小説

気になるあいつ 4

次の日。 オレはいろいろ考えちまって 学校のこととか ほとんど何にも 覚えてなかった。 ただちょっと気になったと言えば 昨日オレが情けない格好で 公園から家まで走りぬけた 地獄の3分間。 アレを誰かに見られては いなかっただろうか、と言う ちょっとした恐怖。 クラスの奴らを見る限り その心配はなさそうだった。 とりあえず少し安心。 いつものように学校が終わり みなそれぞれのクラブ活動へと 散っていく。 オレはいつもどおり華麗にスルーし 校門を抜ける。 家に帰って考える。 どうすっかなぁ… でも行くべきだよなぁ。 いろんな感情が錯綜する。 まずちんこ見られちゃったモンな…。 あいつ何を思ったんだろう。 あの顔を真っ赤にして 驚いた顔…。 …あまりにも小さかったから 驚いたのか? それでオレのこと嫌いになって 逃げ出したのかな…。 いやいやネガティブシンキングは良くない。 オレのちんこ見てびっくりして ただパニックになって 逃げ出しちゃっただけかも…。 うーん分からん。 恥ずかしさとどうしたらいいのかで 結局パニックになるオレ。 なんか1人で勝手に心理戦してるし。 ふと目に止まる 机の上のあいつの小説。 昨日辞書で調べたけど 『容疑者Xのけんしん』と読むらしい。 …意味は……知らん。 とりあえずこれは返さなきゃだよな。 いつも読んでいたし きっとまだ読み途中だろ。 それにハンカチ貸してくれたお礼だって まだちゃんと言ってないし。 …アレ? ハンカチってどこいったんだ? … ……あぁ。 ズボンの中に入れたんだ。 あいつが持ってるってワケか。 なんか…変な感じだな。 いろいろ考えてたってしょうがない。 オレは散歩の準備をした。 「ジョン!行くぞ。」 やる気ゼロって感じで 小屋から出てくるお馴染み馬鹿犬。 なんで昨日急に オレのズボン噛んだんだよ。 …まぁハンカチの入ったズボンを あいつに返してたもんな。 オレがあいつのハンカチを 盗んだとでも思ったのかな。 …まったく。 女にはとことん優しいんだな、お前は。 誰に似たんだか。 …オレか? ハハ…そうかもな。 まだ復讐はしてないけど とりあえず今日は手を出さないでやる。 その代わりちゃんとオレの散歩に ついてこいよ。 オレとジョンは 昨日と同じ道を 仲良く並んで歩き出した。 右手にフリスビーと小説を持って。 この角を曲がると 左手に公園が見えてくる。 いつもはウキウキで曲がるこの角も 今日は何か違った感じ。 心拍数は急上昇していた。 落ち着けオレ、だらしがないぞ。 いろいろ考えるオレ。 角の手前で意味のない思考をフル回転。 行くべき…だよな? 「…アウ?」 オレの質問に 馬鹿犬は アホみたいな声で答えた。
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