小説

夏の大三角 番外編 1

『アルタイルの苦悩』

照れる千沙に手を引っ張られ 同じく照れる陸に腕を掴まれながら 千沙の家の脱衣所へとやってきた和哉。 -バタンッ!! 「…ちょっとー!?  だからなんでアンタまでついてくるのよっ!!」 「べ、別にいいだろっ!!2人も3人も一緒だろ!?」 「大違いっ!!もうこれだからガキは…」 「…あ!今ガキって言ったな!?  ガキって言っただろっ!?」 「ちょ、…こらこら、…もう。」 さきほどのニヤニヤ展開の照れ隠しからか いつも以上に衝突し合う千沙と陸。 それを困り果てた様子で見守る和哉。 「兄ちゃんっ!!オレ一緒に入ってもいいよな!?」 「いや…それは…だな。」 「ほらいやだってー!残念でしたー。」 「兄ちゃーん…、くそ、もうこうなったら」 そう言って、自分の短パンとパンツのに手をかけ 今にもズリ下ろしてやるぞという体勢に入る陸。 「もうっ!!」 急にまた照れて陸に背を向ける千沙。 前になかったこのドキドキは、陸が少し 大人になったからだろうか。 「…もう勝手にすれば。」 「…おう、勝手にする。」 「…分かったからもうあっち向いてて!!」 「え?」 「着替えるからっ!和兄もっ!!」 自分の背後へ指示を出し、その指示に従う彦星2人。 千沙は持ち前の早着替えで、ものの30秒でタオル姿になり -バタンッ。 …浴室へと千沙が入っていき 脱衣所で取り残される陸と和哉。 陸としては、もの凄く複雑な気分だった。 千沙と昔の関係から、この微妙な関係になれたのは 確実に助言をしてくれ続けた和哉のお陰であるし (と、陸が勝手に解釈しているだけではあるが) 今でも良い兄ちゃんに違いはないのだけど 自分も彦星に昇格した今 ライバルであることに違いはない。 どんな風に接すればいいのか、正直分からなかったけど 今この瞬間くらいは、単純に風呂を楽しもうと 珍しく機転を利かせ、大人な対応をしようとしていた。 一方、もの凄く困惑しているのは和哉だった。 千沙と風呂に入ると言う公約をしていたのは事実だが いざそのときになったら 年上の権力と持ち前の説明術(笑)で なんとかそれを回避しようとしていたのだ。 でも今のこの状況… 和哉にとっては最悪のシナリオと言っていい。 この状況を回避する方法を 今の和哉の脳は持ち合わせていなかった。 「…とりあえず、入ろっか。」 ようやく熱も冷め始めたか、落ち着いた様子で 少なくとも今の和哉よりは落ち着いた様子で そう和哉に笑いかける陸。 それに対し動揺を隠しきれない和哉は 何かいい案はないかと ショートしそうなくらいに頭を回転させていた。 「…よしっと。」 ふとそう声を漏らす陸の方を見て愕然とする。 既に陸が 一糸まとわぬ生まれたての姿に早変わりしていたのだ。 これまでも、この先も 一切タオルは使わないように見受けられる。 何故だ…!?…答えは簡単だった。 和哉がそうアドバイスしたからだった。 目線を逸らし無心に徹しようとするも どうしても視界の隅を捕らえてしまう、弟のちんちん。 半年前に比べ、身長は少し大きくなったような気もするが ちんちん自体はあまり変化していないようにみえる… でも、確かにほんの少し 大人の証がチョロチョロと生えているのが分かる。 …と、いかんかん、こんなことしてたら…。 「ホント最近なんだ、生えてきたの!」 和哉の気持ちをよそに嬉しそうにそう言いながら 自分の股間を見せ付けてくる陸。 小さくて可愛らしいそれの成長と、小刻みな振動が いけない方向へと和哉の脳をシフトさせていく。 …や、ヤバイっ……!!! 突然に陸に背を向け 取り乱すようにモゾモゾし始める和哉。 「…ん?どうしたんだ?兄ちゃん。」 急に変な態度になる和哉に疑問を持ち、回り込んで 和哉の顔を覗き込んでくる陸。 「…なんでもないってっ!!」 「なんだ?トイレ行きたいんだったら、そこにあるぞ。」 「ち、違うって!!!」 「…えでも、押さえてるから。」 「き、気のせいだろっ。」 「気のせいって言われても…、……、ってか  オレそう言えばまだ  兄ちゃんのちんちん見たことないよな?」 突然の陸の問いに、さらに動揺する和哉。 「あぁ?…そ、そりゃそうだろうよ…。」 その反応に満面の笑みで喜ぶ陸。 「見してっ!!」 その無邪気な笑顔に、頭が痛くなる和哉。 …そんなこと…、出来るわけないだろう……!!! 「と、とにかくっ!!君は先に入ってろっ!!  俺はあとから入るからっ!!」 「えーー!!い、一緒に行こうよぉ…。」 急に甘え口調になるのは毎度ではあるがズルい。 …と和哉は思う。 「いーから!!先に入るんだ!!兄ちゃん命令だぞっ!!」 「…そ、それならそうするけどさ。  …まいっか、どうせ風呂場で見れるし。」 そう言ってゆっくりと、浴室へのドアへと近づいていく陸。 「…んじゃ、先に男見せてくる。」 ドアの直前で 急に染まり始めた真剣顔を和哉に振り向かせ 親指を立てて見せる陸。 そしてタオルも何も一切持たずに、浴室へと入っていった。 -ギィ…。 「…!!!…ま、前くらい隠してよっ!!」 「…う、うるせぇ!男は隠したりしないんだよっ!!」 …バタンッ-。 -浴室で1人取り残される和哉。 大変なことになってしまった…。 このまま脱衣所から飛び出して、帰ってしまおうか。 …でもそれは流石に大人気なさ過ぎるよな…。 でも入るとしたら かなり恥ずかしい展開がどうしても頭をよぎる。 潔く服を脱ぎ捨て、ちんちんを揺らしながら 颯爽と千沙のいる浴槽へと入っていった陸を頭に浮かべ なんて男らしい奴なんだと、もの凄く感心をする和哉。 自分なんかより、数倍男じゃないか…と。 …と同時に、その陸を作り上げたのが自分だと言う事実に 今更ながら、1人後悔をしてみたりもした。 どうする、どうする和哉…。ここは1つ腹くくるか? …いや無理だ、そんなこと出来るわけが… とりあえず少し落ち着こう…、落ち着こう… とりあえず…、下半身が落ち着くまでは…、…はぁ。 -。 「………。」 「……、兄ちゃんおせーな。」 「………。」 「…なんで無視すんだよさっきから。」 「…う、うるっさいなー、大体なんでアンタが…」 「だって千沙いいって言っただろ。」 「…ア、アレは仕方なく…、…もういいよ。」 「何照れてんだよ。」 「照れてないっ!!それはアンタでしょ!?」 「オレは照れてませんー。」 「…大きくなってんじゃん。」 「……、な、何ちゃっかり見てんだよ。」 「………。」 「………。」 -ギィ…。 急に沈黙になった浴室に 3人目の登場を知らせる音が響く。 動揺する心を更に動揺させ 頭がパンクしそうになる千沙。 陸のせいで気持ちがグチャグチャになってしまっているけど どちらにしても 今までこうして頑張ってこれた1番の理由は 今日、この瞬間のご褒美を思い続けたからに違いはない。 そして今、それが目の前に…!! 「…お、兄ちゃ……、…ん?」
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