雑草と太陽 11
(2012年6月27日 21:00)
泣き疲れたのか、考え疲れたのか、まぁ多分両方だろう。
昨日の夜は、驚くくらいにぐっすり眠れた。
それなのに寝起きは最悪で、体はやっぱり依然重くて、
頭もなんだか痛かった。
休もうかな、とも思った。実際本当に体ダルいし。
でも、休んだところでどうにもならないし、
事態が悪化するだけのような気しかしない。
まぁ、これ以上悪くなりようがないくらい、最悪な状況なんだけどさ。
とにかく、たくさん考えた結果、
誤解を解きたい、ただそれだけだった。
きっとノリなら分かってくれるよ。
根はすごーく優しいヤツなんだ、僕が一番良く知ってるはずだろ?
昨日の狂気じみたノリの姿なんて、思い出さなくていい。
忘れてしまっても、問題ない。
大丈夫大丈夫、きっと大丈夫。
自分に言い聞かせながら、学校へ向かう。
ホントはさ、ホントは、無理してるんだよね。
足はガクガクしているし、心臓は信じられないくらいドキドキしてる。
それでも、なんとか自分を奮い立たせて、今、歩いてる。
僕ってこんなに、強い子だったかな。
自分でもさ、ちょっとビックリしてるんだ。
弱虫で、泣き虫で、怖がりなのが、僕の不治の性格だったはずなのに。
ノリと会うこと、ノリと話すこと、悲しいけど、ホントに怖い。
でも、ノリとの関係がこのままであることの方が、
怖くて、悲しくて、仕方なかったんだ。
震える足を叱咤しながら、恐る恐る入った教室の中は、
明らかに昨日の雰囲気とは何かが違って、
簡単に言うと、何かがおかしかった。
男子は大半の顔がなんだかニヤついているし、
女子は誰一人として席にも付かずにザワついている。
昨日の夜にどうしても想像してしまった、次の日の教室の様子。
それが今僕がいるここに、そっくりそのまま反映されている。
胸が、キリキリと痛い。
そして、僕の予想が正しければきっと、…うん。
ただ一人、無表情で、黙りこくったまま、席に座る影。
みんなの視線のほぼ全てが、そこに集中しているように感じる。
もしかしたら、休むんじゃないのかな。とも思った。
あんなことがあったんだ。僕だったら、絶対に無理だよ。
でも、絶対に来るだろうな、とも思った。
だってノリだもん。逃げたりなんて絶対にしない男だ。
顔を隠したりする素振りもせず、何処か一点をジッと見つめながら、
ただただ沈黙を貫いている。
ノリの強さや男らしさは、誰よりも分かっているつもりだけど、
ノリだって一人の人間だ。きっと、必死に耐えているんだろう。
…ダメだ。
僕はこれ以上、その場にいることが出来なくて、
ランドセルを無造作にロッカーに押し込み、
足早にトイレに駆け込んだ。
その日はずっと、そんな感じだった。
唯一心が休まるのが授業中で、
休み時間になれば、誰からでもなくザワザワし始める。
ノリは何処へ逃げるでもなく、ジッと椅子に座っているだけで。
結局僕がそれに耐えられなくなって、逃げるように教室を出て。
トイレに行ったり、用もないのに向かいの校舎まで言って、
廊下をブラブラしたり、理科室に隠れたり。
本当に僕は弱い人間だな、本当に情けなくなった。
本当に辛いのは、どう考えてもノリの方なのに。
あいつにもあいつにも、あの子にも、…あの子にも、
ノリは昨日、全部を、見られちゃったんだよね。
クラスの全員が、ノリのあそこを、見たんだよね。
クラスの全員に、ノリはあそこを、見られたんだよね。
…、ごめんねノリ。またタっちゃった。
良く考えたら、とんでもないことだよね。
僕がノリだったら、恥ずかし過ぎて、もう学校に来れないかもしれない。
僕が強くなれば、ノリを守ってあげられるのかな。
いや、そうじゃないだろ。
僕以外、誰がノリを守ってあげられるんだよ。
守ってあげたことなんて一回もないけど、
いつも守ってもらってばかりだけど、…気のせいかもしれないけど、
きっとそれは、僕にしか出来ないことだ。
でも、やっぱり、怖い。ノリが、怖い。
ノリが怖い、そんな自分が、凄く、嫌だ。…キライだ。
だから、また逃げるの?
ノリは何からも逃げずに、耐えているのに?
違うだろ。そうじゃないだろ。そうじゃないんだよ。
そうだろ。そうだろ。そうだろ。…、
そうだろ。
…でも、
そんなことを考えていたら、あっという間に時間が過ぎていて、
気がつけば今日の学校も終わり、放課後。
増していくドキドキを出来るだけ無視しながら、
ノリに向かう時期を窺う。
先生の話が終わって、みんなで「さようなら。」を合唱したら解散。
ノリはきっと、一目散に教室を出て行くだろう。
もしかしたら、先生より先に出て行くくらいの素早さかもしれない。
決して見失ってはいけない。
意地でも追いかけるんだ。
周りになんて思われようと、結果傷ついたとしても、
絶対に逃げてはいけない。
誤解を晴らすために、そして何より、ノリを守るために。
「それでは、さようなら~。」
「さようなら~。」
バラバラのユニゾンが響き、僕はノリに焦点を合わせる。
急げ…!
床を強く踏み締め、駆け寄るためのエネルギーを溜める。
…と、
思わず、力が抜けてしまう。
ノリが、予想に反し、動かない。
ランドセルも背負わず、直立不動のまま、黒板にガンを飛ばしている。
…?
先生がいつものように、ゆっくりと教室を出て行く。
どうしたの…?
力なく、僕がゆっくりとノリに近づこうとする…と、
―ガシッ。
おもむろにノリの肩に腕を回す、……、…鹿島。
―ドクンッ。
心臓が、大きく跳ねる。
そのまま、嬉しそうなニヤけ顔を携えて、ゆっくりと教壇に向かう。
ノリは、抵抗することもなく、奴隷のように、鹿島に連れられていく。
ザワめく、教室。
これは…。
「はいちゅーもーーーーーく!!!」
…っ!!
何故か見慣れた光景に、頭が痛くなる。
なんだよ、なんでだよ…。
2012年6月28日 02:06
ショタ凄い気になる!(^^)!
どうなるんだぁ?
いつもと違って一人章視点?うまく説明できん
よくわからん!