小説

放課後 6

わたしの10年間の人生の中で 確実に一番ドキドキした瞬間。 それが今まさに このときであると言っても 過言ではありませんでした。 わたしは今上に上着1枚を着て 下はパンツ1枚履いているだけという状況。 そんなわたしの目の前には 灰色のボクサーパンツ1枚だけを身にまとい 顔を真っ赤に染めた 大好きな重光くんが立っていました。 もしかしたらこのあと わたしはそのパンツの中を 見ることになってしまうかもしれない…。 こんなことになるなんて 思ってもなかった。 野球拳なんて ただの遊びだと思ってた。 でも今のこの状況。 もう逃げることはできない。 いろんな感情が打ち寄せながら 延長戦の火蓋がきって落とされました。 ただ1回のじゃんけんだけど こんな緊張初めてでした。 もし負けたらわたしは ぺったんこおっぱいを見られることになる。 もし勝ったらわたしは 重光くんのパンツを自分の手で 下ろさなければならない。 そしてその中にある知らない世界を きっと見てしまうことになる…。 勝っても負けても 恥ずかしいことに変わりない状況に もう頭はパンパンでした。 「…いくぞ。」 重光くんが姿勢を整えました。 「…うん。」 わたしが答えると1回のみの野球拳が 始まりました。 「や~きゅ~う~をす~るなら~…」 その掛け声とともに お決まりの踊りを踊るわたしと重光くん。 この期に及んで重光くんの踊りは ホントにおかしいと言うか変で ちょっと笑いそうになっちゃいました。 …もうどうにでもなれっ! そう思ってわたしはじゃんけんに挑みました。 「アウト!セーフ!よよいのよい!」 … ……え? わたしはビックリして重光くんの顔を覗きました。 結果はわたしがパーで重光くんがグー。 つまりわたしの勝ち、重光くんの負け。 ちょっと沈黙があった後 「マジかよー。  俺ホントにじゃんけん弱いんだな。」 と言って鼻を掻きながら照れ笑いをして わたしの目を見てそう言ってきました。 …違うよ。 今確かにわたし見てた。 重光くんはわたしがパーを出したのを見て ちょっと遅れてグーを出してた。 つまりは後出し。 わたしのために後出しをして わざと負けてくれたんだ。 わたしは驚いた顔で重光くんの顔を見て 「え…あの…。」 わたしが言葉に困ってると 「オレの負けだ、良かったな。」 そう言って赤らめた顔で わたしに微笑みかけてくれました。 2年間想い続けた重光くん。 わたしはこういうさりげない優しさを たまに見せてくれる重光くんを 好きになったんだな。 改めて再確認しました。 今回のはさりげないなんてものじゃなくて なんでそこまで…って言うくらい 大きな大きな優しさだったけど。 ずっとわたしが重光くんの顔を見つめていると 流石に照れたみたいで顔を逸らして 「と、とりあえず下履けよ。  目のやり場に困る…。」 そう言われてようやくわたしは 自分自身がパンツ姿であることに気づきました。 「あ、ご、ごめんね。履く。」 そう言ってすぐさま ショートパンツを履きました。 安藤くんと加賀美くんはチェッといった感じで 残念がると ま、しゃーねーか。といった表情になり 「んじゃ高橋、約束は守ってもらうぜ。」 そう言ってにやけながら 重光くんの顔を見ました。 「わ、分かってるよ。」 顔を赤らめ 胸の辺りに汗をびっしょりかいた重光くんは 恥ずかしながらも覚悟はできてるといった感じで そう答えました。 「よし!4年最後の思い出だ!  高橋重光のご開チンショーの始まり~!」 そう言うと大いに盛り上がる安藤くんと加賀美くん。 「えー!?」「ホントにー!?」と 照れながらもちょっと見てみたいと言った 表情で笑い合うさゆと由香子。 わたしだって男の子のおちんちんに 興味がないわけじゃないけど 初めて見るおちんちんが重光くんのなんて…。 想像もしてなかったから 今この状況が本当に信じられなかった。 わたしがどうしよう…と困っていると 重光くんがわたしの側に寄って来て 両手を後ろに組み わたしの前に立ちふさがりました。 「馬鹿でごめんな。」 そう言うと重光くんは いつでもいいぞ、と言わんばかりに 動かなくなりました。 重光くんの心臓が ドキドキ動いてるのが 胸越しにでさえ分かりました。 ごめんなんて… わたしのほうは 感謝しなきゃいけないのに…。 ありがとうとも言えず ただ重光くんの顔を眺めるわたし。 ホントに彼のパンツ下ろさなきゃいけないの? …わたしが? そんな質問の答え分かっていた。 わたしには下ろすしか 選択肢がありませんでした。
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