小説

少年裸祭り 【四拾七】

鈴谷 孝輔
  • 鈴谷 孝輔
  • 2009/01/03 10:33
  • 海 ~ 民家
こんなことになるなんてな。 …夢にも思ってなかった。 でも、今となってはもうしょうがない、嘆いたって仕方ない。 男なら、それも全て運命だと受け入れて やり遂げないといけないよな。 「…ちっくしょぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!!」 西島の嘆きと決意の罵声を合図に 俺らは一斉に民家に向かって走り出す。 もう体は感覚がないくらいに冷えてる。 走ってるのか止まってるのかも良く分からない。 ただ、確実に下半身が軽くなっていく感覚が 砂浜に近づいていることを教えてくれていた。 ザバーーーーン…。 俺たち3人の体が、完全に海の外へと露出される。 打ち付ける風が体に当たって 凍ってしまいそうな感覚に陥る。 …何よりも、ちんちんが…冷たい…。 「…ひっ…、ひぐっ…うぅ……。」 猛ダッシュで駆け抜ける中 隣から聞こえてきたのは西島の声。 …泣いてる…んだな。 悪いと思いながらも西島のちんちんを見る。 …さらに小さくなっちまったんじゃないかってくらい めちゃくちゃ小さくて それが一生懸命プルプルプルプル揺れていて …その…なんて言うのかな… 西島には悪いけど、やっぱ可愛かった。 …こんな状況で俺は一体何を考えてるんだろうな。 俺もいろんな人にちんちん見られるのは恥ずかしいけど きっと西島は俺らの何倍も恥ずかしいはずなんだ。 …ちんちんで恥ずかしさ比べるのは どうかと思うけど…さ。 …出来ればこの右手で 西島のちんちんを隠してやりたい。 …でもそう言うワケにもいかないんだ。 俺ら3人は今この瞬間、一心同体。 どうしてもフェアでありたいし そうであるべきなんだと思う。 俺らの速度は落ちることなく 次第に近づいてくる民家と人々の群れ。 もう誰か1人くらいには見られているかもしれない…。 走りながら、間宮のことも考えていた。 さっきあの風呂の脱衣所で 思いっきりちんちん見られちまったけど もしかしたらそのことについて 1人で悩んじまうかもしれない。 考え過ぎかもだけど… 女の子にとって俺みたいな毛の生えたちんちんって やっぱ結構衝撃的だと思うし…。 …だから、こう考えた。 逆に俺がちんちんを他の大勢の人にも見られれば その心の傷も少しは癒えるんじゃないかって…。 悩みを集団で共用できることって きっと救われると思うし…な。 今の俺らの3人の恥ずかしさみたいに。 …なんて 実際そうは言い聞かせてみてるけど ホントは俺だって死ぬほど恥ずかしいんだ。 いつも男ぶって平気な振りしてるけどさ。 …こんなとこで泣きごと言ってても仕方ないけどな。 なんて言ってる内に、もう人だかりがすぐそこに。 男の人の歓声や女の人の悲鳴が聞こえる。 …そりゃあそうだよな…素っ裸だもんな…俺ら。 間宮を探そうと思った…けど、止めた。 後はもう無心でいよう。 それにこれは神聖な祭りなんだ。 最後くらい邪念を捨てて突っ走ろう。 俺らの走行を避けるかのように 人が民家への道を作っていく。 やっぱ恥ずかしい…けど、それは3人みんな一緒だ。 ちんちんが3本もあれば、みんなそれぞれに目が行くだろ。 …つまりは恥ずかしさだって3分の1なんだ。 「見たきゃ見やがれぇぇぇぇぇええええええ!!!!!!」 いきなり隣で泣きながら大声で叫ぶ西島。 …ははは!だよな。 見たきゃ見やがれってんだ。 やっぱ西島、お前は男だよ! そうさ、俺らが今年の年男なんだ! 俺は右手を上に掲げ ちんちんを見せ付けるように走った。 この勇姿、みんな見てくれよ!! …もうちょっとだ、行くぜぇ2人共!!
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