小説

少年裸祭り 【弐拾七】

間宮 桃子
  • 間宮 桃子
  • 2009/01/03 09:14
  • 道中
12人の男の子たちが歩いていく姿を 後ろからついていくわたしたち3人。 最初はドキドキし過ぎてどうなることかと思ったけど もうダイブ慣れてきた…かな。 でもやっぱり凄い光景だなぁ。 12個の男の子のお尻がプリプリ動いてる…。 色もホント十人十色って感じ。 …べ、別に男の子たちのお尻を品定めしてるわけじゃ 全然ないんだよ! わたしは西島くん一筋だし お尻だって西島くんのが一番…好きだし… …わたし何考えてんだろもう… 最低。 …なんだかんだでわたし見過ぎだよね。 佳奈ちゃんといつみちゃんの2人が 話をしてるのが隣で聞こえるけど 全然頭に入ってこないし…。 かろうじて相槌は打ってるけど 頭の中は男の子のお尻でいっぱい…。 …駄目駄目平常心! お尻を見る祭りじゃないんだから! …ふと男の子たちの周りに目をやる。 今気づいたけど こんなにいっぱい人がいたんだ…。 男の子たちを取り囲むように 四方八方に人が溢れてる。 小学校入る前くらいの小さい子から大人の人まで いろんな世代の人たちが 西島くんたちの歩幅に合わせるように歩いている。 …そうだよね。 わたし以外にもいろんな人たちが 男の子たちのお尻を、西島くんのお尻を 見てるんだよね。 …当たり前だけど、全然仕方ないことなんだけど なんだかちょっと…嫌だな。 …うん、なんか。 それに今気づいたけど 男の子たちの先頭に立って誘導してるのって ウチのママだったんだね。 こんなことに今頃になって気づくなんて…ね。 酷いなぁわたし。 …でも今思うと この季節、この寒空の中、裸なんだよね。 絶対寒いよね。 みんな堂々と歩いてるけど 体の中はキンキンに冷えてるんだろうな。 …そんな勇姿を 変な色目を使ってずっと見ていたわたし…。 …また自己嫌悪だよ、はぁ…。 …頑張れ!みんな! 今更だけど心の中で応援するわたし。 心の中でなんて、なんかズルい気がするけどさ。 なんだか勇気がなくて。 隣で大声で叫ぶいつみちゃん。 いつも明るいいつみちゃんの素直なその性格、 実は凄く憧れてるんだよね。 そんな姿にわたしはいつも微笑むことしかできない。 駄目だなぁ…。 わたしもいつか 自分に嘘をつかないで 大声で自分の意見を言えるようになりたいな。 …なんて いつの間にかドンドン自己嫌悪にはまってる。 もっとポジティブにならなきゃね。 それで、バレンタインにはきっと 西島くんに告白するんだ。 …と、勝手に1人で目標を掲げていると 佳奈ちゃんが横で、思い出したように「あっ!」と叫ぶ。 自分の世界に入り込んでいたわたしは 思わずビクッとする。 「ごめん!ちょっとわたし先行くね。」 そう言って小走りで駆け出す佳奈ちゃん。 「ちょ、ちょっと佳奈ぁ!どうしたの??」 「ちょ、ちょっとね。急用…かな。  先に行って待ってるから!」 「え、あ、え?  う、うーん…わ、分かったぁ…。」 どうしたんだろ…変なの。急用ってなんだろ。 そのあとはいつみちゃんと2人で話しながら 西島くんたちの後ろに付きながら歩いていった。 このあと海に浸かるんだよね。 寒いだろうなぁ…。
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