小説

夏の大三角 11

『告白』

-ぴょこんぴょこん。 小気味よく揺れる陸の小さなちんちん。 その上に描かれた、明らかに大人ぶりすぎた 陸には完全に不釣合いなマジックの黒。 当の陸は、顔を100点満点の赤に染めながらも これがオレなんだと言わんばかりに 千沙にそれを見せつけるかのように 全くもってそれを隠そうとはしない。 威風堂々たるすっぽんぽん姿のまま そのまま千沙と向かい合うように、浴槽に浸かる陸。 単なるファッションアイテムと化したタオルを頭に載せ 両手を浴槽の縁に添えると言う 言わば親父スタイルとも言える格好で、千沙と対峙する陸。 お風呂の中でも、やっぱり丸出しだ。 またも間近で見てしまった陸の宝物と 水面下でゆらゆらとチラつく陸の“毛”に 千沙はドキドキしながらも 結局は我慢できずに、吹き出してしまう。 「…ぷ。」 吹き出しながらも、千沙の顔は赤い。 「…な、なんだよっ!!」 二重瞼キープのまま、千沙に強気を装い訴える陸。 「なんだよっ!!」って、何よ。 突っ込みどころの多すぎる陸の姿、行動に 何処から突っ込んでやろうかと少しだけ迷いながらも じゃあ順々に聞いていってやろうと、千沙は頬を緩める。 「なんで、隠さないの?」 質問その1に 陸はきっと用意していたであろう答えを言う。 「…い、いつもこうやって入ってるだけだ!!  文句あるかっ!!」 「いや、…別にいいけどさ。」 いつも以上にぶっきら棒な陸に多少驚きながらも それが照れ隠しから来る行動であることを瞬時に理解し やはり千沙はにやけてしまう。 「じゃあ、なんでそこマジックで塗ってるの?」 質問その2に、陸の顔は急激に歪む。 バレてる…!?そう陸の顔が喋っているように見える。 「…な、なんのことだ…よ。」 「なんのことって、そこ、黒くなってるじゃん。」 そう言って千沙は、少し恥らいながらも 水面の中で陸の丸出しちんちんを指差してやる。 汗が噴出す陸。 でも、ここでたじろいでしまってはあのときの二の舞だ。 恥ずかしさを押し殺しながら、陸は千沙のそれに答える。 「これは、ま、マジックじゃない!!…け、毛だ!!」 自分のちんちんを水面の中で指差しながら 決死の訴えをする陸。 2人の人差し指が、陸の小さなそれに向けられている。 「…毛?」 「そうだ!毛だ!!  男は大人になると、ここに毛が生えてくるんだよ!!  知らなかったのか?だっせーな。」 間接的に“オレはもう大人なんだ”と 主張しているかのように そう千沙に発言する陸。 そんな陸のさっき知った知識も、すぐさま崩れ落ちる。 「知ってるよ、そんなこと。  わたしだって生えてるもん。」 「…ふぇ!?」 あまりのことにとんでもなく間抜けな声を出してしまう陸。 弱々しい小動物“リク”に、姿を変えた瞬間だった。 「男の人だけじゃないよ、女の人だって  大人になると、そこに生えてくるんだから。  知らなかったの?ださーい。」 まさかのオウム返しに、完全に取り乱す陸。 「…う、嘘だっ!!!」 「嘘じゃないよ、なんなら見せてあげよっか?」 そう言って巻いているタオルを 下からまくり上げようとする千沙。 「…なっ、ななっ…  い、いいいいい、いいよっ!!  そんなことしなくてっ!!!」 完全にペースを千沙に握られた陸は 必死に、暴挙に出ようとする千沙を制止する。 「…なーんて、見せてやるわけないじゃん。  エロ陸。」 その制止も虚しく あとちょっとのところでシャットダウンする 千沙のタオルの裾。 「…う、うるせー!」 少し期待してしまっていた自分がいたのも事実だから いい反論の台詞の見つからないまま 結局はぶっきら棒に対処することしか出来ない陸。 当の千沙は、やっぱりいつもの陸じゃんと 半分可愛いな、と、半分安心する気持ちになるも そんな素っ裸の陸と一緒にお風呂に入っている自分の方が よっぽどエロ女だよね…、と よくよく考えると、結局は恥ずかしくなってしまっていた。 -ことも多少落ち着き、しばしの星空鑑賞。 いつものように天窓から、目で大三角を描く千沙。 陸もそれに倣い、上の窓を見つめる。 千沙の視線が自分から遠ざかったことに 多少の余裕はできたのだろうか 相変わらず湯船の中で、絶賛丸出し中だ。 「…あれだろ、デネブ。」 陸は顔を染めたまま、星空に浮かぶ星を1つ指差す。 「へぇ、良く知ってんじゃん、陸のくせに。」 「千沙が言ったんだろ!!アレが…オレだって。」 「あ、そうだっけ。」 「ひでー、忘れるなよ。」 「あー、ごめんごめん。」 「…んで、アレが千沙だっけ?たしか…」 「ベガ!織姫様なんだからね。」 「あっそ。」 2人とも、裸同士(1人は素っ裸)と言うこともしばし忘れて 星空に夢中になる。 「…じゃあ、あれは誰なんだよ?」 実はずっと気になっていた疑問を 恥じらいながらも千沙に尋ねる陸。 「あれって?…あぁアルタイル?彦星様ね。」 「…そう。」 織姫と彦星が両想いであることくらい 陸だって知っている。 「内緒。」 「…なんでだよ、ケチ、け千沙。」 「変な愛称つけるな!!」 「うっせー。」 「…じゃあ1つだけヒントあげる。  彦星様はね…、東京の人。」 「東京の人?そんなんヒントにも何にもならねぇじゃん。  …東京の奴とか…、オレ1人しか知らねぇもん。」 「じゃあその人ってことでいいよ。」 「…そんなんあるわけねーじゃん。」 裸であることも忘れて、いつものように 無邪気なやりとりを風呂場でする陸と千沙。 そっか…、そいつに逢うために 千沙は東京に行くのか。 やっと謎が解けたと思うも、それを言葉にはしない陸。 本気で、悔しかったのだろう。 -しばしの無言の入浴タイム。 気づけば時間も迫り そろそろ千沙のお母さんが帰ってくる時間に。 締めの言葉を千沙が喋り始める。 「今日は、ありがとね。」 改めて向かい合って、感謝の意を告げる千沙。 「いや…別に。」 改まってそんなことを言われると、やはり照れてしまう陸。 結局ずっと、ちんちんを隠したりはしなかった。 気づくと、陸のちんちんの上のマジックの毛が消えている。 きっと、水性で書かれたものだったのだろう。 突っ込んでやろうかとも思ったが 流石に可哀そうだからと 千沙は何もコメントはしなかった。 「こんな機会じゃないと言えないから言うけどさ。」 突然話を切り出す千沙。 「わたし、陸のこと好きだよ。」 まさかの告白に、目を真ん丸くして驚く陸。 「…なっ、…何言ってんだよっ!!」 「いや、ホントに。  ちょっと生意気だけどさ。  陸がいたからこんな田舎でも楽しかったんだなって  この前ふと思ったんだよね。」 頬を染めながらも、本音を告げる千沙。 陸はどうしていいか分からず、ただただ汗を噴出す。 「…東京行っても、忘れないからね。」 ふと星空を見つめながら、そう陸に告げる千沙。 「…そ、そう言うことは、合格してから言えよなっ!!」 精一杯の照れ隠しでそう答える陸。 無論、その千沙の好きが“1番の好き”ではないことは 陸には理解できていた。 「そのために今、頑張ってるんだもん。」 「はいはい、せいぜい頑張ってくださ~い。」 真っ赤な顔を、千沙の顔から逸らし、複雑なエールを送る。 ふと千沙が陸の下半身に目を向けると 明らかに 今まで見ていたものから変化しているのが分かった。 それでも陸は、隠そうとはしない。 初めて見るそれに、千沙はドキドキしながらも 結局それは、小さな笑いとなって口から零れてしまう。 「…エロ陸。」 「う、うるせー。」 全て見られてしまった今でも 誰かの教えを頑なに守り、それを見せ続ける陸。 もう逃げたりはしない、そう決めたからだ。 「…かっこいいとこ、あるじゃん。」 照れ笑いしながら、陸にその言葉をプレゼントする千沙。 顔を真っ赤にしながらも、少しだけ、陸がにやけた。
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