小説

気になるあいつ 1

「待て!ジョン!」 この馬鹿犬。 毎日散歩してやってるのに まだ散歩コースを覚えやがらない。 オレに似たのかな? …勘弁してくれよ。 まぁ1ヶ月くらい前に こいつが急に言うこと聞かなくなって 勝手にオレを引っ張って走り出して されるがままに着いていった道に たまたまあの公園があって…。 この馬鹿犬は 目の前のメスのプードル犬に引かれて 単に追いかけてっただけらしいんだけどな。 悲しきかなオスの馬鹿犬。 雑種なのに無理しやがって…。 あの日以来 オレがこっちのコースに 変えちまったってので まだ覚えてないのは 許してやらないといけないんだけどな。 オレは小学4年生。 他の友達はみんな バスケとか野球とかの クラブ活動に専念してるはずの 時間帯。 オレも本当はクラブに 入んなきゃいけないんだけど めんどくさいってことで 上手いことスルーしてる。 いやー行けない子行けない子。 んまぁ親にはバレてるんだけどね。 帰ってくるの早いしw そんでクラブ活動しないなら 犬の世話くらいしなさい!って言う 母ちゃんの無理矢理っぽいこじつけのせいで こうして学校帰りは 馬鹿犬の散歩をしてやってるってワケ。 最初は嫌だったけどさ。 だるいし。 でも今はそんなに苦じゃないんだな。 それが。 いつもフリスビーで遊んでやるために 寄る公園。 あー馬鹿犬のおかげで見つけたって言う さっきの公園ね。 ぶっちゃけフリスビーなんてのは 公園によるための 口実アイテムみたいな モンなんだけどさ。 ここ1ヶ月くらい 公園に寄るといつものようにいる 気になるあいつ。 …ウチの学校の奴じゃないはず。 こう見えても 学校では結構顔が広いんだ。 見た限りオレと同い年か プラマイ1学年くらいだろ。 だとしたら 絶対ウチの学校にはいない顔。 間違いない。 …いつもベンチに座って 難しそうな本を読んでる。 いったい誰なんだろ? 気づいたらそいつに会うために 公園に通うようになってた。 犬の散歩コースなんてのは そのためのこじつけよ。 「ジョン、早く覚えろよ。  この角を右だ。」 この角を右に曲がったら あの公園が左手に見えてくる。 今日もいるかな… …ほーらいた。 いつものよーに本読んでる。 …声かけたこともないんだけどさ。 なんか気になるんだよね。 いろいろ。 さて…と。 今日もフリスビーして 遊んでやるか。 そんなこんなで いつものようにオレは 馬鹿犬と一緒に 公園に入っていった。
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