小説

夏の大三角 番外編 2

『彦星 vs 彦星』

沈黙を破る和哉の登場に救われ そちらに目をやるも、その姿に驚いて目を丸くする陸。 和哉が、腰にタオルを巻いて入ってきたからだ。 「な…なんで?」 女の子と風呂に入るときは、素っ裸が常識。 そう和哉から教えを得ていた陸にとっては 思いがけない情景であった。 そんな陸の疑問にいちいち付き合っている暇などないのは 和哉本人だった。 腰にタオルを巻いているのに違いは無いが それ以外の衣服は、何も身につけていない。 ほとんどすっぽんぽんに近い自分の姿を 年下の男女2人の前に晒していると言う状況は 予想以上に恥ずかしいものであった。 加えて、体の一部と化した眼鏡も 当然のごとく外している。 視界に映るのは余りにもボヤけた世界。 ある意味助かるが、裏を返せば絶望的な状況。 それを物語るように、和哉自身は気づいていなかったが 顔は真っ赤に染まりあがっていた。 そんな和哉を、浴槽から見上げるように眺めるのは千沙。 同じく顔は真っ赤。 心臓の高鳴りがエスカレートし 今にも心臓内回路がショートしそうなほどだった。 あの大好きな和兄が、はだかんぼで目の前に立っている。 いつもと雰囲気が違うように感じたのは 言うまでも無い、眼鏡をかけていないからだった。 …と同時に、和哉の視力が落ちていることを 驚くほど瞬時に理解した千沙は 我を忘れて、和哉の体を目で舐めまわしていた。 …いつも着ていたワイシャツは今は無く その中に隠れていた上半身が千沙の視界に映る。 意外と筋肉の付いた腕に、小さな2つの乳首。 更に下降させると辿り着くおへそ。 その下に… 流石に白い布で隠されてしまっているけど きっと和兄にも陸のようなものが付いているのだろう。 見えずとも 布の上から小さな膨らみを見て取ることができ あそこにあるんだと頭で解釈する頃にはもう 体中がおかしくなってしまいそうなくらい 興奮している千沙がいた。 そんな2人の心情など、知る由も無い。 陸は、とにかく目の前の光景に ただただ納得できないでいる。 「な、なんで兄ちゃんタオルなんて巻いてるんだよぉ!!」 思わず湯船から立ち上がる陸。 自分は何も着けてないんだぞと言わんばかりに 陸の小さなちんちんが再び、びょーんと露になる。 「…な、何言ってんの陸っ!!」 突然の陸の発言と行動にすぐさま反応を示す千沙。 陸のちんちんが上を向いていることに 改めて気づきながらも 今はその発言の真意の方が気になる。 「だ、だって、兄ちゃんが言ったんだぞ!  お、女の子と一緒に入るときは  男なら素っ裸で入るもんなんだって!!」 「えぇ!?」 顔を真っ赤にしながらそう訴える陸。 だからオレは素っ裸なんだっ!と自分の股間を 和哉に見せ付けているようにも見える。 「…い、いやあれはだなっ…!!  ちょ、…ちょっとした冗談だったんだ!!  ホントは女の子の前では  タオルは巻かなきゃいけないんだ…。  すまん、あのことは忘れてくれ。」 なんとか陸を説得しようと 必死にでたらめな弁解をする和哉。 「な、なんだよそれぇ!!」 当然のごとく納得のいかない様子の陸。 小さく反り返る自分の宝物を 今にも隠したそうに手をモジモジさせている。 「そ、そうよ!!  大体女の子にそんなモノ見せるなんて  …さ、さいってーなんだから!!」 そう言って興奮状態の陸のちんちんを見つめながら 和哉の見方をする千沙。 当の陸はもう大変。 今までカッコいいと思っていた自分の行動を 和哉にも、千沙にも否定され もう何がなんだか分からなくなり 今にも泣き出しそうになってしまう。 ちんちん立たせて、ちんちんの裏側まで千沙に見られて しかもそれで最低なんて言われて …なにやってんだよオレ…… …気づくと陸は浴槽から出て、洗い場に立っていた。 ビヨンビヨンと揺れるちんちんを、隠したりはしない。 洗い場で 大事そうにタオルを腰に巻いている和哉と向き合う。 その顔は、小さな獣のように鋭い目つきをしていて 簡単に言えば、和哉を睨んでいるように見える。 当の和哉は、視力の悪さから ようやく陸が勃っていることに気づき その事実が頭を巡り、徐々に興奮し始めてしまっていた。 ただただその様子を、浴槽の中から見つめる千沙。 そんな3人の心の葛藤にゴングを鳴らしたのは 陸の怒りの一言だった。 「…兄ちゃんも、ちんちん出せっ!!!」 すでにちんちん丸出しの陸が、風呂場内でそう叫ぶ。 目を真ん丸くして驚く千沙。 絶望の淵に立たされた表情で固まる和哉。 「…な、何言ってるんだよ…。」 「オレだけ千沙にちんちん見られてるなんて  不公平だっ!!」 「お、おい…、いや悪かったとは思ってるけどさ…  結果オーライじゃないか。それに…」 「結果オーライじゃないっ!!  オレだってちんちん見られて  恥ずかしかったのに我慢したんだっ!!  ちんちん立っちゃったけど  今だって我慢してるんだっ!!」 「こ、こらっ!!  そんなちんちんちんちん言うなっ…!!!」 「兄ちゃんもちんちん出せーーーっ!!!」 そう泣くように叫び、和哉に襲い掛かる陸。 小さなお風呂場の洗い場で 素っ裸のチン獣が襲いかかってくる。 当然逃げる場所などあるはずもなく ただタオルを押さえながら受身の姿勢に入る和哉。 自分の身を心配しつつも 少し大人になった弟のあられもない姿に どうしても興奮してしまう自分もいる。 くそ…本気でマズイ……!!! 陸のお目当ては、もちろんタオル。 ガードし続ける和哉などお構いなしに タオルをおもむろに掴み 全力で引っ張る。 その意外なまでも力の強さに圧倒されながらも ここでひるむわけには…!!と、必死で抵抗する和哉。 「こ、こらっ!!やめろって…!!!!  本当に怒るぞっ!!!」 「うるさいっ!!!ちんちん出すんだっ!!!」 「と、とりあえず落ち着けって!!!」 「やだっ!!!」 洗い場で、タオルの争奪戦を繰り広げる陸と和哉。 …それを浴槽の中から、爆発しそうな心臓を抑えながら 無言で見つめ続ける千沙。 いつしか和哉のタオルも徐々にはだけ始め… どうにかココだけは守ろうと タオルの上から自分の股間を 両手でギュッと握り締める戦法に移行した和哉。 その代償に…、ハラリ。 股間以外の部分が丸出しになり、ほぼ全裸状態になる和哉。 浴槽から眺める千沙の目に…、プリン。 大好きな和哉のお尻がしっかりと映る。 陸のよりは大きな、綺麗なプリッとしたお尻。 夢にまで見た、想像し続けた和哉の学生服の中身… その最終段階の1つであるお尻を 遂に見てしまった。 我を忘れて、和哉のタオルを引っ張り続ける陸。 顔を真っ赤にしてそれに抵抗する和哉。 大事そうに自分のちんちんを守ろうとする ほとんど裸の和兄が いつもの頼りがいのあるお兄ちゃんとは一変して なんだかもの凄く弱々しく、頼りなく見えて… …でもなぜかその姿がもの凄く可愛く見えて ドキドキして… とにかく一心不乱で、『陸ぅ、頑張れぇっ!!』と 心の中で応援している千沙がいた。 …あとちょっと、あとちょっとで和兄の…!!! 「…往生際が悪いなぁ…!!!もう諦めろって!!」 「そんなワケにはいかないだろう…!!!」 「……、分かったよ。」 …急に力を抜く陸。 突然の終戦に驚きながら、息を切らす和哉。 「…ちょっとかっとなっちゃっただけだ。  ごめん、オレ兄ちゃんに悪いことしちゃった。」 急に大人な態度になり、謝罪をする陸。 何はともあれ一矢を報いた…、大きな溜息を1つ漏らし 慎重にタオルを巻きなおそうとする…と 「…隙ありぃ!!!!」 「!?」 「…え?」 油断を見せた和哉に、電光石火で攻撃を仕掛ける陸。 掴みかかるは和哉の白いタオル。 そのまま思い切り引き寄せる陸。 白いそれは、力を緩めていた和哉の手から 面白いようにスルリと離れ… 「…そぉい!!!」 …和哉のタオルが、風呂場の宙を舞う。
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