小説

芸術の秋 3

目の前に現れた竹内くんの裸は やっぱりまだ子供と言った感じの 体つきだけど 野球少年らしく程よく筋肉がついてて わたしレベルの腕の人には もってこいの被写体と言った感じでした。 …とか何品評してるんだろ。 ホントは心臓ドキドキでした。 部屋に2人っきりって言う状況に 竹内くんは今裸…。 わたしもきっと顔真っ赤だったと思う。 「…で、どうすればいいんだ?」 Tシャツを脱ぎ捨てた竹内くんは あぐらをかいたまま聞いてきました。 わたしの頭の中には もう描きたいプランは決まってました。 「1時間くらい同じポーズしてもらうことになるけど…  いいかな?」 「オッケイオッケイ。」 その言葉にわたしは安心して 細かく注文していきました。 「とりあえず立ってもらって…  …えっとね。  左手で力こぶを作ってもらって…  うん、そんな感じ。  で右手は斜め上に伸ばす感じ…  あ、手はグーでお願い。  …うんそれで。  両足は広げる感じで…。  あ、ちょと開きすぎかな。   視線は右手の伸ばした方向を  見つめる……そうだね。  …あっ、細かくてゴメンね。  うん、それで。」 恥ずかしながらも 竹内くんに注文をつけていくわたし。 竹内くんはやっぱり恥ずかしそうでしたね。 わたしも恥ずかしかったけど 何か妥協はしたくなかったから 悪いと思いながらも 納得行く形になるまで 細かく指示してしまいました。 「これで1時間だけど…大丈夫そう?」 「ん、余裕余裕。  ちょっと恥ずかしいけどな。」 照れ笑いしながらそう言う竹内くん。 もう胸のあたりに汗かいてました。 竹内くんがこっちを向いてないことをいいことに わたしはその横顔を ちょっとだけ見つめてしまいました。 やっぱりかっこいいなぁ…。 …駄目駄目! 今は描くことに集中。 こっちが頼んでもらってるのに 見とれてる場合じゃない。 わたしは竹内くんのことを 出せる力全て使って 丁寧に、繊細に、描いていきました。 10分くらいかな。 わたしがあまりにも集中してるんで 竹内くんも気を遣ってくれたのか 話しかけてくることはありませんでした。 このままなら30分くらいで 描き終えられるかな。 と思っていたとき 誰かが階段から上がってくる音が 聞こえました。 流石に竹内くんも気づいたようで やべ!と言った表情になって… ドアが開くとそこには ジュースとお菓子を持った 竹内くんのお母さんが立っていました。
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