小説

テイク7 scene1

「さようなら~。」 「さようなら~。」 今日の学校終わり。 「終わった~!!」 クラスの子たちが 満面の笑みで教室を飛び出してく。 校庭でみんなで遊ぶのかな。 それとも、家帰ってゲームかな。 「理奈ー、帰ろ~。」 友達からの下校のお誘い。 「うーん、一緒に帰りたいんだけどさ。  今日もアレで…さ。」 「あ、そっか~。残念。」 「ごめんね~…。」 「全然!なんで謝んの~?  お疲れ様。また明日ね!」 「うんまた明日!ばいばーい!」 「ばいばーい。」 …… 友達のお誘いを、やむなく断る。 ちょっと寂しいけど もう慣れたよね、流石に。 …ふぅ。 と、…あ 「お~い!校庭で野球やろうぜ!!」 「あー、オレ今日無理なんだ~。」 …… 「なんでだよ~、…って  あー、例のアレか。」 「そ、アレ。」 「んじゃー仕方ねぇか。  んでも出来るときはちゃんと付き合えよ~。」 「あいよ~。」 「んじゃな、また明日。」 「おう、じゃなー。」 教室の中でされる さっきのわたしとほとんど同じような会話。 誰だろう…、なーんて。 アイツしかいないじゃんね。 ……… そうこうしている内に 教室から1人、また1人と クラスの子たちが出ていき 気付いた頃には、残っていたのは わたしと1人の男子のみ。 ランドセルを早めに背負い 何を喋るでもなく ある時が来るのを、ただひたすらに待つ。 …と -プップー。 聞きなれた音、つまりは わたしたちの出動の合図が 耳に届く。 すぐさま教室の窓から その音のした方へ視線を向けるもう1人。 「…来たな。」 小さく呟く声が、わたしにも聞こえた。 「来たぞ~、理奈。」 今度は体をわたしに向けて そう言う。 「うん。」 「んじゃ、行くか。」 「うん。」 ようやく2人して、教室をあとにする。 校庭に止まっている、立派な車。 高いんだろうな、いつも思う。 その目の前に立つ、綺麗なお姉さん。 「学校お疲れ様、2人とも。」 「ほーい。」 「はーい。」 「ちょっと今日はいろいろ押してるのよ。  すぐ乗って!すっ飛ばすから!」 「今日はって、昨日も押してたじゃん。」 「…あれ、そうだっけ?  とにかく、乗った乗った~。」 「はーい。」 「ほ~い。」 2人して、車の後ろ座席へと乗り込む。 バタンッ。 すぐに車は走り出す。 わたしの名前は、新堂理奈。 小学5年生です。 「あ、体育着忘れた。」 「えー、明日も体育あるよ?」 「…い、今ならまだ引き返してもらえ…」 「今日は押してるの、諦めて。」 「…ちぇ。」 この男の子の名前は、神山大志。 もちろん同じ、小学5年生。 「今日もいいの頼むわよ~。」 綺麗なお姉さんからのちょっとしたプレッシャー。 はは…、まぁ、いつも通りにね。 車はグングンスピードを上げる。 向かう先はもちろん… そう、撮影現場。 同い年、同じ学校、同じクラス… 嘘みたいだけど わたしたち2人とも 子役やってるんです。
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