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あらすじ
重光と愛果の嬉し恥ずかし初体験を小説化。
まだまだウブな2人のNFNM物語。
『放課後』の続編、および『祭り後』の前日譚。
表紙
冒頭サンプル
広い大きな部屋の窓際に座り わたしはそこから眺めるグラウンドを 横目でチラチラと見ていた。 …あそこかな、…あーいたいた。 …おー!ナイスシュート!やるじゃーん。 心が弾む、やっぱりなんだかんだ言っても…かっこいいなぁ。 … 「…果! ……愛果!!」 隣りから聞こえてきた声にハッとする。 いけないいけないまた見入っちゃってた…。 「もーう、みんなで演奏中くらいは集中しなさいよ~。 …ま、仕方ないか。」 「へへ…ごめん。」 声の主は同じクラスで仲良しの亀井由香子。 小学校3,4年生のときに凄く仲良しになって その後、中学1年生になった今でも変わらない 仲良しの大親友だ。 当時わたしと由香子ともう1人、田中小百合ちゃんって言う女の子も入れた 仲良し3人組でよく遊んでいたんだけど そのサユは私立の中学校に行ってしまったんだよね。 中学校に上がってからもたまーにメールとかはするけど 気が付けばもう、1年くらい会ってないんだよなぁ。 …今度の春休みとかにでも3人で会いたいなーとは言ってるんだけどね。 懐かしいなぁ…小学校4年生の最後の班… あの班が組まれなければ、あの日の放課後あんなことしなければ 今のわたしの生活は、ガラッと変わっていたのかもしれない。 「…よーし。んじゃあ最後に1回通して終わりにするぞー!」 次期部長候補の1年先輩、杉山克実先輩のその合図を元に 今日最後の合わせ練習をする。 中学校に上がって、わたしは吹奏楽部に入った。 …正直音楽とかやったことなかったし それほど興味もなかったんだけど …まぁつまりは、由香子に誘われたから入ったって感じになるのかな。 でも、新しいことに挑戦してみたかったっていう気持ちはある。 実際、この約1年間やってみて凄く楽しいし 何よりみんなの音が合わさったときの感動ってホント凄いの。 やって良かったよ、これは素直に思える気持ちかな。 ちなみに楽器はホルン。 ホルン担当は、わたしと由香子と杉山先輩の3人。 これも由香子がやるって言うから、じゃあわたしも…って感じだったんだけど。 …人に流されちゃいけないって言うけどさ。 最初くらいは流されてもいいよね。 そんな楽観的な気持ちで、見切り発車的に始めた吹奏楽だった。 午後6時半。 最後の合わせが終わって、今日の練習も終わりの時間に。 毎週月、火、木、金に練習していて いつも終わりの頃には外も真っ暗になっちゃうんだよね。 ふぅ、今日もお疲れ様だ。 みんな一斉に片づけを初めて、帰る支度。 「よし…そんじゃ帰ろっか!」 お互い片付け終わったのを確認して 由香子がわたしにそう告げる。 「…ん…あっ…と、えとー今日は…」 わたしは思わず言葉に詰まる。 最初は、ん?って顔をした由香子だったけど わたしのそのドモりっぷりを確認して、すぐに納得してくれた。 「…あ、そっかそっか、今日金曜日だったか! 最近部活で忙しくて、曜日感覚なくってさ。」 「…ご、ごめんね。」 「全然全然!大事な友達の大切な時間を わたしが奪うわけないじゃないか。ラブラブで結構!」 「…もーう!」 ひやかしみたいに対応してくる由香子だけど 実際そんな優しさに、わたしはいつも助けられてるんだよね。 言葉じゃ言わないけど、いつもありがとう-。 「おーい、お前ら、まだ帰らないのかー?」 「…あ!はーい、帰りまーす!」 杉山先輩のその言葉に嬉しそうに返事をする由香子。 「…よし、んじゃわたしはお先に。 愛果はまだここに残ってる?」 「うん、あっちの練習が終わるまではね。」 「そかそか、んじゃね、また明日!…じゃないやw また来週!」 「うん、ばいばーい!」 「ほーい。」 そう言って、笑顔で練習部屋から出て行く由香子。 金曜日はね…そう いつもシゲと一緒に帰ることになっているんだ。 毎日一緒に帰ってもいいんだけど …怪しまれるって言うか。 公言していないからさ、慎重になっちゃうんだよね。 中学に入ってからお互いに忙しくなっちゃって クラスも違うから学校で一緒にいる時間もほとんどなくて。 廊下ですれ違っても、ちょっとアイコンタクトするくらい。 …まぁそんなドキドキ感も嫌いじゃないんだけどさ。 とにかく、1週間の中で唯一一緒にいられる金曜日の帰り道は わたしにとって凄く大切な時間になってた。 実際、由香子にとってもこの金曜日の帰り道は わたしと同じくらい特別で大切なものの気がするんだけどね。 さっきのあの嬉しそうな笑顔-。 お互いに利益があるって言うのは、なんか救われるよね。 そんな由香子は、わたしの…わたしたちの関係を知っている きっと唯一の存在の女の子。 わたしにとって、いつも大きな支えになっているんだよね。 わたしはいつでも帰れる準備をした上で 改めて部屋の窓際の椅子に座る。 吹奏楽部の練習部屋のある東校舎4階の窓からは 学校のグラウンドを眺望することができる。 だから練習するとき、わたしはいつもここを確保できるように 由香子の手を引っ張って、急いで練習部屋に来るんだ。 ホームルームの終わり具合にも因るんだけどね。 …ふふ、なかなか乙女でしょ、わたし。 すっかり暗くなったグラウンドに ライトアップされたサッカーのコートが映えて見える。 部内の紅白戦かな、もうすぐ終わりだろうけど…。 思い思いのプレーをする選手たちの中で 一際輝いて見えるのは、やっぱりシゲだった。 …というか、いつもそこしか見てないんだけどねw 今ちょうどボールを蹴ってる。 よし…よしよしいい感じ。 すごーい、1,2,3…4,5人抜き? やっぱり上手だなぁ。 中学1年にしてレギュラーらしいしね、さっすが。 そのままゴールに一気に走り抜けて その勢いのまま…シュート! ゴーーール!!! やったね!4階の窓際で1人盛り上がるわたし。 やっぱりスポーツしてるときのシゲ…かっこいいよね。 なんて、頬を赤らめてみる。 そしてシュートが決まると同時に、ホイッスルが鳴り響き 試合終了、…練習も終了。 時刻は7時5分前…ふぅ、お疲れ様。 部室に戻っていくシゲを目で追う。 シゲもいつものように 校舎の4階の窓際にいるであろうわたしの方に視線を向ける。 距離は遠いけど、確かにシゲと目が合って、お互い頷く。 …よし、わたしも行こうかな。 このアイコンタクトが、わたしの帰る合図。 ふふ、なんか青春って感じでいいよね。なーんて。 腰を上げ、荷物を持つ。 部屋を出る直前、部室に向かうシゲにもう1度だけ視線を送る。 …と、シゲが女の子と肩を並べて歩いているのが目に映った。 一瞬ドキッとするわたし。 そのまま、楽しそうに2人は話しながら、部室へ入っていった。 …別に楽しそうなんて根拠、どこにもないけどさ。 そう…見えただけ。 あの女の子は…サッカー部のマネージャーの水嶋さん、だよね。 …別に、シゲのこと信用してないわけじゃないけど。 ちょっと今、嫌だったな…。 …なんてこと思っても、仕方がないんだけど…さ。 わたしが吹奏楽部に入るって、自分で決めたんだから。 シゲに、マネージャーになれよって誘われたけど それを断って吹奏楽やろうって決めたんだから。 …悔やんでもないし、そんなこと思うだけ無駄…だよね。 …よし、早く待ち合わせ場所に向かおう。 カーテンを全て閉めて電気を消し、練習部屋を後にした。 待ち合わせ場所って言っても、学校出てすぐの駐輪場なんだけどね。 別に部室に直接お邪魔して一緒に帰ろうって言ってもいいんだけど さっきも言ったみたいに、公言してないからね。 シゲは別に、みんなに言ってもいいって言うんだけど わたしがちょっと拒んでて。 …って言うのも、その、シゲってスポーツできるし、優しいし …顔も、その、かっこいいから…さ。 結構モテてるっぽいんだよね。 小学校のときもそうだったけど、中学に上がってからより一層って感じ? 被害妄想かもしれないけど、凄くそう感じる。 …だからその、わたしたちの関係がバレたら いろいろややこしくなりそうって言うか…ね、そんな感じ。 まぁつまりは、完全な自己防衛行為なんだけどさ。 …でも追々ね、周りにも話していくつもり。 そろそろね、知ってほしいって言うのもあるし。 …にしても、寒い…。 季節を言い忘れてたけど、今中学1年生の2月。 あとちょっとで春休みって感じかな。 春に近づいてるのは感じるけど、まだまだ寒いよね…。 早くシゲ来ないかなー… 「わっ!」 いきなり後ろから大きな声をかけられて わたしは思わずすくみ上がる。 誰!?って一瞬思ったけど、そんなの1人しかいないよね。 振り向いたとこに立っていたのは、シゲだった。 「もう!おっそーーーい!!!!!! ってかどっからどう来たのよ!!」 「ひひ、いやいや、ちょっと遠回りしてきただけだよ。 驚いたか?」 「…驚くに決まってんじゃん! 変なことしないでよね…ち、小さいくせに!」 「おいおい…結構大変なんだぞ、サッカー部の奴ら撒いてくんの。 …それに今、小さいとか関係ないだろ…。」 そう言って恥ずかしそうに鼻を掻くシゲ。 …あ、一応説明しておくと さっきから言ってる『シゲ』って言うのは 同じ中学校の1年生、サッカー部の高橋重光ね。 ま、仰せの通り、わたしたちは付き合ってる。 いつから付き合い始めたのかって言うと… 具体的にいつからとかは良く覚えてないかなぁ。 と言うか お互い「付き合おう。」って言って付き合い始めた感じじゃないからさ。 自然に付き合い始めたって感じかな。 まぁ大体いつ頃からって聞かれたら やっぱり、小学校4年生の終わり…だよね。 ふとしたことで、そのとき一緒だった班の子達と 4年生最後の日の放課後に、野球拳をすることになって そこで…シゲのおちんちんを見ちゃったんだよね。 いや正確には見ちゃったと言うか…見せてくれた…なのかな。 わたしの庇うためにね、シゲが班の子たちの前で すっぽんぽんになってくれたんだよね。 わざとジャンケンに負けて。 恥ずかしながら、そのときわたしシゲのことが既に好きだったし しかもシゲもわたしのことを想ってくれていたことが分かって… そこから…だよね、うん。そう言う関係になったの。 ちょっとくさい馴れ初めになっちゃうけど わたしとシゲが今こうしていられるのは きっとあの日の野球拳のおかげなんだよね。 今でも時々思い出すし、鮮明に覚えてるよ。 …シゲの可愛い可愛いおちんちん。 …あ、今さっき言った「小さいくせに!」っていうの、 一応これ、おちんちんが、って意味…ね。 別に特に「おちんちんが」って主語をつけて言ってるワケじゃないけど シゲもそう言う意味なんだろうなってことは理解してくれてると思う。 してくれてるって言うか…まぁしてるよね。 言うたびにいつも照れてるし。 そう、シゲってさ。 あんなにスポーツ万能で優しくてかっこいいのに すっごいおちんちんちっちゃいんだよね。 この秘密を知ってるのって…多分はわたしだけ… いや違うや、あの班にいた人は知ってるのか。 だから…そう、由香子も知ってるのかな。 まぁわたしの場合、触っちゃったこともあるんだけどね…。 すっごい柔らかかったなぁ~…。 ま、そんなギャップも実は大好きだったりするんだけどね。 …なんて何を考えているんだか。これじゃ変態じゃんね…。 もうあれも3年前なんだなぁ…懐かしいな。 実際あれ以来シゲのおちんちんって見てないから 今はどれくらいの大きさなのかとか分かんないけどさ。 …まぁ、小さいんじゃないかな。 …とか、まだまだおっぱい小さいわたしが言ってみる。 でもシゲもわたしがおっぱい小さいこと知ってるし その上でこうやって付き合ってくれてるワケだから …まぁ、お似合いなのかなーわたしたち。自分で言うのもなんだけどさ。 ま、実際見せたことはないんだけどね…やっぱ恥ずかしいモン。 それと、さっきのわたしとシゲの会話聞いてもらったら分かるだろうけど わたし、シゲの前ではこんな感じでいつもツンツンなんだよね。 いつからかなぁ…こんなんなったの。 付き合い始めてすぐの頃は全然こんなんじゃなかったんだよね。 呼び方も『重光くん』だったし。 2人で一緒に何回か遊ぶようになってきた頃から 段々わたしの方が砕けた接し方をするようになっていって… 良く覚えてないや。 気づいたら『シゲ』って呼んでたし ちょっと意地悪なことされると 「小さいくせに!」って言うのがお決まりみたいになってた。 …男の子のおちんちんを小さいなんて言う女 はっきり言って最低だけどさ。 シゲの方も照れるだけでそんなに嫌な思いしてないみたいだし 恒例事項って感じで言ってる感じかな。 ま、そんなことも言い合える、特別な存在ってことだよね。 …言い合えるって言うか、わたしが一方的に言ってるだけかw 実際こう見えて、言うのだってそれなりに恥ずかしいんだけどね…。 「…澤? 長澤?」 そのシゲの声にまたしてもハッとする。 …やばいまたボーっとしちゃった…。 わたし考え始めると自分の世界入っちゃう癖があるみたいなんだよね。 「大ジョブか?ボーっとして。」 「え、ん、いや、大丈夫大丈夫。」 「そか、ならいいんだけど…。 んじゃあ………、んっ!」 「…え?何?」 「何ってぇ…手!繋ぐぞ。」 「あ、は、はい…。」 さっきまでのわたしは何処へやら… 完全にシゲにデレデレなわたし。 だってぇ…強気に振舞おうとしてるけどさ。 やっぱシゲカッコいいもん。 ふとそう言うこと言われると、やっぱりドキドキしちゃう。 わたしは左手を差し出して、シゲと手を握る。 大きくて暖かい手。 わたしたちはようやく帰り道を歩き出す。 …この瞬間。 うん、わたし今…最高に幸せ。
作品情報
発行日 | 2009/04/29 |
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形式 | 小説 |
ページ数 | 92P |
媒体 | データ版 |