小説

成長くらべっこ 21

パサッ………―。 微かに耳に届く、何かが落ちる音。 と同時に失われる、目の前の、白。 手元に何かが重なる感触を、 私の脳の端の端の端の、ごく一部の部位が感じ取る。 重さや温度は、感じない。 それが何かも、今は判断できない。する暇も予定もない。 ありとあらゆる機能を放棄した私の体は こじつけとばかりに、捨てられたそれらを 視覚へと絶妙に変換し、私に押し付ける。 白のフレームアウトに伴う 肌色、ときどき、黒…?のフレームイン。 突然の世界確変に、もはや目のみとなった私ですら ピントをなかなか合わせられずに 瞳孔の伸縮を余儀なくされる。 目前に広がる何かに、ようやく焦点が合いそうになるも 動揺と緊張と心拍が、それをなかなか許さない。 落ち着いて、落ち着いて……! かろうじて動いた湿り切った右手に 今だ!とばかりに思いっきり力を入れる。 ゆっくりと、ゆっくりと、二重、三重になっていた景色が 1つに、収縮していき…、 現れたのは、私がずっと待ち望んでいた フミちゃんの、それ。 感想を言えなんて言われたら、そんな余裕あるはずないけど 絶対言わなきゃいけないとしたら、 ただただ、おっきかった。 比較対象が、左手に握る昔のフミちゃんしかいないけど それだけでも十分なほど、自信を持って断言できる答え。 ブラーンと下に萎える、棒。 先っぽが、ちょこっと出てる。 その後ろの袋も、手前のそれに合わせるように 2つの大事なものを守るように、大きく、ずっしりと垂れている。 もう大人だよ…、そんなこと、言われなくても分かるのに その証明とばかりに、少しだけ散らされている、毛。 あれから5年間、もう5年間。…いや、 たったの5年間で、何があったの…?と疑いたくなるくらい 立派過ぎるほどに、成長していた、フミちゃん…、の… 「…ブランブラーーーーン!」 何の予兆も前触れもなく、頭上から聞こえてくるワード。 それって、………!!! もの凄いスピードで前後左右上下に動き始める、腰。 規則性なんてない、ただ、思うがままに、 やけくそで、動かしてる。 …いや、そんなこと、そんなところじゃなくて……。 瞳に映し出される驚愕の光景と、それに伴う違和感。 とんでもない速さで、腰が動いているのに 肝心のそれ、フミちゃんのそれが、 もの凄く、ゆっくりに、感じる。 「ブランブラーーンブランブラーーーーン!!」 好き放題暴れる腰に併せて暴れなければいけないそれが、 完全に付いていけずに、だらしなくブラブラと彷徨っている。 なんで…?、答えは簡単、大き過ぎるから。 震源である腰から送られた波が 根元に届き、長い道筋を経て、先っぽに送られる。 …けど、その長い道のりが長すぎて 先っぽに到達する前に、腰からの第2波第3波が根元に到着し、 時折その波の順位が入れ替わったり、 打ち消し合って静止したり、 噛み合わずにグニャンと折れ曲がったり、 見事に共振してブルーーーン!!と跳ね上がったり…。 「ブランブラーーンブランブラーーーーン!!!」 もちろん袋の部分も、全く違う不規則な挙動を示している。 全てくっついているはずの3つの部位の 全く違うアクションの共存。 例えるならば、ただただ…、カオス。 ついさっき見たモンスターなんか、 スライムレベルだと思えるくらい、 もう何が何だか分からないくらい、ただただ、おかしくて… …でも、 「ブランブラーーンブランブラーーーーン!!!!」 絶えず聞こえてくる、フミちゃんの叫び。 つまり、当然、これがフミちゃんのモノなんだと我に返ると、 …もうどうしようもないくらいに、体が…、…!? ……ブルンッ! ……、 …見事なワンスイングで、急に静止する、…フミちゃん。 …と、私の太ももに落ちたタオルをおもむろに奪い取り もの凄い手際の良さで、それを腰に巻く。 隠れる、フミちゃんの……、…おちんちん。 そのまま、部屋の真ん中に、大きく寝転がる。 「はぁ…、はぁ…、はぁ……。」 急に静かになった部屋に、大きな荒い息。 「はぁ…、はぁ…、はぁ……。」 それに被せるように、必死に止めていた息を 解放させる私。 椅子に座りながら、フミちゃんを見下ろす。 体中が、汗まみれで、赤い。 顔は、両手で隠してる。 「はぁ…、はぁ…、…ぁぁあああああああ!!!」 …!? 急に大声で叫びながら状態を起こすフミちゃん。 そして、 「…おちんちん見られてもぉたぁーーーーー!!!!」 その勢いのまま、天井に向かって、そう叫んだ。 そして、その顔を、ゆっくりと私に向ける。 …その顔が、もう、本当に真っ赤で、汗まみれで、 それでいて、不自然なくらいに、満面の、無理した笑顔で…。 ……!!! ドックン………―。 大きく胸が跳ね上がる。 …そうか、そうだよ、これだったんだね。 これ以上ないまでに勉強して、 500点満点を確実にまで持っていこうとした理由。 フミちゃんの顔、こんな恥ずかしそうな顔、初めて見た。 きっと、まだ誰にも見せたことない顔、だよね。 いつも、恥ずかしいこと言って、私の顔を赤くして からかってばっかりだったフミちゃん。 いつか、やり返してやるんだって、思ってた。 この罰ゲームが決まっても、相変わらずの攻めの姿勢だったけど ちょっと勇気を出して、こっちから攻めてみたりしたら 意外にも照れて、怖気づくフミちゃんがいたりした。 その度に、何とも言えないドキドキを感じて 凄く、興奮している自分がいたりして。 だから、一番恥ずかしい部分見られたら どんな顔するんだろうって。 そんなこと想像するだけで、ドキドキしてる自分がいた。 結果、私は、私の期待通りの点数をたたき出して、 フミちゃんもこうして、焦らしに焦らしを重ねながらも、 大事な部分を、ブランブラン…、して、…くれて。 そして今、この顔。本当に待ち望んでいた顔。 ちょっと前に、きっとこの世で一番くらいに エッチなものを見てしまったはずなのに 今私が見ているものの方が、その数倍くらい、エッチに感じてしまう。 フミちゃんの、見られてしまった後の顔。 汗、赤、なのに、笑顔。 さっき、時間稼ぎかどさくさ紛れか、話してくれたじゃない。 本当は弱虫で、臆病なんだって。 もしそうだとしたら、本当はその笑顔だって 自分を守るために、無理やり作っているんでしょ? その誤魔化した顔でも、 もう十分なほどに、恥ずかしさは伝わってくるけど、 だけど…―。 ゆっくりと、椅子から下りる。 視線を交わし続けながら、向かい合うように腰を下ろす。 ―最後だもん、せっかくだから、派手に行こうよ。
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