成長くらべっこ 1
(2011年4月15日 22:24)
– 期末テスト7日前 –
ホームルームの終わった放課後。
2組の教室の前で待ち伏せ。
少し…、ドキドキ。なんだかんだで久々だからね。
―ガラガラッ。
ようやくホームルームが終わったみたいで
中から2組の子たちが続々と出てくる。
あ、…と、…えーと…、
…あ、いたいた。
4人グループで教室から出てきた男の子の中の1人。
ボロボロになったランドセルで、すぐに分かりました。
「フミちゃん!」
少し躊躇いつつも、近づきながらそう声をかける私。
それに気づき、私に振り返る。
「……。
…おぉ、小春。」
なんだ、珍しいな。
みたいな顔で私の顔を見てくる。
「どしたん?」
久々の軽いノリに、安心する私。
「あ、えっとね。…今日暇?」
「…ん?今日か?今日は…
一応こいつらと野球するつもりやけど。」
待ちを食らい「なんだぁ?」と言う顔をした男の子たちを
サラッと目で確認する。
あー、そっか。…どうしよっかな、…でもまぁ
「じゃー、明日でいいやっ。」
「ん?なーんやそれ、気になるやん。」
「いや、…ね。今日ちょうど1週間前だから…さ。
そろそろ決めときたいかなぁ~…って。」
別に、今日じゃなくてもいいんだけどね。
「……。
あぁ。…ん、何の?」
…え。
「何のって…、来週の今日、水曜日、テストだよ?」
「いや、それくらいは分かっとるけども。」
……
…えーっ!!!
「…え、だ、だから、テスト…、あ、あの……」
まさかの肩すかしに、その場で狼狽してしまう私。
忘れちゃったの…?今年もやるって言ってたのに…
なんかずっと身構えてたのがバカみたいじゃ…
「…はは、じょーだん。」
…え?
「何をあたふたしてんねん。忘れてるわけないやん。」
ふと見上げると、そこにはいたずらっ子の笑顔が。
…やられた。
無駄に取り乱してしまった自分が急に恥ずかしくなる。
でも、相変わらずの調子とその笑顔に
自然と笑顔になっている自分もいました。
「そか。テストももう最後なんやな。」
「うん、そだね。」
…って、やっぱり忘れてたんじゃない。もう。
「おい文弥~、いつまで待たせんだよ~。」
痺れを切らせた男の子の中の1人が
私たちの方に近づいてきました。
「あー、すまんすまん。
えっと…、悪い、今日は俺パスするわ。」
「えー、なんでぇ。」
「え、いいよ、別に今日じゃなくても…」
「でも、早い方がええやろ?」
「…え、それは、…まぁ。」
―じーっ…。
「…なになに?2人でデートでもするのか?」
「…ぇ。」
そ、そんなわけ…。
何かを感じ取ったのか、他の男の子2人も近づいてくる。
「え、2人付き合ってんの!?」
「マジで、お熱いですね~。」
「違うわっ!そんなんちゃうわっ!!」
少し照れながら、でも笑顔で、それを否定する。
…そ、そーだそーだぁ。
「ふーん、まぁ、いいや。しょうがない。
ま、ここは1つごゆるりと…、じゃーまた明日なっ!!」
「ひゅーひゅーっ!!」
「…ったく。じゃーな~。」
男の子たち3人が昇降口の方へ
ときどきこちらを振り返りながら、消えていきました。
「ふぅ。」
1つ溜め息をつく。私もつられて、それに倣う。
「さて、何処で決めよか?」
「え?」
「え?って、罰ゲームを決めるんやろ?」
「あ、…まぁ、そ、そうだね。」
「教室、掃除終わった後とかやったら使えるけど…」
「…あ、私の家でもいいよ。」
そのつもりで今日、ちゃんと片付けてきたんだし。
「おー、そか。んじゃ小春の家で。」
「うん。」
「久々やな~行くの、いつぶりやろ。」
「丁度1年ぶりじゃない?」
「…そう言えばそうやな、丁度去年の今頃か。」
「うん。」
こんなにちゃんと喋るのも、1年ぶりなんだけどね。
それなのに普通に会話できているのが、本当はちょっと
不思議だったり。
「とりあえず、行こか。」
「うん。」
2人で肩を並べて、私の家へと向かいました。