を経た後 森くんがきっと最後の確認の意味を込めて問う。 「…一気に脱いじゃって、いいか?」 ズボンに手をかけながら恥ずかしそうにそう言う森くんに 今までは知らなかった男らしさ 、若干の可愛さを見出しつつ 体内に溢れる、留まることを知らない ハレンチな感情を抑えようとしながらも もうすぐそこに迫った2人のシンボルを 頭で1回くらいは予想描写してみよう… なんて脳内運動をしようとする前に 早くその質疑に答えなければと勝手に追い詰められ 千佳の意見を尊重しようと誓った さっきのわたしの決意は何処へやら 無意識に、ホントに無意識に わたしは元気一杯に答えていた。 「…うん!!!」 動揺すると人間って元気になるのかな…? 何が「うん!!!」よね。 どんだけ男子の下半身に興味津々雨アラレなのよわたし…。 言い放った直後に そのおかしなテンションを一気に恥じたけど 今はそれよりも何よりもそんな わたしのメッセージを受け取った森くんの行動が気にな… 「…そうか。」 ゴミ屋敷のようにグチャグチャに散らかった頭の中を 整理整頓する間もなく、森くんがそう一言呟くと ズボンに軽く掛けた両手を、ザッと垂直に下におろした。 -「…一気に脱いじゃって、いいか?」 その言葉が意味する内容は そのコンマ2秒後ほどに、視覚を用いて明らかになる。 森くんの言う一気にとは “勢い良く一息で”…と言う意味ではなく “パンツごと”と言う意味を孕んでいたらしい。 …わたしの視野のほぼ中央に 森くんのソレが、それこそ一気に、飛び込んできた。
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