小説

芸術の秋 1

夏休みも終わり 季節はすっかり秋めいてきた そんな10月。 小6最後の秋。 あとちょっとで卒業。 他の友達はほとんどみんな 第1中学校に進学するから 卒業ってそんなに 重要視してないよね。 まぁ先生たちとのお別れは 辛いけどさ。 でもわたしは他の子と違って 私立の中学校に進む予定。 本当はみんなと同じ第一中学校に 進みたいんだけどね。 親の勧めで私立に行くことになってた。 …と言うか わたしが美術を専門的に学びたいって言ったら お母さんとかお父さんが じゃあせっかくなら そうゆう設備が整った学校へ 進学したほうがいいと言って わたしの望みを叶えてくれたっていうのがあるから 本当は感謝しなきゃいけないんだけどね。 でもやっぱりお別れは辛いよね。 そんな小学校最後の秋。 毎年この時期に行われる 小学生美術コンテスト。 わたしは小学校に上がってから 毎年それに参加していました。 風景画を書いた年もあったし ちょっとした日常風景を書いたこともあったな。 結構絵には自信あるんだ。 今まで5回中3回入賞してて ちょっとわたしの自慢でもあったりしました。 今年は何を書こう…。 夏ごろからずっと考えてた。 小学校最後の秋。 卒業したらきっとわたし1人が 離れ離れ。 いろいろ考えて わたしはどうしても書いてみたいものがあって それを書こうと決めてました。 …被写体の了承は まだ取れてないんだけどね。 勇気を振り絞って 頼んでみようって思いました。 コンクールの提出まで あと1週間に迫った日曜日。 土曜日でも良かったんだけど 土曜日は竹内くんは 野球の練習があるから 家にいないのは知ってた。 ちょっと家から離れた場所にある 竹内くんの家に向かう。 前に一度来たことあるけど そのときは他にも友達がいたし 1人で来るのは初めて。 もちろんドキドキ。 しかも結構大変なこと頼もうとしてるし…。 いろいろ考えながら竹内くんの家の着き チャイムを鳴らす。 ピンポーーーン… 玄関から顔を出したのは 竹内くんのお母さんだった。 「…あらー。いらっしゃい。  えっと…確か健太のクラスメイトの…」 「あ、森本です!」 「あ、そうそう!いらっしゃーい。  健太よね、ちょっと待ってねー。」 そう言って奥に消えていく 竹内くんのお母さん。 なんか思い立っていきなり来ちゃったけど 竹内くんいいって言ってくれるかな。 …裸描かせてなんて言ったら びっくりするかな。 でももちろん上だけだし… きっと大丈夫だよね。 今まで裸の男の人の絵って 書いたことなかった。 でも結構美術の本とか見てると 昔の芸術家の人って 女の人とか男の人とかの 裸姿って描いてるんだよね。 まだ早いかもしれないけど どうせ美術の道に進むんなら 昔の人のしてたことを真似するのも 勉強だと思って。 …竹内くんって言うのはね。 野球クラブに入ってる男の子。 明るい男の子で いわゆるわたしの初恋の人。 どうせ描くなら小学校最後だし 思い切って竹内くんに頼みたいなって 思ったんだ。 …こんな積極的な自分。 自分でもちょっとビックリ。 いろいろ考えてると 奥から竹内くんが歩いてくるのが分かりました。 もう秋だけど まだ半そでにハーフパンツって言う 涼しげな格好をしてました。 「よう森本。珍しいじゃん。」 「おはよー。急にゴメンね。」 「いやいやいーよどーせ暇だし。  どうしたんだ?」 「あーちょっとね、頼みたいことがあって…。」 言葉に詰まるわたし。 「裸描かせて。」なんて やっぱり言うのそんなに容易いことじゃないよね。 言葉に詰まっているのを見かねて 竹内くんは 「…とりあえず入れよ!」 そう言ってわたしを自分の部屋に 案内してくれました。 「あ、ほんとに。  じゃ、じゃあ、おじゃましまーす…。」 久々に来る竹内くんの家。 前もドキドキしたけど 今は1人だから更にドキドキ。 階段を上り 2階の竹内くんの部屋に 入っていきました。
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