小説

イカサマG@ME 11

「…きゃっ。」 沈黙した部屋の中で、甲高く響く千佳の小さな悲鳴と わたしの左手にギュッと伝わる 千佳の恥ずかしさを表す指標。 その度合いから、いかに千佳が衝撃を受けたかが 正に手に取るように分かる。 千佳が目にしたのは…言うまでもないよね。 いやがおうでもわたしたちの視界の飛び込んできたのは 森くんが男の子だという“証”そのものだった。 森くんはそんな千佳のリアクションに きっと気づいてはいただろうけど もう引くに引けるはずもなく パンツごと脱いだそのズボンを、足からサラリと抜き去る。 …こんなあられもない姿だけど 森くんなりに、男らしくかっこよく すっぽんぽんになろうと思ったんだろうな。 でも…、途中までは良かったんだけどね。 抜き取る過程の最後の最後で足にズボンが引っかかって 申し訳ないけど、かっこ悪く体勢を崩してしまう森くん。 そして、バランスを取るべく トントンと言うツーステップで体勢を持ち直す。 その軽やかなステップが原因で 森くんのソレが ぷるんぷるんと元気良くツーアクションを起こす。 「やだぁっ。」 千佳は、その細やかな動きもしっかり見てしまったらしい。 顔は男子2人ほど染まっている感じはしないけど その仕草から 見ちゃった…恥ずかしい…どうしよう…と言う 3段階の感情を汲み取ることは、十分に出来た。 やっと全ての衣類を 自分の体から取り去ることができた当の森くんだけど 「きゃっ。」「やだぁっ。」と言う千佳の短い感嘆語から わたしたちが、しっかり自分のゾウさんを確認したことも 容易に把握できてしまっているであろう時分 その恥ずかしさから わたしたちと目を合わせようとは絶対にせず 脱ぎ去ったパンツ入りズボン (森くんがノーパン主義者でない限り)を 床に投げ捨て 所在なさげに、腰に両手を当てて俯いていた。 …ホントになっちゃった、…まさにすっぽんぽん。 何も着てない…生まれたままの姿。 生まれたときときっと明らかに違うのは 森くんの股の間にポロンと垂れ下がるソレの上に、少しだけ 大人の証…毛、…みたいなものが チョロチョロ生えていること…かな。 大きさも…なかなか立派…かな。 少なくとも この世に生を受けた十数年ほど前よりはきっと。 同年代の男の子のなんて見たの初めてだから 基準なんて分からないけど…さ。 ソレの所有者でもある当の森くんはと言うと… そりゃ恥ずかしいよね。 俯けたまま痒そうに足と足を擦り合わせている。 顔を隠そうとしてるのかもしれないけどさ。 緩い傾斜角ながら 見上げている側のわたしたちからしたは丸分かりだよ。 …いつもクールな森くんの顔は 今まで見たことのないくらい 顔をオーブンで焼いたかのように まっかっかに染まっていた。 ともかく、わたしは(おそらく間違いなく、わたしたちは) 目の前ですっぽんぽんになった1人のクラスメイトの姿に 恥じらいながらも、視線を時々逸らしながらも 結局は夢中になっていた。 心の中ではこんなに饒舌だけど 実際は言葉なんて出なかった…よ。 …と、言葉もなく 森くんすっぽんぽんショーを観覧していたわたしたちだけど もしかしたらそれ以上に、言葉も出ないほど驚いていたのは その隣りで上半身裸で立ち尽くす 次の演者となるであろう三浦だったのかもしれない。 隣りで、颯爽と…まではいかないまでも それなりに潔く衣類を全て脱ぎ去り わたしたちの目の前で きっと男の子にとって一番大事な部分を 男らしく披露した森くん。 …そんな森くんの姿と わたしたちの視線を全て把握しきったであろう頃に ようやく三浦が、何故か呆れたような口調で喋り始めた。 「…ば、馬鹿じゃねぇの…お前…!!」 自分にも付いているであろう森くんのソレと 森くんの顔を交互に見ながら そう声を漏らす三浦。 「…な、なんで…だよ…!!!」 突然の三浦からの駄目出しに ようやく顔を上げてそれに反論する森くん。 大事なモノを丸出しのまま やっぱりまっかっかの顔のまま。 その姿、やりとりを、目の前で眺め続けるわたしたち…。 何ともおかしなと言うか シュールと言うか、エッチな状況…。 「…な、なんでって…。  お前自分が今どういう状況になってんのか  分かってんのか…?  …す、素っ裸だぞ…?丸出しなんだぞ…。  み、見られてんだぞ…!?」 「…し、仕方ないだろ…ルールなんだから。」 「ルールだとしてもよ…は、恥ずかしくねぇのかよ…!?」 「は、恥ずかしくないわけないだろ…  …そ、それにそれはお互い様だろ。お、お前も早く…」 「………。」 上半身裸のクラスメイトと 全裸のクラスメイトのやりとり…もとい寸劇を こちらこそ所在無くといった感じで 見守り続けるわたしたち。 横でわたしの手を握ったまま座っている千佳も わたし同様その映像を目に焼き付けている様子だったけど その視線の位置は、常に変わることなく固定されていて それがきっと 森くんの腰くらいの高さであるのだと言うことは とりわけ根拠があるわけでもないけど なんとなく確信することは出来ていた。 釘付けなんだろうな… きっと初めて見る、同年代男子のアソコに。 あの袋の中には何が入ってるんだろう…とか 考えているのかな。 辛うじてなんとなくだけど、わたしは知ってるけどさ。 …それでも、動揺はどうしても隠しきれなかった…よね。 今もだけど。 …などという人物描写など 単なる気持ち鎮静剤の一種に過ぎなくて すっぽんぽん姿を見せてくれた森くんには悪いけど どちらかと言うとこの瞬間 わたしは三浦の方に気が向いていた。 きっとこの後このお猿さんも見せてくれるんだろうけど どうも様子が変というか… 思い通りにはいかないような気がすると言うか… そんなわたしのモヤモヤは、やはり見事に的中し その答えは、三浦から発せられた次の言葉で明らかになる。 「…お、オレは、脱がないぞ…絶対…。」
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