小説

曖昧サンドイッチ 8

「はぁ…。」 今日は学校で、とんでもない恥をかいてしまった。 全部暴露されてしまった、それに、 あの状況では仕方なかったとは言え、あの行動。 シュ~…。 思う出すだけでも、恥ずかしくなる。 ほら、また顔が熱くなる。 湯船に顔を浸けて、もう忘れようと念じる。 ………。 プハァ…。 …やっぱ無理。 こうなったのも、元はと言えば、姉と妹のせい。 特に、舞。 別に悪気があったわけじゃないんだろうけどさ。 ………。 今日は火曜日。 忠告くらいしておいても、損はないだろう。 …と、 ―ザバーーーーーンッ!!! 噂をすれば、なんとやら。 空けておいたスペースに、舞が飛び込んでくる。 「…はっ!!」 何かに気づいたように、すぐさま顔を上げる。 そのまま洗い場に飛び出て、ゴシゴシゴシ。 そうだったそうだった。 体を洗ってから入らなくちゃいけないんだった。 この前福兄ちゃんに、言われたばっかりだった。 慌ただしい妹に、ついつい口元が緩む兄。 でも、ここはしっかり言っておかないと。 「舞。」 「ん?なにぃ?」 頭を洗いながら、顔だけこちらに向ける。 「学校で友達に、  兄ちゃんの話しただろ。」 「…!」 なんで知ってるんだろう。 ちょっとだけビックリする舞。 でも、別に隠すようなことでもないし、 「うんっ!」 素直に、無邪気に、そう返事。 「なんで?しちゃダメなの?」 「いや、別にしてもいいけどさ。」 その…、 「兄ちゃんの、ちんちんの話、しただろ?」 「…、…あ!」 思う出したようにそう発し、少しにやける舞。 「ダメだった?」 「んー、…まぁ、その、  …あんまり良くはない…、かな。」 「あ!でも、  おちんちん、って言葉は、使ってないよっ!」 「いや、まぁ、そこはいいけど。」 「でもでもっ、悪いことは言ってないよっ!  おっきくてカッコいいとか、  ソーセージしてくれるとか、  いーーーっぱい自慢した!それだけだよっ?」 「んー…。」 それが一番困るんだけどな…。 とにかく、 「これからはあんまり、  兄ちゃんのちんちんの話は友達にするな。」 「えー…。」 「兄ちゃん、そのこと学校でからかわれて、  恥かいちゃったんだぞ。」 「えー?なんでー?」 「舞の話を、誰かに漏らした奴がいるんだろ。」 「えー、誰?」 「まぁ、浦川だろ。浦川くん。」 「え?…、……、あー。」 なるほど、と、合点する舞。 「分かった?約束できるか?」 「んー…。うん、はーい。」 少し残念そうだけど、すぐにいつもの笑顔に戻る。 「よし、…と、もういいだろ。  お湯掛けるぞ。」 「あっ、ちょっと待って待ってっ。」 「…ん。…、もういいか?」 「…、うん!」 「うっし。」 浴槽の中から、優しくお湯を掛けてやる。 綺麗さっぱり、舞も幸せそう。 …と、 ―サブーーーーンッ!!! 今度こそはとばかりに、お構いなしに飛び込む舞。 やれやれ…。 「プハァ!!」 まぁ、いいか。 「そうそう、  福兄ちゃんとお風呂に入ってること言ったらね、  みんなすっごい驚いてた!!」 「まぁ、そうだろうな。」 「えーなんで~?」 「そりゃあ、普通は入らないもんな。」 「ふーん。」 変なの、そんな顔。 「みんな、一緒に入るの、  恥ずかしくて嫌なんだって。」 「まぁ、そうだろうな。」 「!?  福兄ちゃんも、舞と入るのヤなの!?」 心配そうに聞いてくる妹。 「兄ちゃんは、嫌じゃないよ。  舞と入るの。」 頭を撫でながら、優しく答える兄。 「良かった~!!」 心からの安堵。 「あ!それとねっ!  ソーセージの話したら、  みんなすっごいおもしろがってた!!」 「あっはは……。」 さすがに苦笑の福。 まぁ、子供は好きそうだよなぁ。 「でね、その話したら、浦川くんが、  その場で真似したんだよっ!!  給食の時間なのに!」 「えっ。ちんちん出して?」 「うんっ!!」 「…、すっげーなぁ、浦川くん…。」 強者過ぎるな、到底敵いそうにない。 まぁ、対抗する気なんて、さらさらないが。 「でもね、福兄ちゃんのとはやっぱり、  全然比べ物にならなかった!  もうね、ぜ~んぜんっ!!」 福の圧勝とばかりに、ただただ嬉しがる舞。 「まぁ、そりゃそうだろうな。」 4歳も年下の男の子に勝ったってどうしようもないのに、 と言うか、何に勝ったんだと言う話だけど、 でも、妹の前だし、ちょっと天狗になってみる、兄。 「いっひひ。」 嬉しそうな兄に、さらに嬉しくなる舞。 …と、 「よっしゃ、それじゃあ本場を見せてやろう。」 頼まれてもいないのに、その場で立ち上がる福。 そして、 「ち~んち~んぶ~らぶ~ら  ソーセージ~。」 例のアレを、舞のためだけに披露する。 「あっははははは!!!」 期待通り、大喜びしてくれる妹。 今日学校でやらされたのは、不完全燃焼だったからな。 ここで取り返してやろう。 いつもより大きく、いつもより長く、それをする。 …なんて、格好つけてみたものの、 俺は一体何をやっているんだろうな。 今日学校であったことが、急にフラッシュバックして、 今の自分の行動が、強烈に恥ずかしくなる。 素っ裸で、大事な部分を振り回す自分。 …はは。恥ずかし過ぎる。 ………。 でも、まぁいいや。 今日のこと、忘れるために、 今日はもう、めいいっぱい、辱めを受けよう。 「ち~んち~んぶ~らぶ~ら  ソーセージ~。」 舞の笑い声が聞こえなくなるまで、 福はそれを振り続ける。
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