小説

イカサマG@ME 20

…結局、三浦のおしっこが全て出尽くした頃には 紙コップを、4個と半分も消費していた。 …いつから我慢してたんだろうね。 もしかしたら、すっぽんぽんになる前から 尿意を感じてたのかもしれない。 …両者絶体絶命の 千佳と森くんの最終決戦にビビッちゃったことが 全ての原因なのかもしれないね。 結局強がりながらも ホントはずっと動揺してたんジャンね。 自分のキャラを貫くのも、大変だよね…三浦。 … ……って、何三浦に同意求めてんのよわたし。 …なーんて、そんなこと、驚く前に分かってたけどね。 それはきっと間違いなく わたしと三浦が似てるからなんだよ。 だから、なんか、三浦を見てると、自分を見てるみたいで ワケの分からない焦りを感じちゃって、恥ずかしくて 気づくといつも、三浦を敵視している自分がいたんだよね。 …でも、今日のこのイカサマババ抜き罰ゲームのお陰で そんな長かった忌々しい関係にも ピリオドが打たれるんじゃないかな… …… …なんて、考えてた自分が馬鹿だった。 「男のションベン見たがるなんて  結局やっぱお前は変態なんだよっ!!」 全てが終わって、宝物を仕舞い、森くんの隣りに腰を下ろし まっかっかの顔のまま わたしに向かって言った三浦の第一声は 結局そんな、わたしに対する罵声そのものだった。 …さっきの弱腰は一体何処へやら… コイツはきっと、死んで天国へ行ったとしても そこで神様に向かって強がっているんだろうな。 そんな、三浦の予想できていたはずの豹変に 結局わたしは動揺をぶり返して 強がりの姿勢にモードチェンジし 女の子としてギリギリの罵声を、三浦に飛ばしていた。 それを見ながら笑う千佳。 少し恥じらいを残しながらも、森くんも口を緩ませている。 …いろいろあったけど、結局はいつものみんなに戻ってる。 そんな状況に、今日初めてかも知れない わたしも自然と安堵の笑顔になる。 「笑ってんじゃねぇよ!」と言う 三浦のツッコミを覚悟の上で…ね。 「…あー!!もう疲れた、今日はもう帰るぞ!森!」 まだ冷めらやないエッチなムードを残したまま 三浦が腰を上げる。 「…、お、おう…。」 これまたいつもの なんとなく弱々しく見える感じに戻っている森くんが 三浦に従いゆっくりと立ち上がる。 「あ待ってっ!  帰るなら、ちゃんと捨てて帰ってよねっ!!」 「…な、何をだよ。」 分かっているくせに、反発してくる三浦に わたしは該当物となる5つのそれを指差しながら、訴える。 「…後処理くらいちゃんとしなさいよね。」 「…、…うるせー。」 ショルダーバックを肩に掛け終わった三浦は 引き始めていた顔の赤を 巻き戻しボタンを押したように再び染め直し それでもちゃんと わたしの指示に従って、それらを手に持つ。 持てない分を手下のように扱う森くんに持たせ 本当のトイレに向かう2人を わたしたち2人は追いかける。 そう言えばさっきからずっと部屋に充満していた 三浦のおしっこのニオイ。 「くさーい。」と 誰か1人くらい漏らしても良さそうなものだけど 4人の中の誰もその点を指摘しなかったのは きっといろんなことがありすぎて 感覚が麻痺してたからなんだろうな。 …聞こえてくるトイレの流れる音を廊下で聞きながら それと一緒に今日あったこと 全部綺麗サッパリ流してあげてもいいよ…と 最後の最後まで、強気で上から目線な台詞を 顔が朱色に染まること覚悟で 三浦に言ってやったりもした。 「んじゃ、今日はいろいろと…その…すまなかった。」 玄関で森くんから告げられた謝罪の言葉。 そんなこと言われたらわたし どう対応したらいいか分からない…けど 「こんな奴に謝る必要ねぇって!」 と言う三浦のいつもの切り替えしのお陰で わたしはある意味 正常を最後まで保ち続けることができた。 最後の最後まで、幼稚なやり取りをしたわたしたち。 それでも本当の最後の去り際に三浦から告げられたのは 「…じゃ、…また月曜な。」 と言う、本当に普通の、See you again.だった。 それを真顔で言ってくるから、ドキッとしちゃうんだよ。 …猿のくせに、良く分かんないんだから、…もう。 ともあれ そう言えば三浦発案だったイカサマババ抜きは ようやく幕を閉じた。 -バタン。 千佳と2人になったこの空間で わたしはすぐさま謝罪モードに入る。 そうだよ… 一番酷い仕打ちを受けたのって、きっと千佳だもん。 それもこれも全てわたしのせい。 ごめん…じゃ、足りないくらい 千佳にはツライ思いをさせちゃったはず。 「わたしも今日は帰るね。」と言う千佳に 誠心誠意を込めた謝罪を何度も何度も繰り返す。 そんなわたしの姿に千佳は 嫌な顔1つせず、全く怒った素振りを見せようともせずに ただ 「大丈夫だよ。気にしてないよ。」と笑顔で許してくれた。 …なんでこんなにいい子なんだろうな…千佳は。 ホントはブラ姿を見られただけでも 恥ずかしかったはずなのに こんなわたしに対して非難1つしないなんて… このときばかりは 幼稚過ぎた自分の計画や今日全ての行動を 本気で恥じたよね。 全体が未だに変な熱気で満ちたままの部屋を後にし 帰る千佳を見送るために 玄関を出て一緒にエレベーターに乗り込む。 千佳が相手だもん、謝ることなら一杯あるけど 今日起きたこと喋るのがなんかやっぱり恥ずかしくて 仲のいい千佳なのに、何話したらいいのか分かんなくて なんかちょっと、急に変なムードになっちゃっていた。 そんな空気を打開するために、わたしは千佳に きっと共通の感情であるはずの いやらしくない今日の感想を述べる。 「…でも、ホントに勝てて良かったよね~。  全部千佳のおかげ、ホントにホントにありがとね。」 「そんなことないよぉ~。  わたしはカード引いただけだから。」 何処までも謙虚な千佳、…こりゃモテるよね。 わたしも見習わないと…ね、うん。 「そんなことないっ!  だって2分の1の確率だったんだよ?  あんな状況になったらわたし…  どうにかなっちゃいそうだもん。」 最後の森くんとの一騎打ちの画を頭に思い浮かべる。 これも正直な感想だった。 わたしがあのとき千佳の立場だったら わたし本当に精神参っちゃってたかもしれない。 罰ゲームが罰ゲームだもん…ね。 そんな、わたしの賞賛の言葉に 千佳は無言のまま、優しく微笑む。 「そんなことないよ。」、そんな顔にわたしには見えた。 …けど、次に千佳から発せられた言葉は わたしの予想範囲内から、完全に外れたものだった。 「…違うよ。」 千佳は優しい笑みを顔に携えたまま エレベーターの階数表示に目をやりながら、そう小さく呟く。 「…え?」 突然の否定に、わたしは意表を突かれたように声を漏らす。 その発言に返答するかのように千佳から告げられた内容は 驚くべきものだった。 「…あの試合はね。  “100%”わたしたちの勝ちだったんだよ。」
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