小説

リアルおままごと 10

さっきと同じ細い小道を 逆走するわたしたち。 やっといつもの帰り道に出て 6人でいつものように 気持ちはちょっと違ったかもしれないけど 帰りました。 できるだけ まさとくんのおちんちんに話にはならないようにと ちょっとヒヤヒヤしてましたね。 そしてみんなが分かれる交差点につき 「じゃあ今日は解散ねー。  また明日ー!」 さつきちゃんのその言葉で わたしたちはそれぞれの方向へ 散らばっていきました。 「まさとくん!  またね!」 明日もいつもどおり会えるように わたしはまさとくんにそう声をかけました。 「お、おう!」 笑顔で手を振ってくれるまさとくん。 嬉しかった…な。 うん。いつも以上に。 わたしの帰る方向は さつきちゃんと一緒でした。 まさとくんと幼馴染なのに なんでまさとくんと家の方向違うの?って 初め疑問に思ったとき聞いたことがあったけど 小学校上がったときに わたしが住んでるマンションの すぐ隣りにあるマンションに 引っ越してきたのが その理由みたいでした。 だからさつきちゃんとはいつも ギリギリまで帰りが一緒なんだ。 いつもはさつきちゃんの面白い話に わたしが笑って相槌を打つような 感じだったんだけど… 今日は何も話してくれない…。 なんか凄い寂しそうな顔してた。 …わたしはさっきとは違うドキドキで さつきちゃんの歩幅に合わせて 歩いていました。 空気に耐えられなくなって わたしは珍しく自分から話を切り出す。 「…あ、あのさ!  さっき言ってたあのことって…何?」 「…ん?」 歩きながらいつもの笑顔で そう聞いてくるさつきちゃん。 ちょっと安心。 「…その。  まさとくんに言ってたじゃん。  あのこと言っちゃうよーって。」 「あぁ、あれね…。」 ちょっと含み笑いして すぐ真剣な顔に戻ると さつきちゃんは 「なーいーしょ。」 そう言って笑いました。 「えー、気になるなぁ。」 わたしがそう言うと さつきちゃんは急に立ち止まりました。 ちょっとビックリして 同じく立ち止まるわたし。 「ま、いっか。  わたし悪い子だから言っちゃおっと。」 「え?」 「その代わり  まさとには…言わないでね。」 「え…あ、う、うん!」 そう言うとさつきちゃんは その秘密を教えてくれました。 「あいつさぁ。  めぐみのこと好きなんだって。」 「え?」 いきなりの告白に 心臓がドキッとするのが聞こえた。 …間接的な告白だけどさ…。 「あいつから聞き出したんだ。  間違いないよ~。」 笑いながらそう言って また歩き始めるさつきちゃん。 …あぁ、と 急いでそれについていくわたし。 わたしは嬉しいやらビックリしたやら 恥ずかしいやら急過ぎるやらで とにかくドキドキドキドキしていました。 …まさとくんが…わたしのこと好き? …両想いってこと!? とにかく嬉しかったけど この気持ちがさつきちゃんにバレまいと 必死に対応しました。 「そ、そうなんだ~。」 「…うん、そうみたいよ。」 わたしの反応に ちょっとシックリ来ないと言った 表情をするさつきちゃん。 「でもあいつも馬鹿だよね~。  普通そんなこと隠すために  好きな子の前でおもらしする?  しかもあんな恥ずかしいトコまで  見られちゃって…。  流石にちょっとビックリしたよ。」 「でも、アレは…  さつきちゃんが言ったことで…。」 良く分かんないけど まさとくんをかばうわたし…。 「…そうなんだけどね。  …わたしやっぱちょっと酷いこと  しちゃったかなぁ。」 急に弱気になって そうつぶやくさつきちゃん。 「…きっと嫌われたよね。  まさとに。」 「…そんなことないと思うよ!  いつもさつきちゃんとまさとくん  すっごく仲いいし!」 「…ううん、いいのいいの。  嫌われるつもりでやったことだし。」 「…え?」 最初は何を言ってるのか 良く分からなかった。 わたしが不思議そうに見つめると さつきちゃんはまた笑顔になり 「…あいつも馬鹿だけどさ!  中身は結構いい奴なんだよ!  今日ので分かったと思うけど  馬鹿みたいに人もいいしさ。  幼馴染として  あいつをオススメしておくよ!」 そう笑顔で言うさつきちゃん。 でもその笑顔は やっぱりいつものさつきちゃんの笑顔じゃなくて ちょっと…寂しそうでした。 「んじゃ、ここで。」 気がついたらもう わたしの家のマンションの前。 「また明日ねー!  バイニー!」 そうわたしに言うと さつきちゃんは自分の家のマンションに向かって 歩いていきました。 「…また、明日…。」 つぶやくようにそう言って さつきちゃんの背中に手を振るわたし。 …そっか。 まさとくんは わたしのことが好きなんだ…。 …それで さつきちゃんは まさとくんのことが好きなんだ。 直接はそう聞いてないんだけど きっと、間違いない。 …きっと、わたしなんかより ずっとずっと 大好きなんだ…よね。 良く分かんないけど さっきの寂しそうな笑顔が そう言っているように見えた。 わたしも大好きな自信があったけど なんかさつきちゃんには その気持ちが勝てないような気がした。 まさとくんがわたしのことを好きと知ったとき さつきちゃんはどう思ったんだろう。 どんな思いで今日 あんな酷いことしていたんだろう。 そう思うと もの凄く…胸が痛くなった。 わたしはただ 小さくなるさつきちゃんを 見えなくなるまで見ていました。 …わたしの中で …わたしたちの中で 何かが変わり始めた。 …そんな日でした。
-おしまい-
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