CFNM日記

雑草と太陽 9

(2012年6月13日 21:00)

ノリが何処に向かったかのか、そんなのすぐに分かった。
でも、どうやって声を掛けたらいいのか分からないし、
第一さっきのことでもう頭がいっぱいいっぱいだし、
第一まだ、…直ってない。

……。

体育館の角で立ち止まり、気持ちと体が収まるまで、
ゆっくりと、深く、深呼吸。

……。
なんとか下は収まったけど、気持ちの整理は全然付かない。
そしてこれからも、いくら待ったとしても、
それがまとまることはない。
ほら、僕バカだから。バカはバカなりに、分かるんだよ。

だからって、ここでずっと待ってるわけにもいかない。
ならもう、行くしかないよね。

 

僕の予想の正にその通り、まぁ、ここしかないよね。
ノリは、体育館裏の階段に腰掛け、うずくまっていた。

緊張しながら、もの凄くドキドキしながら、
僕はゆっくりとノリに近づき、ゆっくりとその横にお邪魔する。

……、何にも言えない。何にも出てこない。
ただでさえ、出来れば無心でいたいのに、無理に決まってるよ。

こんなとき、気の利いたことが言える人なんて、いるのかな。
きっと、いないと思うなぁ…、…なんて、どうでもいいこと。
…はは、もう、どうしよう。

 

「グスッ…」

…っ?
隣りからふと聞こえてくるすすり声。…ノリの、声。
……、…そっか。

「…何しに来たんだよ。」

っ!?
かすれた鼻声に、跳ねる心臓。
…えっと、それは、その…

ふと横を見ると、少しだけ覗かせた鋭い眼差しが、
僕を、睨み付けていた。
目の周りは水滴まみれで、酷く、赤かった。
そんな顔、一度だって、見たくなかった。

「わざわざまた俺のこと、笑いに来たのかよ。」

再び顔を腕に埋め、そう言う。

「そ、んなこと、…あるわけないっ…!
 笑ったりなんて…、しないっ…!!」

それだけは、絶対に否定したい。

「嘘付け、さっきみんなして…、笑ってただろ。」
「笑ってないよっ、僕は、笑ってないっ。」
「いいんだよ、嘘付くなよ。
 あんな情けねーカッコ見たら、笑うのが普通だろーよ。」

そう言ってノリは、涙を拭った顔を上げ、
正面を睨み付ける。
その横顔が、悔しさに満ちていて、
でもそれ以上に、恥ずかしさに満ちていて。

頭のど真ん中に、
ノリの言う”情けねーカッコ”が鮮明に蘇って、
僕は自分を制御することなんて、出来る、はずがなかった。

「…ごめん。」

無意識に、ノリへの懺悔が口から零れる。
ごめん、…それしかもう、言葉が出てこない。

「…、謝るなよ。」

…え、あ、ちょ。よく考えたら、
このタイミングでごめんなんて言ったら、
僕が、みんなと一緒笑ってたことになっちゃ…っ!

「ち、違くてっ!!」

そうじゃなくて…、えっと、その…、

「僕が止めてれば、こんなことにはならなかったのに…、
 って…。」

咄嗟に、本当に思ってた気持ちに修正する。
…そうだよ、僕が、ちゃんと止めてれば、
こんなことにはならなかったのに…、…と、

「…どー言う意味だよ。」

…え。
今まで聞いたことのない、暗い重低音が耳を突く。
……、え。

恐る恐る目線を横にずらす、…と、
そこには、憎悪と不快を宿らせた冷たい目つきで僕を睨む、
ノリの姿があった。

一瞬にして、全身の毛が逆立つ。
思わず目を逸らすも、心拍数は急激に増していく。
体が、小刻みに震え出す。
やだ、やだよノリ…、そんな顔しないで…

「止めてればって、鼻から俺が負けると思ってたのかよ。」

…え、…っ!!!
ち、ちがっ……!いや、…でも…ホン…、いやでも…!!

「ずっと俺の走り見ながら、
 どーせ負けるのにって、陰で笑ってたのかよ。」
「ち、ちがっ…!!!」

そんなこと、1ミリだって思ったことないよ…!!
ずっと、心の底から応援してたよ…!!

弁解したい気持ちは山ほどあるのに、恐怖で、それ以上声が出ない。
見たことのないノリ、見たことのない声、見たことのない仕草。
何もかもがショックで、体が、全く動かない。

「じゃあ、俺が勝つって思ってたかよっ。」

少し強い、でもやっぱり、冷酷な音。

そ、そりゃあ…、そう…、…、そ…、
…そ、れは…、

「それ…は…、」

搾り出した、か細いその台詞。
発してすぐに、青ざめた。

最悪のタイミング、そんなこと、今、言っちゃったら…
……!!!!

誰かの体中の血が、逆流するような音が聞こえた。
その誰かが、サッと立ち上がる影が、視界の端に映った。
何かを拾う動きが見えた、それを思い切り投げた、
ような気がした。

 

-カァァァァァアアアーーーーーーーーン。

放課後の静寂に、侘しくも大きな金属音が響く。

-カランカランカラン…。

壁に衝突し、グニャリと変形したアルミ缶が転がる。

「はぁ…、はぁ…、はぁ…。」

小さな背中が、大きく肩で息をしている。

やだ、やだよ…、こんなのやだよ…

「ノリぃ…」

震える体を震わせながら立ち上がり、
蚊も鳴かないような小さな声をなんとか捻り出す…と、

 

「二度と俺に付きまとうなっ!!!!!」

背を向けたまま、僕に、そう吐く、ノリ。

 

目の前が、真っ白になる。
頭の中が、真っ白になる。
心も、体も、真っ白になる。
その代わりに、堪えていた涙が、溢れ出る。

 

自分の泣き声も、誰かの叫び声も、目も頬も土も空も、
もう何も聞きたくない、見たくない、触れたくない。

 

もう何もかも忘れたい、もう何も知りたくない。

泣いて全てを誤魔化そうとする、けど、
もう側に、ノリの姿がないのだけは、分かった。


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この記事へのコメント
  1. なんか珍しく感動できますね(ノ_・。)

    • 感動系になるかは分かりませんが、
      ちょっと切ない系になるかと思います~。
      あんま需要なさそうですが^^;

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