小説

気になるあいつ 7

次の月曜日。 公園に行くとあいつはいなかった。 フリスビーしながら待ってたけど 暗くなるまで待ってたけど 結局現れなかった。 火曜日、水曜日、木曜日… 日が流れても あいつは公園には来なかった。 今までこんなことなかった。 オレが行くと平日は いつもあいつがベンチで 小説を読んでいた。 それこそ、1日もかかすことなく。 最初は風邪でもひいたんだろうと 思ってた。 でも流石に4日はないよな。 学校で友達でも出来たのかな。 …この短期間で? でももしそうだとしても この公園には来るよな。 オレに報告…ってのも変な話だけど。 そりゃ約束とかはしてないけどさ。。 「またな。」って言ったモンな。 なんかいろいろ考えてると 不安になってきた。 事故っちゃったとか? なんか変な方向に考え始めてるオレ。 いつものポジティブな自分はどうした! 冷静になれ冷静になれ…。 そんなこんなで金曜日。 やっぱりあいつは来なかった。 フリスビーなんてする気も起きず ただ公園の真ん中で 呆然とするオレ。 馬鹿犬は何のことだかと言った顔で ボーっとしてやがる。 オレが立ち尽くしていると 馬鹿犬が オレの短パンのポケットのあたりを クンクンと嗅ぎ始めた。 何かと思ってポケットを漁ると 前にあいつから貸してもらった ハンカチが入っていた。 まだオレの血がついてる。 そう言えば貸してもらったんだったなぁ…。 一時はあいつに持ってかれた短パンだけど あいつも忘れてたみたいだな。 いろいろ思い出していると 馬鹿犬はベンチの方へスタスタと歩いていき なにやらゴソゴソしている様子。 何やってんだジョン…。 ちょっとして馬鹿犬がこっちを向くと 口に何かを咥えていた。 なんだ?と思って走ってそっちへ行くと それは白い封筒だった。 何箇所かにセロテープがついてた。 きっとベンチの裏にでも 貼ってあったんだな。 …よく見ると封筒には 何か書いてあった。 『名前も知らない君へ。』 確かにそう書いてあった。 びっくりしてオレは 馬鹿犬からそれを取り上げようとしたけど 何を思ったか反発する馬鹿犬。 「放せ!ジョン!」 そう言ってオレは思いっきりその封筒を 引っ張った。 やっと取れた。 急いで開けて手紙を取り出す。 そこには女の子らしい丸文字で こう書いてあった。 -名前も知らない君へ。 この手紙を読んでくれるか分かんないけど 読んでくれることをねがって書いてます。 …あのワンちゃんならきっと 見つけてくれるはず(笑) この1ヶ月間。 この公園を見つけたあの日から わたしにとってこの公園は すっごく特別なものでした。 名前も知らない男の子が おかしなフリスビーのコントロールで ワンちゃんとあそんでるすがたが すっごいおもしろくて 気づいたらそれを見るために この公園に来てたんだよね。 …小説読んでたのも本当だけどね。 つまらない毎日の中で ゆいいつ楽しいと感じれる場所でした。 だからこの前友達になろうって言われたとき すっごいうれしかった。 なんかよく分かんないけどさ。 泣きそうになっちゃった。 それくらいうれしかったよ。 これからも毎日 この公園に通おうと思ってたんだけど また引っこしが決まっちゃいました。 しかもすごいきゅうであの日の後の日よう日には もう出発しなくちゃいけなくて。 でもどうしてもお別れ言いたくて でも名前も知らないから どうしようもなくて。 …だから手紙書こうって思いました。 もし読まれることがなくても きっとそれはしょうがないんだよね。 でもわたし、あたらしい学校では がんばって友達作ろうと思う。 すぐ引っこしになっちゃうかもしれないけど 1人はさびしいし やっぱり友達っていいものだもんね。 これもきっと君のおかげだよ。 ありがとう。 君もクラブ出た方が良いよ! ぜったい楽しいから! あのコントロールならやきゅう部がおすすめかなー。 なんて、おせっかいかな(笑) とりあえずほうこくしたかったんで 気づいてくれることを信じて 手紙を書きました。 もし見つけてくれたら 下のじゅうしょに連絡くれるとうれしいです。 ぶんつうとかしたいかな(笑) じゅうしょは -その下が切れていた。 ん?なんでだ? そう思うとそれは明らかに 何かに噛み切られた跡だった。 …と言うか犬の歯型だった。 さっき引っ張ったときに ジョンが一部分噛み切っちまったみたいだった。 …ジョンを見ると 何も考えてないような顔で むしゃむしゃと 俺が一番知りたかったことが 書いてあるであろうそれを 食べていた。 …ちくしょう。 最後の最後まで…。 「…この、馬鹿犬がぁぁぁあぁあぁ…!」 オレは1人公園で ワンワン泣いた。
-おしまい-
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