小説

気になるあの子 1

下校の時間。 みんなワイワイ笑いながら 好きな子と帰ったり 校庭で遊んだり 教室に残って遊んだり 授業と言う束縛から解放され 羽を伸ばすように 思い思いの時間を過ごす 自由な時間の始まり。 わたしはいつも通り 誰かから誘いの言葉があるわけもなく 誰ともさよならの挨拶も交わさずに 1人学校を出る。 横目に元気良く遊ぶ クラスメイトを眺めつつ ちょっと羨ましいなと思いつつも 出来るだけ何も考えないように そそくさと校門を抜ける。 家に帰っても お父さんは仕事でいつも遅いし お母さんもパートがあるから 早くても帰ってくるのは5時くらい。 家に帰ってもひとりぼっち。 だから家には帰らない。 ひとりぼっちが寂しいから いつの間にか 遠回りして帰るようになってた。 毎日ちょっとずつ 知らない場所を開拓して 毎日ちょっとずつ 帰り道を長くして。 そんなことをしている内に 見つけたのがこの公園。 学校から歩いて40分くらい。 家からも40分くらいかな。 小さくて古ぼけた公園。 ジャングルジムとブランコ。 あるのはそれだけ。 まぁこの2個さえあれば 公園って言えるよね。 家に帰っても仕方ないから いつしか毎日この公園のベンチで 1時間くらい読書して帰るのが わたしの日課になってた。 読んでる本は東野圭吾さん。 小学校4年生の私には ちょっと内容が難しくて はっきり言って よく分かんないのが本音だけど 暇つぶしにはちょうどいいし 気晴らしにはもってこい。 1ページに5分くらいかけて 毎日ちょっとずつ読んでいる。 カラスが鳴き始めたら 帰るようにしていた。 それ以上いると 帰り道が暗くて帰れなくなる。 こんなわたしでも やっぱり夜道に1人は怖いもん。 かれこれ1ヶ月かな。 この公園にお世話になってるのも。 学校の子が来る訳ない場所だし 人気がない落ち着いた感じが 好きって言うのももちろんあるんだけど それ以外にそれ以上に わたしがここに通い続けている 理由がある。 いつも決まった時間にやってくる 気になるあの子。 今日もそろそろかな…。 …ほら来た。 自分と同じくらい大きな犬を 紐でつないで散歩させている 短パンの男の子。 ね。 今日も来た。 これが わたしがここに通い続けている もう1つの理由でした。
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