小説

芸術の秋 9

「いやーお疲れお疲れ。」 竹内くんはあぐらをかきながら まだ顔を真っ赤にしてそう言いました。 「…う、うん。  そ、それよりそっちの方がお疲れ様だよ。  ずっとあの体勢きつかったでしょ。  …あ、ありがとね、ホントに。」 ただただ感謝しか言えないわたし。 でも恥ずかしくて やっぱり顔を見れない…。 「…ま、まぁ野球で鍛えてるからな。  どうってことねぇよ。  …流石にやっぱ、恥ずかしかったけど…な。」 照れながらも笑いながら そう言ってくれる竹内くん。 …ありがとう、ごめんね。 「…んで、どんな感じになったんだ?  見せてくれよ。」 自分のすっぽんぽん姿が描かれていると知りながら やっぱり見てみたいといった感じ。 わたしは無理やり完成させたそれを 申し訳なさそうに見せました。 「…うんめーなぁ!  …オレこんな良い男だったっけ?」 照れながらそう言う竹内くん。 …そりゃあ好きな人だもん。 ちょっとは格好良く描いてあげたんだよ。 …もともと格好良いけどさ。 …でやっぱり大事な部分を見て ん?と言った感じの表情をする竹内くん。 「…いや…ね。  描こう描こうとは思ったんだけどね!  …その…やっぱり…  どうしても恥ずかしくてね。  …一生懸命見たんだけど…描けなかった。  こっちから頼んだのにね…。  …ホントに…ごめん。」 おちんちんを描けなかった… そのことで謝ってるのか おちんちんを頭に焼きつくくらい見ちゃった… そのことで謝ってるのか分からなかったけど とりあえず謝りました。 どう答えれば良いのか分からず 更に顔を赤らめた竹内くんは 「…ま、まぁこっちの方がいいっしょ全然!  実際オレのがこんなリアルに描かれてたら  それこそオレが恥ずかしいモンな。  しかもコンクールに出すなら  オレいろんな奴に素っ裸見られるようなもんだモンな、  …うん、そうだよ、これが一番いい。  そして上手い、立派立派。」 自分の恥ずかしさを顧みず わたしの作品を褒めてくれる竹内くん。 とりあえずありがとうって言わなきゃ。 何に対してありがとう…? …とりあえず 「ありがとね…。  …その、おちんちん見せてくれて。」 …何言ってんのもう! せめて裸描かせてくれて、でしょ! もうテンパッちゃってて 頭の中おちんちんのことしかなかったんだと思う。 また動揺し始めるわたしに 「…女の子がおちんちんとか言っちゃ  いけねーの。」 そう言って顔を真っ赤にした竹内くんが コツンとわたしの頭を叩いてきました。 なんか分かんないけど… すっごく嬉しかったな。 そんなことされたの初めてだったし。 「…うん、ごめん。」 照れながら答えるわたし。 「…やっぱり…恥ずかしかった?」 「…んまぁ、恥しくなかったワケはないよな。  …つーか正直死ぬほど恥ずかしいぜ。  女子にちんこ見られたのなんて  小1ぶりくらいだからな。  …昔はよくみんなにちんこ見せびらかしてたけどな。」 「やーだぁ。」照れるわたし。 …でも男の子って小さい頃は そんな感じだよね。 2人して照れながらも 笑いあいました。 「…やっぱりわたしにはまだ  人の裸なんて敷居が高すぎたみたい。  ちょっと図に乗っちゃってたかな。」 反省するわたし。 「…十分上手いと思うけどな。  まぁ他にもいろいろ描くモンなんてあるっしょ。」 「…そうだよね。  もうちょっと大きくなってから、出直すよ。」 なんか大人ぶって 裸を描きたいなんて思い立っちゃった自分が すっごく恥ずかしく思えてました。 「…じゃあさ。」 急に真剣な声になって 聞いてくる竹内くん。 「そのときはまた…  オレを描いてくれよな。」 「…え?」 「…だからぁ。  そんときはオレの裸を描いてくれってこと。  他の奴なんかの描くなよ。」 照れて目をそらしながら そう言ってくる竹内くん。 …なんで?と聞きたかったけど そこまで勇気なくて 「…いいの?」 と聞き返すと 「…オレも完成したのを見てみたいしさ。  他の奴ので完成品なんて言われたら  オレとしてもなんか嫌だし…な。」 ほっぺたをポリポリと掻き 笑いながらそう話す竹内くん。 「…そのときも…その…  すっぽんぽん…かな?」 なんか分かんないけど とりあえず確認しておきたくて わたしは聞いていました。 「…描きたいんじゃないのか?」 照れながら聞いてくる竹内くん。 「いや…そうじゃなくて。  大きくなった後も  また今日みたいなことしてくれるのかな…って。」 良く分かんないけどさ。 恥ずかしかったけどさ。 きっと大きくなっても竹内くんに逢えるって言う 確証が欲しかったんだと思う。 「…分かった、約束するよ。  また森本の前で素っ裸になって  同じポーズするって約束する。」 あぐらをかいてまっかっかな顔で でも真剣なまなざしを わたしに向けてくる竹内くん。 その視線を受けて 見つめられているのにドキドキしてしまって 1人ポーっとしてしまいました。
ページトップへ