小説

イカサマG@ME 6

「え!?」 「…え。」 ほぼ同時に声を発するわたしと千佳。 …今なんて…?俺たちには…ジョーカーが見えてる…? 「…ど、どういうこと…?」 全く状況が把握できてないわたし…もちろん千佳も。 目の前には意を決した表情の森くんに、青ざめた三浦…。 「だから…  俺たちには、どのカードがジョーカーか分かるんだ。」 「…!?ど、どど…どうして!?」 …そんなわけないよ… これわたしの用意したトランプだし…。 …!!まさか天使を…見破られた…!?!? …そんなわたしの疑問に森くんから返ってきた言葉は 予想外のものだった。 「眼鏡だよ、この眼鏡。」 「…眼鏡?」 「うん、…この眼鏡越しに見るとね  ジョーカーが…光って見えるんだ。」 …え、…え、え!?光って見える…!? そんなはず…ない… 「…な、なんで??」 話が飛躍しすぎてついていけない… 千佳なんかもう目が点って感じ。 そんなわたしたちのやり取りを 肩身が狭そうに聞いていた三浦が 観念したのか、カラクリを喋り始めた。 「…と、塗料を塗ったんだよ、特殊なヤツを。」 「塗料…?いつ?」 「…一番最初。」 …あのときか。 …天使に気づかれないかどうかばっかり考えてたけど 三浦はあの瞬間を利用して、そんなことしてたんだ…。 全く気づかなかった。 「…ほら。」 そう言って、かけていた眼鏡を外し それをわたしに渡す森くん。 それを手に取り、誘導されるがままに装着する。 …レンズ越しにジョーカーの裏を見ると… そこに描かれた微笑んだ天使は、白く微かに でも確かに、光って見えていた。 そんな… 丁度そこに乗算するようにインチキが施されてたなんて…。 「…ほん…とだ。」 力なく無意識に声を漏らす。 横目に写る千佳は、ただただ呆然としているみたいだった。 「…そんな塗料、何処で見つけたの…?」 「…マジックショップに売ってた、眼鏡つきで。」 諦めたのか、少し恥じらいながらも真実を吐露する三浦。 マジックショップ…わたしと一緒… …なんか、もの凄い恥ずかしいんだけど。 わたしは三浦と同じ脳ってこと?…なんか、…悲しい。 「…ごめん、ホントごめん。」 そう言ってわたしたちに謝ってくる森くん。 …きっと提案を持ちかけてきたのはおそらく間違いなく 三浦の方なんだろうけどね。 「…う、うん、いや…大丈夫。」 …普通だったらそんなことされたらブチ切れだよね。 こっちはブラ姿にされてるんだから。 …でも、思うように反論できない。 だって、わたしたちだって同じようなことしてたんだから。 別にこっちはバレてるワケじゃないけど なんかこう、演技するにも演技できないって言うか…。 …ってか三浦の奴 わたしたちのお願いにすんなり首を縦に振ってたけど その背景にはこんなイカサマが仕掛けられてたのね。 …さいってー…!!タダでおっぱい見れると思って 心の中で歓喜してたに違いないよね。 ほんとドスケベのド変態…。 …なんて言ってるわたしも人のこと言えないくらい 全く同じこと考えてたから 結局は何も言えずに固まってしまってた。 森くんが罪悪感を感じて打ち明けてくれたからいいものの そのまま続けてたら大変なことになってたよね。 …だってここにいる4人の全員が全員、イカサマを使ってて 全員がジョーカーの在り処を把握できてるんだから。 まさにイカサマゲーム…とんだ茶番だよね。 配った時点で ジョーカーがあったチームの負けってことだモン。 確率2分の1…怖すぎるよ。 そんな呆然とするわたしたち2人を尻目に 1人立ち上がる森くん。 そしてわたしの勉強机のところまで移動し あるものを手にして、元の位置に戻ってきた。 その手には、違うトランプが握られていた。 同じバイセクルのトランプ… でも、ホントに普通のトランプだ。 「…これ、使ってもいいか?」 「…う、うん!」 咄嗟に聞かれて咄嗟にそう答えてしまったわたし。 使ってもいいか?って…え?やる…の…? 「俺たちがイカサマしてたのは申し訳ない。  でもきっとこれじゃ田嶋と丸山も納得いかないだろうし  俺たちもなんか申し訳ない。  …だから  このトランプで最終決着をつけるってのはどうだ?」 物静かだった森くんが急にここぞとばかりに喋り始める。 「…最終決着って…?」 「だから…この普通のトランプを使って  最後にもう1回ババ抜きをするんだ。  俺らが負けたら…全裸になる。  女子が負けたら…ブラを外す。」 「…ま、マジかよっ…!?」 「…でも、それじゃあ…!!」 「確かにそれじゃさっきと条件変わんないか…  わ、分かった、もし俺らが負けたら、服全部脱いで…  なんでも1つ言うことを聞く…よ。」 「…!!!も、森っ!!!」 「仕方ないだろ、こうなっちゃったんだから…。」 「こうなっちゃったって…!!  お前が勝手に暴露したんだろうがぁ~…。」 撃沈と言った様子の三浦。 そりゃそうだよね…森くんが変なこと言わなければ 順調にことが進んでいたんだもんね…。 んまぁわたしたちもインチキしてたから 順調にとはいかなかったかもだけど…。 と、そんなことはどうでも良くて、問題はこのあと… 「…どうだ?これで許してくれない…かな。」 「…う、うん!分か……った…。」 気が動転してたせいか 自分たちの方が有利だと一瞬勘違いしちゃったのか わたしはその森くんの危なすぎる最終決戦に 賛同してしまっていた。 …どうしよう、おっぱい…見られちゃうかも…? …ま、まだ今なら…断れる…よ…!? 「だとさ、あとは三浦だけだよ。」 「…マジ…かよ。」 時すでに遅し…。 千佳には賛同を求めていなかったけど きっとさっきの1件で、わたしの意見=千佳の意見だと 勝手に判断しちゃってる森くんがいるんだろうな。 そんな千佳は 今にも泣き出しそうな顔でわたしを見てくる。 …悪いと思いながらすぐさま目を逸らすわたし。 …ごめん、今断ればきっと済むんだろうけど 元々わたしが持ちかけたラストマッチだし 微笑む天使のイカサマのこともあるし どうしても、口が開かない…んだ。 「…どうする…?」 「…マジかよ…、えー…全裸…全裸か…よ…  ……ぅあ~……!!」 お願い三浦っ!3対1だけど、本気で反対してくれたら このゲームもなかったことになるかも…!!!! 「…わ、分かったよっ!!やってやるよっ!!!」 …願い届かず。 「…よし、決まりだな。」 そう言ってかけていた眼鏡を外し 床にそれをそっと置く森くん。 同様にしてふてくされながらも、同じ様にそれを外す三浦。 …うそ、ホントにやるの…?ど、どうしよう…。 「よし、じゃあ丸山よろしく。  …今度はホントにイカサマなんてない  完全なフェアゲームだから。  それと2人とも…目のやり場に困るから一応…  ゲーム中は上…着ててくれていいよ…。」 そう言って照れながら わたしに箱ごとトランプを渡す森くん。 ホントに…、やる…の…? うそでしょ…、うそ…、…でも…… …急激に張り詰めた部屋の空気が その答えがイエスであると、教えてくれていた。
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