小説

お尻たたきの刑

わたしたちのクラスでは 帰りの会で、今日誰々にこんな嫌なことされた、とか 誰々が誰々にこんなことしてた 悪口言ってた、みたいな感じで 先生に人の悪さを報告、チクる時間が 設けられていた。 「はい、じゃー今日何かあった人、手ぇ挙げて~。」 先生のいつものその台詞に、心臓が跳ねる。 何故って?今日わたしは、初めてこの場を借りて 先生に、報告をしてみようと思っているから。 「…今日は誰もいないかな~?」 ドキドキドキドキ…!!! お、終わっちゃう…!!も、もう挙げちゃえ!! えいっ…!!! 「…ん、あら珍しい。じゃー梅田さん。」 挙げちゃった…!!で、でも 今日のアレは絶対に先生の耳に 届けておきたかったから…!!! 「…きょ、今日、宮元くんに…」 -えー。 -また宮元ー? -もーう… わたしの口から出た”宮元くん”と言う言葉に クラスのみんなが口々にそう声を漏らす。 「はい静かにっ!!…梅田さん続けて。」 「はい…、えっと…今日、宮元くんに…  体育の時間の後、着替え終わった後に…  …スカートをめくられました。」 -えーーーーー!!!!! -やだーーーーー!!!! -さいってーーーーー!!!! -またなのぉーーー!!?? わたしの告白に、女の子たちは一斉に大ブーイング。 男の子たちは、宮元くんを見ながらケラケラと笑う。 当の宮元くんは、全く動じていない感じで 他の男の子たちと一緒になって笑っている。 もう!わたし本当に恥ずかしかったのに…!! …信じらんないっ!!! 「はいはいみんな静かにしてーーー!!」 口々に顔を合わせる女の子たちが、一斉に前を向く。 「梅田さんがこう言ってます。  宮元くん、これは事実ですか?」 「…え?まぁ、事実なんじゃないですか?」 -何それー!!! -さいってーーーー!!! 宮元くんのぶっきら棒で適当な返事に またしても女の子たちは大非難。 「なんでそんなことしたの?」 「…え、なんでってぇ…別に?なんとなく。」 -なんとなくって何よーーーー!!! -意味分かんなーーーーい!!! 「梅田さん、宮元くんにスカートめくられて  どんな気持ちになりましたか?」 「…すっごく、すっごく恥ずかしかったです。」 …そりゃそうだよ。 パンツ全部見られちゃったんだもん。 「宮元くん、梅田さん嫌だったって言ってるけど?」 「え?別にいいじゃんパンツくらい。」 -ホントさいてーーーー!!!! -パンツは女の子の命なのにーーー!!! -…え?それは…。 「梅田さんは嫌だったって言ってるの。」 「へぇ、じゃあ、悪ぅございました。…くく。」 -ちゃんと謝んなさいよー!!! 「…宮元くん立って。ちゃんと梅田さんの方向いて。」 「へいへい。」 「ごめんなさいして。」 「はい、ごめんなさい、もうしません。」 そう言って わたしの方を向きながら謝罪をしてくる宮元くん。 …でもわたしには分かった、全然反省してない。 だって目も口元も笑ってたもん。 …もうっ、ホント許せないっ!!! 「…梅田さん。これでいいかな?」 先生のその言葉に、わたしはやりきれない思いを 胸いっぱいに抱えながらも 「…はい。」 と言って席に着く。 宮元くんも、何事もなかったかのように ゆっくりと腰を下ろして、結局ただの報告で終了… かと思ったその瞬間。 「先生っ!!!」 1人の女の子が徐に席から立ち上がり 先生に向かってそう叫ぶ。上野さんだ。 「はい、上野さん。なんですか?」 「宮元くん、先生も知ってると思うけど  前にも何回も何回もこういうことしてきました!!  だからいくらここで謝ったって  直らないと思います!!  絶対また同じこと繰り返すと思います!!!」 上野さんのその発言に、大きく頷くわたし。 -そうだそうだー!! -絶対そうだよーー!!! 口々に他の女の子たちも同意する。 「宮元くん、上野さんそう言ってるけど?」 「…え?やらないよ、もうやんないって、…くく。」 「……。」 絶対やるよっ!!!わたし断言できるもんっ!!! 「じゃあ上野さん。  どうすれば宮元くんは悪さをしなくなると思う?」 先生も宮元くんの態度に痺れを切らしたのか 上野さんにそんな質問をしてくる。 「…何か、罰を受けるべきだと思います!!」 「はぁ?何だよそれーーー!!!」 上野さんの提案に納得のいかない様子の宮元くん。 -さんせーーい!! -絶対それいいと思うー!!! 対照的に大賛成の意を露にするわたしたち女子。 「じゃあどんな罰がいいと思う?」 …あれ?先生だんだん乗ってきてる? よしよしっ!なんだか凄くいい傾向…!! 先生のその問いかけに、上野さんは少し迷った挙句 ちょっと恥ずかしながら先生にこう告げる。 「…お尻たたきが、いいと思いますっ!!!」 ちょっと意外な台詞に、女の子たちは一瞬ポカーン。 -…あはは!!何言ってんの上野ー!! -エッローー!!ははは!!! 男の子たちの嘲笑が、上野さんを襲う。 顔をまっかっかにして恥ずかしがりはじめる上野さん。 …せ、せっかく一生懸命になって発言してくれたのに。 可愛そう…、わ、わたし、助けなきゃっ…!! 「わ、わたしもそれに賛成です!!!」 意を決して、手を挙げながらその場で立ち上がるわたし。 一斉にわたしにみんなの視線が集まる。 恥ずかしいけど、わたしだって宮元くんに 仕返ししたい気持ちは一緒だもん!! …そんなわたしたち2人をアシストしてくれるように 「わたしも!!」 「わたしも賛成です!!!」 「お尻たたきするべきですっ!!!」 と次々に女の子たちが立ち上がり始める。 み、みんな…!!! そんな、いつもの帰りの会では見られないような 女の子たちの異様な集団一揆に 男の子たちはさすがに驚き始める。 当の宮元くんも…、ちょっとビックリしてた。 立ち上がったわたしたち女子を教壇の上から眺めながら 少し思考をめぐらせる程度の沈黙を作る先生。 「…女の子たちがこう言ってるけど  宮元くん、どうする?」 先生が宮元くんの方を向き、鋭い目つきでそう問いかける。 「あー?なんだよお尻たたきって。  …ってか尻たたきくらいなら  いくらでもやってやるし。」 そう言うと宮元くんはその場でバッと立ち上がり 「ほらよ。」と言うと、わたしたちの方に お尻を向けて、自分で自分のお尻を ぺんぺんっとたたいてみせた。 -はははははは!!!!! 一斉に湧き上がる男の子たち。 -……!!! 目くじらを立てて宮元くんを睨むわたしたち。 そんな光景を見た先生が、ついに動いた。 「はい静かにっ!!!」 少し大きな声になった先生が、声を響かせる。 「…宮元くん、立ちなさい。」 「えーなんだよもーう。」 気だるそうに立ち上がる宮元くん。 「あなたには少し、罰が必要みたいです。  ちょっと前に来なさい。」 「え、な、なんだよそれ、ヤだよ。」 「来なさいっ!!!!」 今日一番の先生の声が教室中に響き渡る。 男の子たち、わたしたち女子も さすがにそれには驚く。 目を丸くし、急に動揺し始めた宮元くんが ゆっくりと先生のいる教壇に向かって 歩き出す。 急に静まり返った教室。 それもそのはず、あのいつも温厚で優しい先生が 信じられないくらい大きな声で 教え子に向かって怒鳴った… こんなこと今までなかったもん。 わたしたち女子はもちろん 男子たちもさすがにビックリして 黙る以外のリアクションを忘れてしまっている。 タッタッタッ… 静かな教室に、宮元くんの歩く足音が 異常に大きく響き渡る。 -…ッタ。 最後の足音が終了する。 不安そうな、嫌そうな、顔を引きつった表情で 先生の隣に到着する宮元くん。 少し距離を取ったその空間が 異常事態への戸惑いを物語っている。 「…宮元くん、分かってるわね?」 「…え、な、なんだよ。」 先生の目も見ず、困ったように呟く宮元くん。 「さっき、上野さんが言ったこと。  あなたには罰が必要だと、先生は判断しました。」 口調がなんだか、いつもの先生じゃないみたい。 …なんだか冷酷で、感情がないみたいで …怖い。 「な、なんなんだよもう。」 「お尻たたきだったわよね?」 今度は上野さんに向かって、先生が言う。 「…あ、…は、はいっ!!」 「…そう言うことです。宮元くん。」 罪人を蔑むような、愛情の全くない視線と口調で 宮元くんを見下ろす先生。 「…な、なんだよ、こえーな先生。  だから尻たたきくらいいくらでもやってやるって。  ほら、ほーいほーい。」 そう言って、再びお尻をわたしたちの方に向けて ペンペンと自分でたたいて見せてくる宮元くん。 …結果虚しく、誰一人の笑いを得ることもなく 言うならばダダ滑り。 わたしたち女子はもちろん さっきは大笑いしていた男子たちも 『今それは笑えねーわ…』と言った表情で 宮元くんのその姿を見つめながら 絵に描いたような苦笑いを送っている。 「ほーいほーいほーい…ほー……、…。」 あまりにも孤立無援なその状況に 流石にその醜態を一時停止し 再びわたしたちの方に体を向ける宮元くん。 …その顔は、見たことないくらいに真っ赤に染まってた。 いつもみんなを笑わせてる宮元くんだからね。 きっとこんなに笑ってもらえなかったの 初めてだったんじゃないかな。 …ふん、自業自得だけどさ。 「…そう言うことだから、宮元くん。  お尻出して。」 完全アウェイの宮元くん初滑り舞台が 終わったことを横目で確認すると 先生は一気に核心に迫るそのセリフを 宮元くんに投げかける。 遂に来た…!!きっと被害に遭ったことのある 全ての女の子がこのときを待っていたに違いない。 あの宮元くんに屈辱を…!! 「…やだね。」 …と、そう上手いこといくはずもなく 先生の方を全く見ようともせず 当然のごとく抵抗を見せる宮元くん。 「これは先生の命令よ?  さぁ早くして、こっちに来なさい。」 「やだよ、なんでオレがそんなことしなきゃ  いけねーんだよ。  別にオレそんな悪いことしてねーじゃん。」 悪いことしてないって…! やっぱり全然反省してないじゃん!! ホントもう許せないっ!!! 「この中で、宮元くんにスカートめくり、その他  何か嫌な思いをするようなことを  されたことがある人、手挙げて。」 急に、今度はわたしたちに質問を投げてくる先生。 真っ先に手を挙げたのは上野さん。 顔は真っ赤だけど、目の輝きは正義に満ちている。 つられるようにして、わたしも手を挙げる。 …と、連鎖反応を起こすように、次々と 女の子たちが、わたしも、わたしもと 手を挙げ始め… 正直びっくりした、最終的には クラスの女子全員が、手を挙げてた。 びっくり、って言うか、もう あきれたに近いかな。 クラスの女の子全員に手を出していたなんて… …いや、表現はちょっとおかしいかもしれないけど とにかく、…さいってー。 「…どう?これでも悪いことしてないって  言えるの?」 再び宮元くんの方を向きながら 相変わらず冷酷な対応を続ける先生。 「………。」 頭を掻きながら、反論の言葉もなく でも、今の状況に焦っていると言うよりは ただめんどくさそうに、ことが終わるのを 待っているといった様子の宮元くん。 「罪を犯した人にはね、罰が必要なの。  ここで全部清算しましょう、宮元くん。」 口調はいつもの優しい先生に戻ったけど 雰囲気は未だに冷徹なままで どこかの宗教団体の長のような、絶対的な圧力があって とにかく、不気味だった。 「さ、こっちに来て。」 「…やだね、そんなアホらしいこと。」 それでも尚、反抗的に振る舞う宮元くん。 ホント子どもなんだから…。 早くお尻ペンペンされろーっ!! 「あら、いいのかしら?」 そんな宮元くんの態度に、全く動じることもなく 先生は何か切り札を持っているかのような 余裕の素振りを見せる。 「…何がだよ。」 「…ふぅ。こんなことホントはしたくないんだけど。  もし言うこと聞かないんだったら  先生にも考えがあるってこと。」 「…だ、だからなんだよ。」 「今学期のあなたの成績、全部Cにします。」 「えぇっ!?」 えぇっ!!!??? 声には出さなかったけど、きっとわたしを含め クラス中の全員が心の中でそう思ったに違いない。 A・B・Cの3段階評価で決まる通知表の評価。 全部Cなんて、そんな残念すぎる評価… 親にも見せられないし…、間違いなく一生の汚点になる。 そこまでするか先生…!! …でも、小さくガッツポーズをしてしまうわたし。 「…そ、そんなっ…。」 「そーだ、あなたの親御さんへのコメント欄に  今までの悪事を全部書いてあげちゃおうかしら。  箇条書きで。」 「……!!!」 ドンドン顔色が悪くなっていく宮元くん。 先生はまるで、楽しいことを思いついた子供のように ニコニコと笑いながら、信じられない発言を 淡々と紡いでいく。 「…ま、あなたが従わなかった場合の  話だけどね。」 不気味な笑いで、宮元くんにそう笑いかける先生。 「………。」 もう何も反論の余地などない。 ただ1つ分かるのはきっと そんなことになったら、とてつもなくマズいってこと。 それだけはきっと、宮元くんを含め わたしたち全員が共通して理解できる事実。 「-…くっ。」 宮元くんの小さく押し殺した声が わたしたちの耳に届く。 きっと、先生という 絶対的な権力を持つ存在の大きさを改めて確認し その圧力に、どうすることもできない自分が ただただ歯がゆくて、悔しいに違いない。 宮元くんは、それ以上はもう何も言うこともなく ゆっくりと、完全降伏を掲げた武士のごとく 先生のすぐ隣にまで歩を進める。 「…覚悟はできた?」 「………。」 先生の言葉に、顔を歪める宮元くん。 「返事しないと分かんないわよ。」 「……は、早くやれよ。」 「返事は、“はい”か“いいえ”でしょ。」 「……。」 「返事は?」 「……はい。」 「はい、それでいいのよ。」 あの宮元くんが、完全に手のひらで転がされてる…。 さすが先生…。 「じゃ、みんなにお尻向けて。」 無言のまま、ゆっくりと黒板の方を向く宮元くん。 「教卓に両手を付いて、お尻を突き出して。」 言われるがままに、お尻を突き出す宮元くん。 準備万端…、遂にこの瞬間が…!!! 「じゃ、脱がすわね。」 「……、…え!?」 …え!? 「…直?」 直!? 「直。」 「…な、生?」 生…!? 「生、当然でしょ。」 「そ、それは……!?」 お尻…丸出し…!? 「じゃあ、オールC?」 「……くっ!!」 「箇条書き?」 「…く、くそー!!勝手にしろよっ!!」 「はい、勝手にします。」 -ズリリッ!!!!! ズボンを掴んだ先生の手が 思い切り下降する。 一瞬の出来事に、わたしはただ呆然と 目の前に写る光景を 必死に、頭の中で整理していた。 先生の手によってズリ下ろされた 宮元くんのズボン…、とパンツ。 …つまり、今わたしたちの目の前にあるアレは… 桃…?…なワケないよね。 …そうだよね単純に考えれば分かるよね。 アレは…、宮元くんのお尻なんだ。 薄肌色のぷりんとした可愛らしいお尻が わたしたちの目の前にこんにちわする。 弾けんばかりに元気よく飛び出したお尻を 宮元くんはただただ無言で、わたしたちの方へ 突き出し続ける。 -ちゃんと真ん中でクッキリ割れてる。 …そうだ、正真正銘誰が見てもあれは お尻…だ。…あの、宮元くんの。 -いやっ…! -きゃっ…! -うそっ…! 三者三様の恥じらい交じりのリアクションで 宮元くんのお尻の登場を出迎えるわたしたち女子。 かく言うわたしももちろんその中の1人。 ついにあの宮元くんにギャフンと言わせることが出来た…! …ホントなら、その目標達成の事実に 誰かにバレてしまうくらいの大きなガッツポーズをして 喜び跳ね上がりたい気持ちなんだけど… 今はそんな余裕全くなくて …と言うかそんなことよりも 目の前に打ちあがった宮元くんの桃に釘付けで 目を逸らして恥らう振りはしてみるものの 結局は何処に逸らしても 吸いつけられるように視線が舞い戻る場所は 常にそこで そこにはきっと、宮元くんは前向いてるから気づかないし 見てたってきっと何も言われないよね…! と言う甘えた推測と むしろジックリ見てやらないと罰にならないじゃん! わたしは当然のことをしているまで…!と言う 自分の行為への必死の正当化が背景にあって でもでも他の男子にそんなわたしの姿見られたら エロい女だって思われるかもしれない…けど でもなんだかんだで実は宮元くんのお尻に もの凄く興味津々で、もっと見てみたいと思うし でもそんなこと続けてたらわたし…!! 頭の中でたくさんのわたしがわたしと口論する。 …でもまとめると、結局のところ わたしはずっと、宮元くんのお尻を見てた。 他の男子たちはと言うと、完全に戦意喪失。 級友のあられもない姿を ただただ信じがたい様子で無言で眺めている。 1歩間違えば、自分があーなっていたかもしれない… なんてことを、想像しているのかな…。 「…よし、出たわね。」 宮元くんのパンツ入りズボンを これでもかとくるぶし辺りまでズリ下ろすと 先生はまず、満足そうにそう呟く。 「………!!」 教卓に両手を付けたまま、ただただ無言で わたしたちにお尻を披露し続ける宮元くん。 どんな顔をしているんだろう…。 わたしたしからは、その顔を見ることは出来ない。 「…全く、まだまだ子供なのに  ませたマネするもんじゃないのよ。」 先生のその一言に、宮元くんは咄嗟に片手を動かし 大事そうに何かを隠す。 後ろからだから良く分からないけれど きっと前を隠したんだよね。 そっか…、先生のあの位置からだと 宮元くんのお尻…どころか、おちん…まで 丸見えだったのかな。 そう考えるとなんだかもの凄く…と言うか更に… ドキドキしてしまった。 そっか…、まだまだ子供なんだ、宮元くん。 …もぅ。 「…両手は机の上、でしょ?」 そんな宮元くんの恥じらい行為を 真っ向から否定する先生。 「…で、でも…!!」 「あら…、学校初のオールCかしら?」 「…くっ。」 -サッ。 防御虚しく、その一言であっけなく 両手を元の位置に戻す羽目になる宮元くん。 先生の冷たい視線は、きっと確実に宮元くんの 一番大事な部分を捉えていて ちょっとやり過ぎ…と思いながらも 羨ましい…なんて感情が芽生えてしまったり… い、いや別に…!!ぃ…。 と、とにかく 見えないと言えど、クラスメイト全員の前で 下半身丸出しの醜態を晒す…なんて これ以上の屈辱ないよね…。 その上、これからそのお尻を…。 「それじゃ、早速。」 たたくんだよね…、先生…、鬼。 「…えっと、クラスの女の子は全部で15人…よね。  その女の子全員が  嫌な思いをさせられたって言うんだから…  1人1たたき計算で、15回分ね。」 …なんと言う単純計算…でありながらの 徹底した罰。 「いいかしら?」 「………。」 「返事は?」 「……ぅ。」 「…箇条書き?」 「……!!…は、はぃ……。」 聴いたことないような、減衰した宮元くんの声。 顔が見えないから分からないけど 泣いているように…わたしには感じた。 「じゃあ、行きます。」 そう行って 先生がゆっくりと利き手である右手を上昇させていき 程よい高度に達した瞬間、素早くそれを 1点目掛けて振り下ろす。 「1。」 -ペチンッ!!! 予想外の強さ…を思わせる破裂音が教室に響き 一瞬、教室全体がビクッとする。 …先生、…容赦ない…!!! 「2。」 -ペチンッ!!! 「3。」 -ペチンッ!!! 「4。」 -ペチンッ!!! 絶え間なく続く、先生の 宮本くんのお尻への襲撃。 身を固めてその攻撃に耐え続ける宮元くん。 「8。」 -ペチンッ!!! 「9。」 -ペチンッ!!! ほぼ完璧な一定のリズムで 何の躊躇いもなくお尻をたたいていく先生。 痛そう…、と言うか、絶対に痛い。 必死で無言で耐えているけど、お尻は嘘を付けない。 先生の数える数字が増していくたびに 先生の手がゆっくりと振り上げられるたびに 宮元くんのお尻が、徐々に赤みを帯びていくのが 面白いように目視で確認が出来てしまう。 「12」 -ペチンッ!!! 「13。」 -ペチンッ!!! あんなに色の薄かった宮元くんのお尻は 今はもう、良く熟された食べごろの桃のごとく ピンク色に腫れ上がっている。 痛そう…、さすがにちょっと可哀相… でも、なんでだかわたし…、そんな光景に 一心不乱で大興奮してた。 「14。」 -ペチンッ!!! あと1回…!! ラスト1回が少し名残惜しいような でも早くたたいてもっと赤らめてほしいような 良く分からない感情になっているわたし。 でも…もう終わらせちゃって先生…!! 頭に刻まれた一定周期のリズムに乗せて 重ね合わせるように最後の15を頭の中で唱える…、と 異常事態が発生する。 わたしの15と先生の15がシンクロしない。 …リズムがずれた…?いや、そうじゃない。 答えはもっと簡単、先生の動きが止まったんだ。 あと1回だよ先生…?、全部で15だよ先生…? そんなわたしの疑問を払拭するように 先生から飛び出したセリフは 「…梅田さん。」 …え、…えぇ!? わたし…の名前…?呼んだ…? …ななななんで…? 「…!!ふ、ふぁい…!!!」 突然の名指しに 有り合わせのギリシャ文字で応答するわたし。 「…最後の1回は、あなたがやりなさい。  その方が、効果的でしょう。」 「…ぇ。」 「梅田さん、前へ。」 …うそ……。 先生の口から発せられたわたしの苗字に 一瞬わたしは 悪事がバレて追い詰められた罪人のような ある種の絶望感に襲われる。 でもわたしには、そんな悪事を行った記憶はない。 …むしろ宮元くんに悪いことをされた…。 そ、そうだよ…、落ち着いて。 わたしが今先生に呼ばれて前に出て行くのは わたし自身の手で宮元くんに罰を与えるためであって わたし自身が先生から罰を受けるわけじゃないんだよ…。 …なんて、何を馬鹿なことを言ってるんだって話だけど それくらい、わたしの頭を混乱させるくらい 先生の発する一言一句が、冷徹で、無感情で それがいつものあの優しい先生と同一人物かと思うと もの凄く怖くなったりもした。 「…梅田さん?」 呆然と思考を巡らせるわたしの脳に もう一度先生の冷徹な声が突き刺さる。 二度目にも関わらず、再び鳥肌が立つ。 …い、いけない…、このままじゃわたしまで…!! そんなはずないけど、わたしの脳が勝手に そう危険信号を発する。と、とにかく…! 「…は、はいっ!!」 大きな返事をして、その場で立ち上がるわたし。 視聴率100%だったはずの宮元くんのお尻から 徐々にわたしへと、そのレートが流れ始める。 ドキドキがまた急に増し始める。 こんなに注目されるのきっと初めてだから…? いや、先生にこんなにも見つめられているから…? いや、これから宮元くんのお尻を わたしのこの手でたたくから…? …答えなんて見つけようがない。 だってきっと、その全部が答えだから。 「…それじゃあ、前へ。」 「……!!」 「前へ。」 「…っ!!は、はいっ!!!」 有無を言わせない、先生の拷問のような指示。 この状況下で逆らえる人がもしいたら わたしは全身全霊で敬意を表したい。 …当然、そんな反逆精神など芽生えるはずもなく 見守るみんなの机と机の間を縫って 依然お尻丸出しの宮元くんの隣り、先生の目の前へと わたしはゆっくりと歩を進めていく。 本当にすぐ隣りに、クラスメイト全員に 真っ赤なお尻を突き出し続ける宮元くんがいる。 …けど、その姿を横目ですら見ることなんて 恥ずかしくてできない。 それに、この位置からだと、宮元くんのアレも 見えてしまうかもしれない…。 「…もっとこっちに来なさい梅田さん。」 見つめる先生が自分の隣りに来るようにと 顔と手でわたしを誘導してくる。 何故か微笑む先生がとにかく不気味で わたしはただただそれに従うしかない。 でも…、その位置からは確実に…。 それを分かっていながらも、気がつくと静かに 先生の真横へと到着しているわたしがいた。 だって…、仕方がないから…。 この後どうすればいいのか分かっていながらも しばし、目の前の黒板に視線を固定させる。 「ほら梅田さん、そっち見てたって仕方ないでしょ。」 真横の先生が、呆れたようにわたしに言う。 …分かってるよ、先生の言いたいことくらい。 わたしに宮元くんのお尻をたたかせる…より先に わたしに宮元くんの、一番大事な部分を 見せようとしてるんでしょ? じゃないと、こんな誘導おかしいもん…。 …断ることなんてできない、それに これ以上このままこうしているワケにもいかない…。 …わ、分かったよ、分かったよ先生。 み、見ればいいんでしょ。 見てやればいいんでしょ…、宮元くんの…!! 蒸発しそうなくらい熱くなった頭を わたしは思いっきり180°回転させる。 その遠心力に任せて そのまま宮元くんの方へと、体ごと向けてやる…!!! 目の前に広がる、見なれたみんなの顔。 面白いように、みんながみんなこっちを向いてる。 そうしなければいけないと、先生に言われているように その暗黙の事実をみんながみんな共有しているように ただ1点、わたしたちの方を見ている。 その視線の先の大部分を占めている 今回の事件の犯人、宮元くん。 教卓に手をつき、顔を腕に埋め 先生の忠告通り、ただただ恥ずかしいポーズを キープしている。 …と、そうだった…! この位置からは、宮元くんの…!! いけないと思いながらも 自然とわたしの視線は宮元くんの下半身へと下降していく。 …き、きっとこの辺に…! …そんな心の叫びも杞憂に過ぎず そこに宮元くんの大事な大事なそれはなかった。 …理由は簡単。 また、右手で隠してたから。 ふぅ、そりゃそうだよね。 ホッと、胸を撫で下ろし見ないで済んだことに 安堵するわたし。 …でも、ドキドキがまだ全く消えないのはきっと その事実に自分自身が納得していない証拠。 それに、これで終わるはずがないことを 誰よりもこのわたしが、分かってしまっているから…。 「…宮元くん、さっきの忠告、もう忘れたの?」 …きた。 「………!!」 左腕で顔を隠したまま、ジッと静寂に耐える宮元くん。 でも、この近さからだと 小刻みに体が震えているのが分かってしまう。 「両手は教卓の上…、でしょ?」 「……!!」 「あら、残念ね~。  ここまで来ておいて  結局オールCコースを選ぶの…。」 「…だ、だって…!!!」 先生の言葉攻めに、我慢しきれなくなった宮元くんが そのポーズのまま、顔だけ上げてそう反応する。 お尻を披露してから初めて見た、宮元くんの顔。 想像はしていたけど、そんな想像を遥かに超えるほど 真っ赤に染まり上がった顔。 そこにはいつものやんちゃな宮元くんの面影はなくて 命乞いをする崖っぷち剣士のように 弱り切っていて、減衰していて、哀れな姿だった。 気付かなかったけど、目の周りが濡れている。 …ずっと、泣いていたんだ。 「『だって』は、禁止用語よ、宮元くん。」 「…だ、……てさ…。  そんなの、聞いて…ねぇ…し。」 「聞こえません。  さ、手を机の上に。5秒以内。」 「…そ、そん…な。」 「5、4、3…」 「…うっ。」 慈愛の念など欠片も失くした先生にはもう 宮元くんからのSOSなど、何1つ届かない。 結局宮元くんは、先生の指令に従うことになって…。 ゆっくりと、ディフェンスを担っていた右手をほどき 両手を教卓に載せ、そこに顔を埋める宮元くん。 …と同時に。 …、…見えた。見…えちゃった。 わたしの位置から 完全にガードするものがなくなったことで 完全に露わになった…宮元くんの… おちんちん。 …目を疑いたくなるほど、小さくて、可愛くて まだまだツルツルで… 小刻みに震えているせいで、おちんちんにまでそれが伝わり ぴょこぴょこと、こちらも小刻みに揺れる。 …なんで揺れてるの…? なんでわたし見てるの…? なんでこんなに…、ドキドキしてる…の。 「…どう?梅田さん。」 …再び体が跳ね上がる。 どうって、せ、先生…そんな質問…おかしいよ。 何がですか…?なんて、聞き返せるわけないし…。 可愛い…、なんて言えるわけないし…。 …ど、どうしろって…。 「…梅田さん?」 …分かったよ、答えればいいんでしょ。 …そ、そう。…い、一番簡単に言えば… 「…ま、まだまだ、子供…です。」 何言ってんのわたしって思った。 恥ずかしすぎて、言った後消えてしまいたいって思った。 …でも、そうせざるを得ないオーラが 先生にはあって、逃げられないと分かってた。 …それに、もっとタチが悪いのは その感想が、わたしの本心から出たものだったってこと。 だって、ホントに、おこちゃまの…おちんちんだったんだ。 「…よく聞こえないわ梅田さん。  もっと大きな声で。」 …鬼、…先生の鬼っ!! …も、もう。…知らないっ。 「…まだまだ、こ、子供だと思いますっ!!」 やけくそになって、大声で言うわたし。 もう、泣いてしまいたいくらい、恥ずかしかった。 いつまでも震える宮元くんのおちんちんが 可愛いと思いながらも、憎らしくさえ感じた。 一瞬シーン…とする教室に、先生から1つコメント。 「…先生も、そう思います。」 そっと横を見上げると、そこにある先生の顔には 満面の笑みが広がっていて 改めて、鬼だと、わたしは確信した。 -くく。 -マジかよ…。 -やだぁ。 わたしと先生の掛け合いの後、少しざわつく教室。 …何でわたしまでこんな恥ずかしい目に遭うのよ。 もう、…やだよ。 その代償として先生が用意したのが きっとこの、宮元くんのおちんちん鑑賞券なんだろうけど そんなの…、そりゃ 可愛いとは思うし あの宮元くんがこんなおちんちんだなんて… なんて思うと、それはそれで… …もう、わたしこれからどうすれば…。 「…さ、梅田さん。最後に宮元くんのお尻。  たたいて終わらせちゃって。」 …そ、うだよね。忘れてたけど。 それが本当の目的だもんね。 …当初は躊躇っていたけど、今は今すぐにでも この場を立ち去りたい。 目にしっかり、宮元くんのおちんちんを焼き付けて… …て何やってんのわたしもうっ!! 急ぎ足で宮元くんの隣りへと移動し 適当にペチンとたたいて 急いで席に戻ろうと思ってた。 …のに。 「…この、エロ女。」 わたしが近づいてきたのを感知した宮元くんが 最後の悪あがきとばかりに 顔を埋めたまま、絞り出すような声で わたしに罵声をかます。 先生に聞こえないような絶妙なボリュームで 完全にわたしにしか聞こえないような声で…。 -限界を超える、わたしの羞恥ボルテージ。 …な、なによエロ女って…!! そんなこと言われる筋合い… …有りすぎてどうすればいいのか分かんないじゃん…!! おちんちん見て、「まだまだ子供だと思う。」なんて ただの…、変態女じゃん…!! 先生の馬鹿…、宮元くんの馬鹿…、みんなの馬鹿… 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿…!!!! 「…ば、馬鹿野郎ーーーーーーーーー!!!!!」 自分でも出したことないような声を発し 一心不乱になって、右手を天高くにかざすわたし。 視線を完璧に、赤く腫れあがった宮元くんのお尻に合わせ ロックオンする。 この上からたたいたら、絶対に痛い。 少し時間が空いているのもまた、痛さに拍車をかけるはず。 …でも、もうそんなこと、知らない。 可哀そう…なんて気持ち、1つもない。 もっと、もっともっと、腫れ上がればいいんだ…!! グチャグチャになった感情を右手の先端に集め 絶対に自分でも出したことのないような力を込めて 思いっきり、ターゲットのお尻を目がけて それを振り下ろした。 -…ヴゥゥゥァァァアアチーーーーーーーンッッッッ!!! この世の終わりのような爆発音が、教室全体を覆う。 息が苦しい。目の前がぼやけてよく分からない。 ただ、右手に来るもの凄い衝撃と痛みが 15回目のお尻たたきが終わったことだけを教えてくれる。 良く神経を尖らすと、生温かい人肌が 右手から脳へと伝達される。 …お…、しり……? わたしは瞬時に手を振りほどき 一目散に自分の席へと急ぐ。 みんなの視線が痛い、なんだかザワザワしてる…。 …あ、…たり前だよ…!!! 席に着き、教卓上の宮元くんのように 両手で顔を隠し、現実逃避に入るわたし。 …穴があったら、入りたい。 みんなの騒ぎ声が耳の奥で反響して 意識が飛びそうになる。 …いっそ意識を失ってしまいたい。 …でも、そうなってくれない、…のは 先生の呪いなのかな。 今、どうなっているんだろう。 ただ1つ分かるのは、先生が嬉しそうに 笑っているってこと。 …鬼。
-おしまい-
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