テイク7 scene2
「カットー!オッケーイ!!
今日は終了だー!お疲れー!!」
八嶋監督の掛け声で、今日の撮影も終了。
ふぅ…、疲れた~。
「終わった終わった~。」
演技を終えた大志が、あくびをしながら
セットから下りてくる。
「お疲れ~理奈ちゃん。
明日もよろしくね~。」
「はいっ、お疲れ様です!」
お母さん役の渡辺さん。
凄く優しくて演技派で、尊敬する女優さん。
「今日もお疲れ。
ゆっくり休んでな~、また明日!」
「あ、お疲れ様です。」
お父さん役の玉置さん。
大御所さんなのに凄い気さくな俳優さんで
今回共演できて、ホント幸せ。
…て、そっか。
今わたしたちが撮影してるドラマを
ここで紹介。
連続ドラマ『江崎家の非日常』
【キャスト】
江崎トオル(45) … 玉置吾朗
江崎ユキコ(43) … 渡辺あつ子
江崎カズミ(11) … 新堂理奈
江崎ミノル(10) … 神山大志
他
【あらすじ】
何処にでもある幸せな家庭、江崎家。
そんな江崎家で繰り広げられるドタバタ劇…
非日常的な日常…
果たして、江崎家の運命は…!?
…なーんて、大袈裟に謳ってるけど
実際はホントに何処にでもある
幸せな家庭を舞台にした
コテコテのホームドラマ。
今のところ20話まで撮影が終わっているけど
トオルお父さんに浮気疑惑が浮上したり
ユキコお母さんが家出をしたり
いろいろ事件が起きたりはするけど
最後はいつも、家族円満みんな笑顔で終わるような
幸せ色満開の作品になってる。
わたしの役柄は、江崎家の長女で
強気な女の子のカズミ役。
そして1つ年下の弟で
ヤンチャな長男、ミノル役を演じているのが
神山大志。
「なんでオレが弟なんだよ~!!」
って愚痴ってたな~。
本当は同い年なのにね。
そこはわたし、ちょっと優越感。
「いよっ、お疲れちゃん。」
と、噂をしてたらやってきた。
「お疲れ。」
子役仲間で今回の共演者でもある
神山大志。
同い年、同じ学校で同じクラスの人が
同じ芸能界で、子役と言う仕事をしている…
ただそれだけでも驚きなのに
今回同じドラマで
しかも姉弟役で共演することになって
ビックリなんてもんじゃなかった。
学校の友達とかにも
凄い凄い!とか、からかわれたりとかで
結構大変だったりしたんだよね。
…それはお互いさまなんだけどさ。
まぁ、全然嫌じゃないけどね。
いい経験になるって言うか
いい刺激になるって言うか…
…なんてね、ちょっと女優気取り。
「お、理奈ちゃんに大志!
お疲れお疲れっ!!」
八嶋監督。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様でーす。」
「いつもいつも押しちゃって申し訳ないな~。
明日もよろしく頼むよ!ほいっ。」
明日の台本、21話分…かな。
「んじゃ、ちゃんと歯磨いて寝ろよ~。
芸能人は歯が命だからなっ。はははっ!!!」
「ほーい。」
「はいっ。」
帽子にサングラスに顎ヒゲ。
見た目からなにから全て、正に監督と言った感じ。
撮影中は凄い真面目だけど
普段は凄く垢ぬけた人なんだよね。
あー見えて、結構大者なんだよ?
「理奈ー、大志ー。
急いで着替えちゃいなさーい。
外で待ってるからね。」
…と
綺麗なお姉さんのマネージャーさんからの
お帰りの一言。
もうこんな時間か~…。
「んじゃ理奈、また後で。」
「うん。」
急いで楽屋へと向かう。
-帰りの車の中。
「今日もお疲れ様、2人とも。」
「ほーい。」
「はーい。」
「今日の演技は~、85点って
とこかしらね~。」
「えー。」
「厳しい~。」
「ふふ、それだけ期待してるってことよ。」
嬉しそうに笑うマネージャーさん。
こんなこと言ってるけど
ホントにわたしたちに尽くしてくれる
優しいお姉さんなんだ。
「…あ!!」
疲れ切った体に
急に隣から、大志の大声が響く。
「なに~?」
「…明日の算数、…宿題出てたよな?」
「…うん、練習問題3でしょ?」
「…マジかー!
やってねぇよ~…。」
「えー!?」
もう、大分前にやってくるように
言われてた宿題なのに…。
まぁ、仕事との両立もしなきゃだし
大変なのは分かるけど…
それはわたしだって一緒だもんね。
…はぁ、しょうがないなぁ~。
「じゃあ、わたしの写す?」
「えっ、マジでっ!?超助かるわ~。」
「今回だけだよ~?」
「はいはい、恩に切ります理奈さま。」
「全く…。」
「マネさーん。
オレの家寄らなくていいから
理奈の家でオレも降ろして~。」
「え?
…まぁいいけど。
早く寝なさいよ~?」
「大丈夫だって。」
もう夜も遅い。
明日も朝早い…けど
大志が家に来ることになった。
はぁ、駄目な弟。