芸術の秋 10
「…なんだなんだ。
大人になったオレの姿を想像して
興奮してるんじゃないだろうな。」
座りながら上だけさっきのポーズをして
照れ笑いしながら聞いてくる竹内くん。
「…そ、そんなんじゃないもん!」
もう、何言ってくるかと思ったら…。
そりゃ…ちょっとは想像しちゃったけどさ…。
「いやーまいったな。
絶対いい男になってるぜ。」
いつもの竹内くんの感じに
戻ってきました。
…そりゃそうだよ。
絶対格好良くなってる。
中学行ったら絶対モテるよ。
絶対…嫉妬しちゃうよ。
やだな…。
「…中学変わっても
たまに会えるといい…な。」
「…え?」
わたしの気持ちを察するように
竹内くんはそう言ってくれました。
「会える…かな。」
「会えるだろ。
だって家は変わんないんだろ。
絶対会えるよ。」
「そ、そうだよね!」
中学行ったら
もうみんなと会えなくなっちゃうって
もう竹内くんとも会えなくなっちゃうって…
そう思ってた。
だからその言葉が
なんだか凄い嬉しくて救われた。
「…中学に上がっても
たまに来ていいかな。」
「あ、ああ!
…こんな家でよければ全然いいぜ。」
照れながらそう言ってくれました。
嬉しくてにやけるのを我慢して
わたしはやっぱりドキドキしていました。
「その代わり…
毎回ちんこ見れるワケじゃないからな。
ちんこは後1回のみ。
…オレの絵を描くときのみ。」
照れながらも意地悪にそう言ってきました。
「…わ、分かってるよ!
…そ、それにわたし見たくて描くわけじゃないもん!
描きたい…だけだもん…。」
なんか完全に立場が逆転しちゃった。
…まぁ見せてもらったのは事実だし
…ちょっと見たかったって気持ちがあったのも
嘘じゃないし…
わたしがとやかく言えるワケないんだけどね…。
「…そ、そうだ。
このあとまだ時間平気?」
なんかこのままだと恥ずかしさで
何も出来なくなりそうだったから
空気を変えようと話を変えました。
「…ん?あ、ああ。
まだ平気だけど。」
「じゃ、じゃあさ。お願い聞いてくれる?」
「え、ま、まだあんのかよ。
アレ以上は…流石にキツイ…ぞ。」
「…ち、違くてっ!
竹内くんの野球してる姿をね。
描きたい。」
「…な、なんだ、そんなんでいいのか。
全然いいぞ減るもんじゃねーし。」
そのあと竹内くんに
ユニフォームに着替えてもらって
同じこの部屋でバットをスイングした状態で
ポーズしてもらい
それをまたデッサンしました。
さっきと違ってよく見れるし
30分くらいで描き終わりました。
あとは色付けのみ。
…でもやっぱり野球姿の竹内くんは格好いいなぁ。
って改めて思いましたね。
さっきとはちょっと違うドキドキ感で
わたしは竹内くんを描いていました。
…なんだよって話だけど
結局コンクールには
あとに描いた野球姿の竹内くんの絵を
出展しました。
竹内くんにそれを伝えたら
「結局見たかっただけかお前はー!」
と顔赤くして照れ笑いしながら
からかってきました。
でもそれが今年も見事に入賞。
しかも特別賞を取ったことを伝えると
素直に喜んでくれたし
やっぱすげーよ。と褒めてくれました。
うん、嬉しかったな(照
出さなかった方の絵は
もちろん捨てたりはしてません。
家に帰ってどうしようか迷ったけど
頭の中に竹内くんのおちんちんが
まだ焼きついていたので
落ち着いたし今なら描けるかも…と思って
欠けた一部分を描いてみました。
恥ずかしながら
凄く上手に描けてしまって…
色もつけて机に仕舞ってあります。
たまに見ては1人でドキドキしてみたり…。
我ながら凄いリアルと言うか厳密で
それのせいでこの絵を見るたびにあの出来事を
さっきあったことのように
いつも鮮明に思い出していました。
本当に見せてくれたんだよね。
一番大事な部分を
わたしだけのために。
…それって結構凄いことじゃない?
今でも思い出すと
顔が赤くなるのが分かる。
…でもわたしにはまだ
成長した竹内くんの裸を描くって言う
任務が残ってる。
任務って言うか…
…うん、任務だよね。
だって竹内くんが描いてって
頼んできたんだもん。
きっと中学高校に上がったら
今よりもっと格好良くなって
男の子っぽい体になるんだろうな。
…それこそ、あのダビデ像みたいな。
きっとダビデ像みたいに
おちんちんの上に毛も生えてくるんだよね。
…それでも見せてくれるのかな。
…いや見せてもらう。
だって約束したモンね。
いや見せてもらうじゃなくて
描かせてもらう…。
なんか変に強気と言うか自信があるわたし。
いろいろあって
おかしくなっちゃったのかな?
もし描くことができたら
この絵と比べてみようかな。
悪い子だなーわたし。
昔の竹内くんと今の竹内くんって言って
2枚見せたらどんな反応するだろう。
なんか勝手に1人で
ワクワクドキドキしてました。
…そんな秋。
芸術の秋。
小学校生活も
残りあとわずか。
でも
気持ちは凄く晴れやかでした。
-おしまい-