曖昧サンドイッチ 14
(2012年2月11日 20:31)
姉と妹に挟まれ、湯船に浸かる福。
浴槽の中は、もうギュウギュウ。
…と、ここまでは順調に来たものの、
ここからは割とノープラン。
まぁ、大丈夫大丈夫…、…と、
「…なんでアンタ、タオル巻いてるの?」
「え、いや…。」
これは…、
「ちょっと、…たっちゃって。」
「……?」
「…バーカ。」
「はは、さーせん。」
無理矢理にでも、なんとか誤魔化す。
舞はと言うと、初めて見る姉の大人な裸が、
気になってしょうがない様子。
福を盾に、チラチラと視線を送るも、
気づかれたらマズいから、あまりジックリ見ることはできない。
…とりあえず、
「いやぁ、3人で入るのなんて、初めてだな。」
「………。」
「…うん。」
かろうじて、舞だけ返事。
…よし。
「でもさぁ、姉ちゃんと舞って、
実は似てるよな。」
「………?」
「…どこ…が?」
ちょっとだけ、食いついてくる愛。
「例えば、…ほら。
俺と風呂入ってること、友達に話しちゃうとことか。」
「……、そうなの?」
「…そうなの?」
「へぇ、そうなんだ。」
「へぇ…。」
そうなんだ、と、2人。
よしよし。
…それから、
「俺のちんちん、見てくるとことか。」
「…そ、それは、…!!」
「…う~ん、と。
見てくるって言うか~、見ちゃうんだよ。」
「…そ、そうよ。
見ちゃうのよ、目に入っちゃうだけ。」
「そう、目に入っちゃうの!」
「そうそう、それだけよ、ね?」
「うんっ。
……あ。」
「…あ。」
目が合い、照れる愛と舞。
初めて2人だけの、会話のようなものが続いた。
照れながらも、少しにやける福。
もうひと押し。
「あと、やたらと俺のちんちん、
褒めてくるところとかな。」
「…べ、別に褒めた覚えないけどっ。」
「え~!
でも福兄ちゃんの、すっぎいおっきくて
カッコいいよっ!!」
「…え、ま、…まぁ、そりゃあ、
それなりに立派、…だとは思う…、けど。」
「浦川くんのよりね、
ぜーんぜんおっきいんだよ!」
「あぁ、それは言えてる。
浦川のめっちゃくちゃちっちゃいし。
あれに比べたら、大分立派かも。」
「そうそう!
浦川くんの、すっごいちっちゃいの!」
「そうそう!
こーんなんよ、こんなん。」
「うんうん!こーんなん!
…あっ。」
「…あっ。」
福を挟みながらも、2人きりで顔を見せ合い、
盛り上がっていることに気づき、驚き、
再び目を逸らし、照れる2人。
…はは、なーんだよ。
全然喋れるじゃん。後はもう…、
「よっし、もっかい体洗おっかな。」
ザバーンと立ち上がり、洗い場に出る福。
ちょっと恥ずかしいけど、いやホントはかなり恥ずかしいけど、
最後の仕上げだ。
腰のタオルを解き、その場に座る、…ふりをして、
湯船に浸かる2人の方へ、グルッと振り向く。
…そして、
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
腰に手を当て、姉と妹2人の前でそれを披露する。
妹には、何回目か、姉には、初披露である。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
いつもより大袈裟に、出せる力の限りを使って、
自分のそれを振り回す。
恥ずかしさも、いつもの倍だ。
「…………。」
「…………。」
突然の、弟、兄の暴挙に、
一瞬、唖然とする、愛と舞。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
良く見ると、張り切り具合以外にも、
いつもと違う部分がある。
福のそれ、大事な部分に、何やら装飾がされているのだ。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
目を凝らしてよく見ると、福のそれに、
いくつか黒い線が入っているのが分かる。
ソーセージだ。
ソーセージ特有の、あの切れ目部分が、
黒マジックで表現されているのだ。
ご丁寧に裏側まで、しっかり切れ筋が入っている。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
さらによく見ると、それの周りに、
レタス的なものが、これまたマジックで描かれ、
さらに、それらが乗っている皿のように、
太ももやヘソの下あたりまでもを使って、
二重の円が描かれている。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
急にタオルで隠したのは、これのせいだった。
さっき、舞を呼んでくる前に、
トイレで福が、自分のそれに、自分で描いたのだ。
急いで書き殴ったのか、乱雑さは否めないが、
ソーセージと言う解を出すだけなら、
心配など、きっと無用の出来栄えだ。
何より、自分の口でこう言っているから、何の問題もない。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
いつもとは一味も二味も違う、
ちんちんぶらぶらソーセージスペシャルバージョン。
顔を真っ赤にしながらも、
それなりの虚しさを押し殺して作り上げたそれを、
福が福であると言う立派な証明であるそれを、
3きょうだいの中で唯一福だけが持ち合わせたそれを、
めいいっぱい、力の限り振り続ける。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら、…
ソーセージ~!」
ふぅ、ちょっと疲れた、でも、まだまだだ。
明日、ほぼ確実に腰へ訪れる筋肉痛のことなんて、
今は考えなくていい、ただ無心で、振るんだ。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
…はは。
ホント、バカみたいだよな。
この先の滝本家の命運を、こんな、
普段自分から人に見せることなんてあり得ない、
卑猥で、恥ずかし過ぎる一本の棒に、託しちまうなんてさ。
しかもご丁寧に、自らの手で調理までして。
お前にはそれしかないのか、芸がない奴だな、
なんて言うなよ?
でも、俺にはさ、これくらいしか、と言うか、これ1つしか、
思いつかなかったんだ。
後はもう、願うしかない、2人を、信じるしかない。
バカにしたきゃバカにすればいいさ。
これが、俺が自信を持って導き出した、
最後の、鍵なんだ…!
などと、終わりの見えないゴールと、
収束の見えない羞恥から、少しでも逃れようと、
頭の中の誰かに、少し大人ぶった自分の意志を福が訴えかけている、
…と、
「………っ。」
「…………ぷっ。」
「………くくくっ。」
「…く、くくっ。」
「…はは、あっはは。」
「…うふっ。」
「ははっ、あっはははははっ!!!」
「んっふふふふふ…!!!」
目の前で暴れる、お皿に乗ったソーセージに、
もう我慢できなくなり、噴き出す、姉と妹。
「あっははははははっ!!!」
「ふふふふふ…!!!」
舞は、もうおかしくて、
指を差しながら、ゲラゲラと笑っている。
愛は、堪え切れずに漏れ出た笑いを、
顔を真っ赤に染めながら、隠している。
2人の笑いに、成功を確信する福。
恥ずかしいけど、もう少しだけ、頑張る。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~!」
「ははははははっ!!!!」
「…もう、ばっかじゃないのっ。」
照れ笑いの顔を隠しながら、立ち上がる愛。
えっ。
「私もう出るから。」
「えっ、ちょっ…。」
もうちょっと…!!
「出るよ、舞。」
「…へ。」
「…へっ。」
突然のそれに、驚く、弟と妹。特に、妹。
何よりも、初めて自分の名前を、
姉が呼んでくれたことに。
「…体、拭いてあげるから。」
赤い顔をひたすら逸らしながら、妹にそう言う、愛。
驚きの表情でストップしていた舞の顔。に、
ゆっくりと、ゆっくりと、笑みが灯り、
「…うんっ!!!」
満開の笑顔で、湯船から飛び出す舞。
頑張った福になどもう、一切目もくれず、
姉を駆け足で追いかけるように、浴室から出ていった。
「ち~んち~んぶ~らぶ~ら
ソーセージ~……。」
1人残されたお風呂場で、
ソーセージを、ゆっくりと、…止めた。…さすがに。
「…ふぅ。」
2人が出て行った後の湯を、1人、満喫する福。
これできっと、もう、大丈夫だろう。
「こーら、動かない!ピッとしなさい、ピッと!」
「は~い!!」
脱衣所から聞こえてくる2人の声に、
それを確信する。
「…ふぅ。」
改めて、もう1つ溜息。
気が抜けたからか、今さっきまでの自分の行為が、
一気に、第三者的にフラッシュバックして、
猛烈な恥ずかしさに襲われる。
元々、恥ずかしいことをするのは、あまり慣れていない。
ちょっと、頑張り過ぎたんだろう。
その結果が、これだ。
…はは、穴があったら入りたい。それに…、
湯船の中で揺れる、黒いマジック。
良く考えたら、明後日から、修学旅行だったんだ。
油性で描いちゃったし…、まぁ、落ちないよな。
風呂で誰かに見られたら、どうしよう。
もちろんガチガチにガードはするつもりだけど、
それでも、見られないと言う確証はない。…はぁ。
それに、そうだ。
今日のこのこと、また、舞や姉ちゃんに、
学校で喋られたりしたら…、……、…はぁ。
考えるだけで、頭が痛くなってくる。
…でも、それでも、大きな変化は導けた。
この、滝本家の新たなスタートに比べれば、
これから自分が受けるかもしれない辱めなんて、
全然大したことのない試練なのだ、きっと。
まぁ、試練であることに違いはないのだけれど、
それを受ける価値があるものを、手に入れたはずだ。
後悔なんて言葉、微塵も頭の中に浮かんじゃいないさ。
すぐに、とは、行かないかもしれない。
でも、少しずつ少しずつ、これまでの溝も埋まって、
そう遠くない将来、家族全員で、笑顔でご飯を食べる、
そんな日が、きっと来るに違いない。
父さんが帰ってきたとき、ビックリするだろうな。
そんなことを、想像したりも出来る。
…きっと、これからは、
姉ちゃんや舞と風呂に入ることも、
なくなるんだろう。
やっぱり、女は女と、姉妹でお風呂に入るのが、
普通に考えて、自然だ。
…なんだかんだ、ちょっとだけ寂しい気もするけど、
こればっかりは、仕方がない。
それに、きっと、そろそろ下の毛も生えてくる。
姉ちゃんはともかく、舞にはあまり、
男のそう言うものは、見せない方がいいだろう。
うん、丁度いい、時期的のも、丁度良かったんだ。
「…ふぅ。」
いっぱい考えて、ちょっと疲れた。
天井を見上げる福。…と、
―ガラガラガラッ…!!
「ちょっと福っ!!
毎週火曜に舞とお風呂入ってたってホント!?」
「…え。」
「そうだよねー、福兄ちゃんっ!」
「あ、あぁ、…まぁ。」
「ちょっと何それぇ!!
じゃあ今度から毎週水曜は、私と入るからねっ!」
「えーズルい!!
じゃー舞は木曜日も福兄ちゃんと入るっ!!」
「じゃあ金曜は私っ!!」
「じゃあ舞は土曜日も……!!」
ははは…。
…どうやらこれからも当分、寂しくはないようである。
2012年2月12日 01:13
ショタうん、いい話だ?モ
感動しますね
もう終わりでしたっけ?