イカサマＧ＠ＭＥ ４

千佳から始まったババ抜き１回戦。
もっと盛り上がるかと思ってたけど
案外ババ抜きって地味なのね…。
淡々とカードを引いて、揃っては捨てるを繰り返す。

わたしは森くんにカードを引かれ、三浦のカードを引く。
誰がジョーカー持ってるのかな…
…１番重要なその問いの答えは、すぐさま明らかになった。

…んふふ。三浦が持ってんジャン。
わたしから見て右から２番目のカード。
天使さんが笑ってるよ～。
心配してたけど、案外全然分かるモンだね。
気持ちジョーカーだけ
少し上に飛び出すように構えてるけど
これは敢えて目立たせて相手に取らせようとする
裏の裏をかいた作戦なのかな～？

ふふ。
そんな心理戦、わたしたちには通用しないとも知らずにね。
三浦の顔ったらそんなこと悟られないように
真顔に徹してるよ。
でも似合わない眼鏡かけてるから
ちょっとアホっぽく見えちゃう。
…ヤバイ、ちょっと笑っちゃいそう…！
ジョーカーが見えてるだけで
こんなにババ抜きがおかしいなんてね。
でも、平常心平常心…。
ここで変な素振りとかしたら
きっと怪しまれちゃうもんね。

わたしはカードに照準を合わせ直して
手を右往左往させ、品定めをする…振りをする。
そして右から２番目の微笑み天使カードを…
引かずに、１番右のカードを引いた。
…別に最初から引く必要なんてないもんね。焦らし焦らし。

手元にきたそのカードで１つペアが完成し
わたしはそのカードを４人の中央へと送り出す。
顔にはあまり出さないように徹しているものの
悔しさからか、少しだけ三浦の眉がピクッと強張るのを
わたしは見逃さなかった。

…悔しがっちゃって、意外と可愛いトコあるじゃんね。
…なんて、完全に男子を手のひらで転がしちゃってる気分。
ヤバイ…わたしちょっとこの状況を
楽しみ始めちゃってるよ。
ふひひ…イカサマさいこー…！！

その後２周する間に、着々と少しずつではあるけど
個々のカードの枚数は減っていった。

そして４回目のわたしのターン。
そろそろ引いてあげるか…そんな見当外れの優しさを胸に
わたしは頑なに頭１つ飛び出し続ける三浦のジョーカーを
そっと、引いてあげた。
当然のごとく、わたしの手元に舞い降りるジョーカー。

やっと自分の仕掛けた裏の裏をかいたトラップに
わたしが引っかかったと言う事実を目の当たりにし
自画自賛するかのように
はたまたそんなわたしをあざ笑うかのように
ダテ眼鏡のレンズ越しに、目だけで嘲笑してくる三浦。

…ッキィィーーーーーー！！
分かってたけど腹立つ…！
わたしはね、わざと引いてあげたんだからね！！
そんなあんたのヘナチョコなトラップに
引っかかったわけじゃないんだからねっ！！！
…なんて言葉、直接伝えられるわけもなく
わたしは計画通りに
少しだけ残念がる素振りを三浦に見せる。

…まぁ、今の内にいい思いしておくことだね。
最後の最後には
あんたたちを生まれたままの姿にしちゃうんだから。

続けて、千佳のカードを引くために
少し体を千佳の方に傾ける三浦。
そんな三浦を見ながら、わたしは興味本位で
頭の中で奴の衣類を脱がしていってみた。

靴下…眼鏡…Ｔシャツ…ハーフパンツ…そして
……パンツ。
そして、その中には…



「…山、…丸山。」
「…へ！？」

隣りから聞こえてくる声にビクッと反応してしまう。

「…いや、…次俺の番だから…カード。」
「…あ、あ！ご、ごめんねっ！！」

そう言って慌てて森くんに自分のカードを差し出す。
わたしとしたことが…ついボーっとしちゃった…不覚。
そっか、でもそうだよね。
わたしたち、２人のを、見ようとしてるんだよね。
ホント、ちょっとの興味本位で見ようと思っただけだけど
いざ見るとなると、やっぱドキドキしちゃうんだろうな。
弟のくらいしか…見たことないしね。
しかもちっちゃい頃の。

…ん、んまぁどうせ大したモン付いてないだろうけどね。
森くんはまだしも、三浦なんて…。
…ふ、やめとこう今は。
今はとにかく天使探しに集中しよう…。



その後第１回戦は
わたしの元から森くんにジョーカーが渡ることもなく
すんなりとわたしの負けで終了した。
もっといろいろジョーカーが
みんなの手を旅するような展開も予想してたけど
意外とあっさり決まったかな。

…んまぁまだ最初だしね。
それにわたしたちにとってもそっちの方が都合いいしね。

「…よっしゃ！じゃー女子！１枚脱げ～。」

嬉しそうにそう言う三浦。

「…エッチー！！」

わたしはそう言いながら、右足の靴下を脱いでいく。
わたしの行動を真似するように
千佳も少し恥らいながら片方の靴下を脱ぐ。

「…え、エッチって！そ、そう言うゲームだろうがっ！！」

急に照れながら、反論をする三浦。
…まったく、何さっそく照れ始めてんのよね。
まだ靴下しか脱いでないのに…ウブっ子ねぇ三浦は。
ブラまで見せてあげちゃうとか…
ちょっとサービスしすぎかな？
…ま、いいか。

その反面森くんは…普段なよなよしてるイメージあるけど
こう言う三浦の近くで見ると、落ち着いてるって感じだな。
…うん、まぁ…そんなことろかな。

負けたわたしは、(正確には負けてあげただけど…！)
次のゲームのためにカードをかき集めて、満遍なく切り
そそくさとみんなにそれを配り始める。
…はっきり言って
わたしたちにとってブラになるまではただの茶番だからね。
長いこといい気にさせておくほど、優しくないからわたし。

…とにかく、そのときが来るまでは我慢ね。
我慢ってあんまり好きじゃないけど…
最後笑うための我慢だと思えばね…頑張れるかな。

「じゃー、２回戦だね。」

そんな、わたしの天使のような笑顔と呼びかけで
２回戦が始まった。