小説

曖昧サンドイッチ 6

「えーーーーーーーー!!」 「ホントにーーーーー!?」 久音ヶ丘北小学校2年3組。 給食の時間。 何やら、盛り上がっている様子。 「なんでー?普通じゃない?」 「普通じゃないよ~。」 「へー、すげーなぁ。」 会話の中心にいるのは、3班の舞。 「だってお兄ちゃんだもん。  一緒に入ったって、全然普通だもん。」 どうやら、福と一緒にお風呂に入っている話を、 班の友達に話したらしい。 珍しい話題と言うものは、すぐに広がるもので、 クラスのみんながみんな、3班の話に釘づけだ。 担任の新米先生も、何食わぬ顔をしながら、 生徒たちの会話を、ドキドキしながら聞いている。 「お兄ちゃんに裸見られて、  恥ずかしくないの?舞ちゃん。」 「ぜーんぜん。」 そんなわけないじゃん、と、舞。 「えー、あり得ねー。」 人一倍驚くのは、意外にも浦川くん。 「なんで~!?  浦川くん、いっつもみんなの前で、  平気な顔して出してるじゃん!」 「確かに~。」 「やだぁ。」 「そうだよ、何も恥ずかしくねぇだろ浦川は。」 「はっはは。」 「いや、姉ちゃんに見られんのは絶対無理。  恥ずかし過ぎるって~。」 「何それ~。」 「何だよそれ~。」 はっはははは!と、笑いに包まれる教室。 ホント、なんだそれ。 「じゃあさ、滝本もさ、  兄ちゃんの裸、見てんだ?ちんちんとか。」 「うん、もちろん!」 「うっそーー!!」 「やだぁー!!」 新米先生が、箸で掴んだミニトマトを、落とす。 「はっはは!」 「いいな~。」 「えっ?」 「あっ…、…。」 「あのねあのね、お兄ちゃんの、おち、じゃなくて、  あの、えーと、あの、アレ!あれ、ね!  すっごいおっきいんだよ!!」 「えーーーーー!!!」 「舞ちゃんやだぁーーー!!!」 「あっはははは!!!」 新米先生が、豪快にシチューを、こぼす。 「なぁなぁ、浦川のと比べたら、  どんくらいデカいの?」 「ぅぉいっ!!」 「えっとね~。んっとぉ、  浦川くんのがこれくらいだとしたらぁ…、  こーんくらい、おっきい!!」 「えーーーーー!!!!」 「でっけーーーーーーー!!!!」 「かっけーーーーーーーー!!!!」 「やだぁーーーーーー!!!!」 新米先生が、揚げパンを詰まらせて、むせる。 「そんでねそんでね!  舞の前でね、こやってね。  ふ~んふ~んぶ~らぶ~らソーセージ~。  って、やってくれるんだよ!!」 「やだぁーーー!!!」 「あっははははは!!!」 「おっもしれーーーー!!!」 新米先生が、口に含んだ牛乳を、大胆に吹きこぼす。 「そんなんオレだって出来るもんねっ!!」 おもむろに立ち上がる浦川くん。 迷うこともなく、一息でパンツごとズボンを下ろし、 下半身を露出する。…と、 「ち~んち~んぶ~らぶ~ら  ソーセージ~。」 誇らしげに、福の真似をする浦川くん。 「きゃーーーーーー!!!!」 「やだぁーーーーーー!!!!」 「さいてーーーーーーー!!!!」 「おいっ!!食事中っ!!!」 「あっははははは!!!」 「ぜんぜんちがうーーーー!!!!」 「きゃはははは!!!」 度々起こる、お祭り騒ぎ。 いつも、浦川くんが原因。 「せんせー!!  浦川がちんちん出してるーー!!!」 チクられ、さすがに自粛するのかと思えば、 果敢にも、先生の机の前に踊り出て、 「ち~んち~んぶ~らぶ~ら  ソーセージ~。」 を、披露する。 先生の牛乳が倒れ、中身がドクドクと流れ出す。 もう、お盆の上はグチャグチャ。 「こ、コラッ!!!  そ、ソーセージしまいなさいっ!!!」 咄嗟に、ついつい、 教え子の大事な部分を、食物に例えてしまう。 「ソーセージだって~!!!  先生エンローーッ!!!!」 「あっはははは!!」 「おもしれーーーー!!!!」 「いやだもーーーう!!!!!」 「きゃっはははは!!!」 「……ッ!!!!!!」 クラス中が爆笑の渦。 周りのリアクションに、浦川くんはもう大満足。 「いひひ。」 やり切ったとばかりの笑顔を浮かべ、 ソーセージをしまう。 祭りの余韻はなかなか消えず、 みんなのハイなテンションも、なかなか消えない。 「…ふぅ。」 心を落ち着かせ、食事に戻る新米先生。 なんとか1つずつ片付けていき、 奇しくも最後に残ったのは、1本のソーセージ。 よりにもよって、なんで今日…。 生徒の視線をチラチラと気にしながら、 慎重に、最後のそれを摘み、 急いで、でも、それでいて優しく、 口の中へと転がす。
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