小説

パーカー褌締め

ある民家のあるお正月の光景。 新年の祭りをすぐに控えている。 祭りと言えば男祭り。 男祭りと言えば褌。 この家の長男にして一人息子、脩平。 一男子として、もちろん男祭りに参加するのは義務。 「脩平~、そろそろ褌締めないと。」 親戚一同が大勢集まった今で 脩平の母親がそう告げる。 「わ、分かってるよ。」 そう言うと脩平はその場で立ち上がる。 「と、父ちゃん。」 褌を片手に持ちながら、父親に目配せをする。 “褌巻いて”の合図だ。 「お、そろそろ巻くか??」 「…うん。」 恥ずかしそうに父親に近づいていく脩平。 「よっしゃ、じゃあとりあえず下脱げ。」 「…えぇ!?」 「なんでぇ?」 「え、み、みんないるんだし  …あっちの部屋でやろうよ。」 「…はっはっは!!なんでぇ脩平、照れてんのか?  みんな親戚じゃないか。  何も恥ずかしがることない、ここでいいだろ。」 「やだよ~。」 顔を真っ赤にして照れる脩平。 そんな脩平の姿に、ほっこりとした笑いが起きる。 「シュウちゃんは恥ずかしがり屋だなー。  そんな気にすることないって。」 「そうよ~、オバちゃんなんて  いないと思ってもらえば恥ずかしくないでしょ~?」 親戚一同がワッハッハと笑う。 脩平はただただ俯く。 「そういうこった、んじゃ脩平。  とりあえず下脱ぎ。」 「…最悪だよもう。」 鋭い目つきで父親を見つめながらも もう時間もないし抵抗している余裕もない。 脩平は親戚の人たちにお尻を向けながら 恥ずかしそうに、下を一気に脱いだ。 すぐさま手で股間を隠す脩平。 パーカー姿に下半身丸出しの恥ずかしい格好を 親戚一同に披露する脩平。 「お、シュウちゃんいいケツしてるね~。  はっはっは!!」 「あら可愛い~。」 「み、見ないでよ~!!」 パーカーから見え隠れする脩平のお尻は 親戚一同を虜にする。 その視線をひしひしと感じる脩平。 「と、父ちゃん!早く巻いてよっ。」 「はいはい。ホントお前は恥ずかしがり屋だなぁ。  全く誰に似たんだか。」 「ははっ!!シュウちゃん知ってるか?  シュウちゃんの父ちゃんなんてな。  飲み会で酔うとほぼ100%すっぽんぽんに  なっちゃうんだぞ。」 「…え。」 「んでそのまま寝ちまうだもんな。  たち悪いったらねぇよな、はは。」 「おいおい止めてくれよ。  俺だって覚えてねぇんだから~。」 そう言って少し照れる脩平の父親。 加えて「やーねぇ。」と言いながら照れる 親戚女子一同。 「しかも覚えてないんだもんな、たち悪すぎだ。  はっはっはっ!!!」 「まぁまぁ、そんな日もあるさな。  …そんなことより脩平、さっさと巻くぞー。」 「…うん。」 脩平の父親に対する評価がかなり下がったところで ようやく脩平に話題が戻る。 「ほれ。手ぇどかせ。」 「…うん。」 そう言って脩平は 親戚の方をチラチラと振り返りながら ゆっくりと父親の方を向きながら、手を解いた。 「………!」 久々に息子のちんちんを間近で見た脩平の父親は 目を輝かせながら、親戚一同の方を向きなおす。 突然の父親の行動に焦り、再び両手で隠す脩平。 「皆様!!おめでたい報告があります!!」 「なんやなんや。」 「ん、何かしら。」 「…わが息子脩平。  ついにちんちんに毛が生えましたー!!!」 まさかの発表に、顔を注がれるトマトジュースのように 真っ赤に染めていく脩平。 「あら~。」 「おー!シュウちゃんももう立派な男なんやなぁ!!」 脩平の父親の発表に やんややんやと拍手喝さいで応える親戚一同。 「…と、父ちゃんっ!!!」 「こらあなたっ!!脩平恥ずかしがってるじゃない。  そろそろいい加減にしときなさい。」 「なんでぇ、めでたいことじゃねーか。」 「…そ、そうだけど。  あなたと脩平は精神構造が違うの。」 「なんでぇ、俺の息子だぞ。」 「…とにかく、早く巻いてあげなさい。」 「…はいはい。」 脩平の母親に怒られ、ちょっとシュンとなる脩平の父親。 「ほら脩平、巻いてやるからもっかい手ぇどかせ。」 父親のその言葉に、顔を俯けたまま 再びゆっくりと手を解く脩平。 まだ生えてきたばかり、まだまだ子供のちんちんだ。 その後はさすが慣れてるだけある パパッと息子の褌を締め終える脩平の父親。 締め終わると脩平は そそくさとさっきの場所へと移動し 褌の上からズボンを履いて、コタツの中で 丸くなってしまった。 「…ったく、そんなんで本番どうするんだ脩平~。」 「まぁまぁ。」 「そうよ、シュウちゃんなら心配いらないわよ。」 「…そうかぁ?」 自分の息子の恥ずかしがりっぷりを心配する父親。 「…まぁいっか。よし。  んじゃとりあえず母ちゃん。」 「…何?」 満面の笑みで妻を見る脩平の父親。 「今日の夕食は、赤飯だな!!」 「…全くもう。…分かりました。」 笑みを浮かべながら頷く母親。 またドッと、親戚一同が笑いに包まれる。
-おしまい-
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