小説

少年裸祭り 【四拾弐】

西島 耕助
  • 西島 耕助
  • 2009/01/03 10:23
  • 砂浜
人で作られた花道をくぐって ようやく俺らは砂浜に出てきた。 厄で汚れた体で、肩を組みながら しかも今度は草履を履いていないから 本当に褌以外何も身につけていないんだ。 裸足になったって言うのももちろんあるんだけど それにしてはさっきより 寒さに拍車がかかっている気がするのは 気のせいか…? いや気のせいじゃないみたいだ。 「風が出てきたなぁ…みんなーガンバレー!」 そんな役員の人の声が、その理由そのものだ。 なんでこのタイミングで風が出てくるんだよ。 …まったく。 さらにストーブで温まってた体だったから 尚更なんだろうな。 くー…さーみーいーぃぃぃぃ…。 それでも 歩みを止めるなんて事は出来るはずもなく ゆっくりと、確実に、海へと近づいていく。 50m…30m…15m… ドンドン近くなっていく海。 風の影響で、海が少し荒れている…? 波打ち際の波が大きな振幅で 寄せて、引いて、寄せて、引いてを 繰り返している。 見てるだけでもさみぃよ…! ホントに俺ら、今からあん中に飛び込んでくのか? 自殺行為じゃないのか!? …海が5m先にまで近づいて 流石に俺らの歩行はストップする。 …他の学校の奴らも同様に。 「うぅうぅぅううう…  さぁみぃいぃよぉおぉおおぉおお…。」 山井は今にも泣きそうだ。 鈴谷は男らしく無言で前だけを見つめていた。 けど、噛み締めた唇が、寒さを我慢していることを 顕著に物語っていた。 そうだよな、寒いのは俺だけじゃないんだモンな。 そうだ、俺らは運命共同体だ。 3人で入れば、きっとどんな寒さだって耐えられるさ。 …などと今頃になってチームワークの大切さを 語り出してるけど… 実際そうでもしないと マジでこの寒さには勝てそうにないんだよ。 「…よし! 坊主ども!  入水だーーーーーーー!!!!!!」 …さっきから気になってたけど あの叫んでる役員の人は軍隊にでも入ってたのか? いちいち、口調が古い気がする… んまぁそんなこと気にしてる余裕もない。 …ふぅ。 俺はこの3人の真ん中にいる。 俺がしっかりしないと…。 …自分に言い聞かせる。  …よし! 肩を組む両手を力強くギュッと寄せる。 そんな俺に応えるかのように 両側の2人の手も俺を強く締め付けた。 「よし!行くぞーーーーーー!!!!!」 「おーよ!!!!」 「よっしゃあああ!!!」 3人の気持ちがきっと1つになった。 俺らは勢い良く 海に飛び込んでいった。
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