小説

正義のヒーロー 2

え?なんで石橋くんが? ちょっとドッキリ。 石橋くんは小学1年生から ずっと同じクラスの男の子で クラスでは明るくて 悪く言えばお調子者だけど 良く言えばムードメーカー的存在で 元気で面白い石橋くんは 見てるだけでも面白いし 一緒にいると笑顔になれるような 存在でした。 入ってきてすぐにわたしを見つけると お!といった表情になり わたしの方に近づいてきました。 「お、やっぱ桜木か!」 そう言って笑う石橋くん。 服装はパジャマというか 病院で着るような格好をしていました。 「な、なんで石橋くんがいるの…?」 ちょっとビックリして聞くわたし。 「なんでって、俺も入院してるんだよ。  この部屋の隣の隣の504号室。」 「え?そうだったの?  全然知らなかった…。」 「当たり前だよ。  だって今日から入院だもん。」 「え?あー…そうだったんだ。」 凄い奇遇だなーって思った。 同じクラスの子と 同じ病院に同じ時期に入院するなんて 結構な確立だよね。 石橋くんは わたしのベッドの横にあるいすに腰を掛け 2人でしばらく話をしました。 まずは病気のこと。 なんと石橋くんも盲腸で入院したらしいです。 流石にビックリ。 わたしの盲腸なんだーと言うと 石橋くんも流石に驚いてましたね。 いつも集団の中で話をしていて 石橋くんと2人で話をしたことなんて まずなかったんで 実際ちょっとドキドキしてましたね。 それから学校のこと…。 「桜木全然学校来ねぇから  みんな心配してたぞ。」 「あ、ホントに…。」 「お見舞い行くにも先生病院教えてくれねぇし。  死んだんじゃないかって  泣き出す奴までいたんだぞ、木下とか。」 わたしが休んでる間 みんなわたしのこと心配してくれてたんだ…。 病院と病名言わないでって頼んだのは わたし自身。 お見舞いに来てくれたのに 手術受けたくないから入院してる なんて絶対言えないしね。 「そんな心配してくれてたんだ…。  なんか凄い申し訳ない。」 本心がポロッと出て 自分の情けなさに嫌気が指しました。 「でもただの盲腸だろ?  なんでそんな1ヶ月もかかってるんだ?  …もしかして結構  …深刻なのか?」 ちょっと心配と言った様な表情で 顔を覗いてくる石橋くん。 「いや…普通の盲腸だよ。  全然深刻じゃない。」 嘘つくわけにもいかないし 正直に話しました。 「…じゃあなんで?1ヶ月も?」 「…手術をね…断ってるの。」 「あーなるほど…怖いのか。」 「いや…そうじゃなくて。」 「ん?」 「…誰にも言わないでくれる?」 「なんだなんだ秘密があるのか?  言わねぇよ。オレは。  秘密はガッチリ守るタイプの人間だからな!」 石橋くんに言ったら みんなにばらされちゃうかな?とか ちょっと思ったけど 石橋くんは そう言うことはしない人だって知ってたし 変な信頼があったので 意を決して本心を言おうと思いました。 …と言うか単純に好きだったのかな? 石橋くんのこと。 「手術自体が怖いのもあるんだ、もちろん。  お腹切らなきゃいけないらしいし。  でもそれ以上にね…。  手術するときさ。服脱ぐんでしょ?  …下全部。  だから…その…恥ずかしいんだよね。」 恥ずかしながらに本当の理由を 告げました。 馬鹿にされるかなーって ちょっとドキドキしてたけど 石橋くんは笑っていたけど からかってきたりはせず 「なるほどな。  確かに脱がなきゃいけないもんな。」 そう言ってウンウンと言った感じで 同意してくれました。 そして「誰にも言わねぇから安心しろ。」と 一言付け加えてくれました。 「石橋くんは  もう手術の日程決まってるの?」 「うん、なんか今人少ないみたいでさ。  明日には手術だって。」 「明日!?早いね…。」 「まぁなー。  でもいつまでもこんなトコいても  しょうがないしな。」 「そうだよねー…。」 わたしも早く 手術受けなきゃなー…と本気で思いつつ わたしは石橋くんに一応 質問してみました。 「石橋くんは恥ずかしくないの?  手術。」 「…そりゃー実際イヤだよ。  おそらく看護婦さんとかに  ちんこ見られることになるんだろうしな。」 鼻を掻きながら顔を赤らめ そう言う石橋くん。 「やだー。」顔を赤らめるわたし。 「でも」 「…え?」 「ほっとく方がヤバいんだぜ、盲腸って。」 「…うん、そうだよね。」 「桜木も早いとこやっちゃったほうが良いぜ。」 「…そう、だよね。」 そうは言ったけど やっぱりまだ決心がつかないな…。 「んじゃ。そろそろ戻るわ。」 そう言って席を立つ石橋くん。 「明日の手術、頑張ってね!」 席を立つ石橋くんにそう声をかけると 「おうよ。  ちんこ見せ付けてやってくるよ!」 照れながらそう言う石橋くん。 きっと石橋くんだってわたしと同じくらい 恥ずかしいんだろうな…。 「明日手術終わったら  またここ来るよ。」 「うん、分かった。」 そう言って 石橋くんが出て行くのを 見送りました。
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