小説

正義のヒーロー 8

次の日の午前中。 わたしは早速手術を受けました。 流石にパンツを脱がされるときは ドキドキしたけど みんな女の看護婦さんだったし 今思えばなんで恥ずかしがってたんだろう って感じでした。 手術はもちろん大成功。 麻酔も効いていて 全く痛くありませんでした。 お母さんとお父さんも その日は来てくれていて 凄く安心というか喜んでくれていました。 回復も順調で 明日にでも退院できるみたい。 …やっとみんなに会えるんだ! 気持ちはすっごく晴れやかでした。 「…にしてもいきなりよねー。  どうして急に手術受けようって思ったの?  何かあったの?」 そう聞いてくる看護婦さん。 なんて答えようか迷ったけど ここは正直に喋ろうと思って 馬鹿にされること覚悟で話しました。 「正義のヒーローがね、応援しに来てくれたの。  藍ちゃん頑張れーって!」 顔を見合わせながら笑いあう 看護婦さんとお母さんとお父さん。 「なんだかんだでまだまだ子供ですね。」 「そうですねー、こっちが恥ずかしくなっちゃう。」 「ははは、いいじゃないか、子供らしくて。」 なんとでも言うがいいさ。 だって本当の事実だもん。 わたしだけのヒーロー。 『全裸マン』 それは確かにわたしの心に 深く今でも残っている 正真正銘、正義のヒーロー。 その日は石橋くんの退院の日。 夕方ごろに退院で わたしもお見送りしに行きました。 わたしが手術を受けて 無事済んだことを告げると 自分のことのように喜んでくれました。 「良かったな!  早く学校戻って来いよ!」 そう言って笑う石橋くん。 やっぱりちょっと照れてましたけどw 「いろいろありがとね。」 わたしは感謝の気持ちを まだ言ってなかったことに気づき 急いで付け加えました。 「…な、なんのことだ。  オレ何にも知らねぇぞ。」 頭を掻き顔を赤らめながらごまかす 石橋くん。 どうやら石橋くんと全裸マンは 同一人物ではないって言う 設定を覆したくないみたい。 「はい、これ。」 わたしは意地悪にも 石橋くんに昨日病室に忘れていった バイク用のヘルメットを 突きつけました。 「これ、石橋くんのでしょ。」 「し、知らねぇよ、そんなの…。」 「…ホントに?」 明らかに狼狽したような石橋くん。 そんなわたしたち2人の姿を見た 石橋くんのお父さんが 「お、それは父さんのヘルメットじゃないか!  卓也が持ち出してたのか。  全くしょうがない奴だな。」 そう言って石橋くんの頭を 大きくなでてました。 「と、父ちゃん!」 もう、ネタがばれてしまったじゃないか!と 恥ずかしがる石橋くん。 そんな彼をただ笑いながら見ていました。 きっとこのあたりからだよね。 石橋くんのこと 本気で好きになり始めたの。 「また会えると良いなー全裸マンに。」 また意地悪にもそう言うわたし。 「そんな簡単に出来ることじゃねぇよ…。  アレは。  言っても全裸だからな。」 照れながら言う石橋くん。 「そっかぁ…残念。」 落ち込んだ素振りを見せるわたし。 ホント意地悪だなーわたし。 女優になれるんじゃない?っていうくらいの 演技力。 落ち込むわたしを見て 石橋くんは困ったな…と言う表情を見せて ちょっとすると 「…こっち来い。」 そう言ってわたしの手を引き 病院の裏側の人気のない場所に わたしを連れてくる石橋くん。 え、なに?と 心臓バクバクのわたし。 「…これで最後だからな。  よく目に焼き付けておけ。」 そう言って何をするのかと思ったら 「プチ全裸マン参上!」 と言って ちょうど男の子がおしっこするような感じで パンツとズボンをずり下げて おちんちんを見せ付けてきました。 「きゃ!」 目の前にまた おちんちんがプルルンって飛び出しました。 わたしが声を漏らすとすぐにおちんちんをしまい あたりをキョロキョロ確認する 石橋くん。 「さ、桜木が見たいって言うからやったんだぞ!」 顔を真っ赤にして訴えてくる石橋くん。 「確かに会いたいとは言ったけど…  べ、別におちんちんみたいとは  言ってないもん!」 恥ずかしがるわたし。 実際見たかったのは恥ずかしながらホントだけど まさか2日連続好きになりかけてる男の子の おちんちんを見るなんて 思ってもいなかったから 流石にドキドキしちゃいましたね。 「なんだよそれー!」 そう言って顔を赤らめると 恥ずかしそうにトボトボと 病院の入り口に戻って行きました。 「ごめんね…。」 その背中に一言つぶやく私。 聞こえていたかは分からないけど。 そして心の中で 「ありがとう。」とつぶやき 石橋くんの背中を 小走りで追いかけていきました。
-おしまい-
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