小説

言葉攻め

おふざけキャラの美沙と、強気で冷静な綾と、私。 いつも一緒の仲良し3人組。 現在サークルの合宿中。 今みんなは練習している時間帯だけど 一足先に温泉に入りに行こうと 練習を抜け出してきた私達。 「え、ちょっとこの時間帯  混浴しか空いてないらしいよー!?」 「うっそホントに!?」 「大ジョブでしょ。  この時間帯なら誰もいないって。」 相変わらず強気な綾。 全く気にもせず、ズカズカと混浴の脱衣所へと入っていく。 少し躊躇いながらもそれに従う私と美沙。 案の定脱衣所には誰もいず でも少し警戒しながら、最初からタオルを巻きながら 着替えていく私達。 「…ふぅ。」 着替え終わりいざ浴場へ、と言ったその矢先。 -ガラガラガラッ。 脱衣所に誰かが入ってくる音がする。 こんな時間に誰っ!?と思いながらそちらに目をやると 入ってきたのは同じ大1の篠原君だった。 サークルではクールキャラで通っていて 結構ミステリアスな感じの人だけど 普通に上手いし、外見もカッコよかったから 密かに想いを寄せている子は結構いた。 「…ちょ、ちょっとやだぁ!!」 「…何が。」 動揺する美沙。もちろん私も。 私達の存在に少し驚きながらも 何だよ、とばかりにズカズカ入ってくる篠原君。 「何がって…」 「今ここしか空いてねぇんだよ。  それにここ混浴だろ、問題ねぇだろ。」 「篠原君エッチー!ねぇ綾ぁ!」 「…別に混浴だし、問題ないでしょ。  それより篠原練習は?」 「ダルいから抜けてきた。」 そう言いながら、おもむろに服を脱ぎ始める篠原君。 「ちょ、やー!!」 「うるせぇなぁ、いちいち…」 そう言いながらも、少し顔が赤くなっている。 「…ってか、先に入ってよーよ!!」 「…そ、そね!!」 「そうね、んじゃ篠原お先。」 「おぅ。」 ジーンズに手をかける篠原君を横目に 浴場のある屋外へとそそくさと向かう私達。 外に出て、ちょっとした石段を下ると 大きな温泉が待ち構えていた。 「…はぁ~、気持ちいい~…。」 「練習抜けてきて良かったねぇ。」 「そーだね。」 「…にしても、篠原君びっくりしたぁ。」 「ね、ってかすぐここ来るんでしょ?」 「やばーい。…ってか  ちゃんとタオル巻いてくるよね…?」 「…分かんないよ。  すっぽんぽんできちゃうかも…!?」 「やぁだぁー!!」 「…はは、まさか。」 妙にテンションの上がってしまう私と美沙。 まさか…と言いながらも 少し期待しているのか いつも冷静な綾も、少し顔を赤く染めている。 -ギィ…。 そんな話をしていると、脱衣所のドアが開く音が。 私達3人が一斉にそちらに目を向ける。 ドキドキドキ… 視界に入ったのは しっかりタオルを腰に巻いた篠原君の姿だった。 「あーーーーーー。」 何を期待していたのか 顔を見合わせて声を上げる私と美沙。 「そりゃそうでしょ。」 そう言って笑いながらも こちらに向かってくる篠原君を見ながら 胸に手を当てている綾。 タオル巻いているからといっても ほとんど裸だもん、そりゃドキドキするって。 ギャランドゥ…、丸見えだし。 「…それに、見せれないんじゃない?  篠原のちっちゃいし。」 「…え。」 突然の綾の発言にびっくりする私と美沙。 「見たこと…あるの?綾。」 「ダイブ前だけどね、同じ小学校だったし。  こんなだった。」 そう言って、指で大きさを見せてくる綾。 「やだ綾ぁ!!」 「もーう!!」 そう言いながらも大興奮の私と美沙。 騒ぐ私達をチラチラ横目で見ながら 石段をゆっくりと降りてくる篠原君。 「でもいがーい…、篠原君がねぇ…」 「…ふふ、なんか立派なイメージだったけど。」 いつの間にか3人一致団結して 降りてくる篠原君に聞こえるように 大きな声でそんな恥ずかしい話をしている私達。 「まぁ、まだ被ってるんじゃない?」 「やだぁ!!」 極めつけの言葉を、綾が呟いたその瞬間。 篠原君が石段を降りきった…その瞬間。 …バァッ!! タオルが思い切り風になびく音。 何!?と混乱する必要もなく それは篠原君が腰に巻いたタオルを 思いっきり取り去った音だった。 ポロロンッ。 当然のごとく、その代償として 混浴場内で露になる、篠原君の…おちんちん。 タオルを思い切り取り去った勢いで 篠原君のそれが思い切りスイングする。 「きゃーーー!!!」 大声をあげ、顔を見合わせる私と美沙。 その光景をマジマジと見つめる綾。 当の生まれたままの姿になった篠原君は 巻いていたタオルを腰にかけながら 温泉の中に入ってくる。 大胆すぎる行動をした反面 実際はきっと照れているんだろう。 顔どころか、胸の辺りまで肌が赤く染まっていた。 プルンッ、プルルンッ。 左右に揺れる篠原君…の篠原君。 きゃっきゃしながらチラ見しまくる私と美沙。 堂々と凝視し続ける綾。 「もーう!隠してよぉ~!!」 「…そんなの俺の勝手だろ。」 そう言いながら私達の目の前を ゆっくり通り過ぎていく。 そして私達のところから少し離れた 奥のほうの岩陰のところで、静かに湯船に浸かる。 …しっかり剥けてた。 それに…、綾が言うほど小さくはなかったような… 「…ま、昔よりは立派なってたかな。  当然よね。」 少し沈黙をおいてから、今の光景をそう表現する綾。 綾にしては珍しく目が泳いでいたから やっぱり少し動揺してたみたい。 「…やだぁ綾!!」 「もーぅ!!」 恥じらいながらも、今見たそれを思い出して 顔を再び見合わせ、笑い合う。 被ってないことを証明したかったのかな… 昔の俺とは違うんだぞ、ってことを 認めさせたかったのかな…。 これが男のプライドってやつ? …にしても、あまりにも大胆と言うか ワイルドすぎるよ、…篠原君。 「…にしても  見せびらかすようなモンでもなかったよね。」 何か反論したかったらしく 綾が篠原君の方を向きながら、私達に問いかけて来る。 「ちょっと綾聞こえるって~!」 「綾暴走しすぎ!」 「可愛いぞ~、篠原ぁ!!」 照れながらも言葉で攻めまくる綾。 いつもの冷静な綾じゃなくなってる気がする。 「…うるっせーなぁ。」 流石に私たちのやりとりが聞こえていたであろう篠原君は 居心地が悪くなったのかザバァっと湯船から立ち上がる。 「もーーう!!」 もう隠す気はないみたい。 タオルを肩に掛けたまま、温泉から出て石段を登っていく。 プリッとしたお尻を歯がゆそうに掻いてたのが なんとも可愛かったりした。 「もう出るの?」 「てめぇらのせいでゆっくり入れねぇんだよ。」 少しこちらを振り返りながら、そう答える篠原君。 受け答えはいつものクールな感じなんだけど 顔は見たことないくらいまっかっかで そのギャップに、なんだか凄くドキドキしてしまった。 …格好ですでにドキドキだったけどね。 大学入って初めて男の人のすっぽんぽん見ちゃったな。 それがまさかね…篠原君だなんて。 予想だにしてなかった。 -ギィ…、バタンッ。 篠原君のいなくなった温泉。 なにを喋っていいか分かんなくて、しばしの沈黙。 それを打開したのは、綾の一言。 「…あいつ、何しに来たんだろうね。」 その発言に、思わず吹き出す私達。 …確かに(笑) 「見せに来た…だけ?」 「やだ~、でもそうだよね。」 「完全にヤケになってたね、篠原。」 「うん、でも綾だってなんだかんだで照れてたでしょ。」 「え、いや何言ってんの、私が照れるわけ…」 「顔まっかだぞ~。」 「う、うるさいなぁ…!!」 また始まったガールズトーク。 話題の中心はもちろん今さっきの出来事。 …のぼせるまで、語りまくったとさ。
-おしまい-
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