お見舞いしに。|Kune Kune Project

小説

お見舞いしに。

わたしたちの町から少し離れた位置にある総合病院。 友達の夏帆と一緒に、普段なら来ることなどまず無い こんな偏狭の地に来ているわたし。 5階、506号室、握り締めたメモにそう書いてある。 階段でゆっくり上がっていき ようやくお目当ての病室の前へと辿り着く。 どうやら個室らしい、都合がいいぞ。 「…た、ただのお見舞い…だよね?」 不安そうにそう聞く夏帆。 「うん、…んー、ただの?  …んまぁ、お見舞いだよお見舞い。」 意味深に答えるわたし。夏帆が不審がるのも無理はない。 この病室、目の前の病室の中にいるのは クラスのおちゃらけ男子、野村だ。 どう考えても、わたしと野村の仲から考えて お見舞いに行くなんてありえない。 きっと夏帆はそう思っているんだろう。 自分で言うのもなんだけど、野村とわたしは いつも口喧嘩が耐えない 周りから見たら、犬猿の仲と言う言葉が良く似合うような そんな関係なんだ。 それ故に野村には 日頃のうっぷんが溜まってるのも事実なわけで。 そりゃまぁ、両足骨折しちゃったって聞いたときは ちょっと驚いてドキッとしちゃったけどさ。 先生の話じゃ、動くことは出来ないけど ピンピンしてるって言うしさ、なーんだって思ったよね。 …でね、お見舞いなんて絶対に行ってやるもんかって もちろん思ったけどさ。 もしかしたらこれチャンスなんじゃない?って ひらめいちゃったわたしがいたんだよね。 …何がチャンスって?んまぁそれはこれから。 夏帆にはちょっとビックリかもだけどさ。 いてくれた方が、野村のショックもデカいでしょ。 「…じゃ、入ろっか。」 夏帆に笑顔でそう告げ、ドアを3回コンコンコンと鳴らす。 「はい。」と言う返事など聞く前に わたしは病室のドアをガラガラガラと開ける。 不安の色が消えない夏帆を背後に従え わたしは病室の中へとズカズカと入っていく。 病室のベッドの上で寝ているのは、もちろん野村。 頭を上げ、突然入ってきたわたしと夏帆を確認し 分かりやす過ぎるくらい、動揺したリアクションを見せる。 「…な、なんだよ。」 「なんだよって何よー、お見舞いに来てあげたんでしょ?  …ね、夏帆。」 「…う、うん。」 「……、余計なお世話だ。」 「…な、何よそれ!!せっかく来てやったのにっ!!」 「べ、別にオレ来てくれなんて言ってないっ!!」 「…もう、相変わらず素直じゃないないんだからっ!!  …はい、お花。」 「……。」 「…えー、無言―!?」 「…う、うるせぇなぁ!!!…ありがとよっ!!!」 なんだ全然元気じゃん、まぁ心配なんて 全然全くしてなかったけどさ。 ちょうど窓際に花瓶があったから 水をさして持ってきた花を飾る。 うん、少しは華やかになったかな、なんて。 ベッドの横にある椅子に、夏帆と一緒に腰掛ける。 照れてるのか、野村は目を合わせようとはしてこない。 「まだ治りそうにないの?」 「…両足骨折だぞ?そんな簡単に治るワケねぇだろ。」 「ふーん、なるほどね。」 まだまだ完治は程遠いらしい、うん、予定通り。 普段から野村なんかと接点の無い夏帆は もの凄く所在無さげにモジモジしている。 野村にとっても 夏帆の登場はわたし以上に意外だったのかもなぁ。 そんなことを1人思っていると 病室のドアが開き、誰かが入って来る。 …綺麗な看護婦さんだ。 看護婦さんの登場に、急に狼狽を見せる野村。 「…あら?お友達?」 ニッコリとした優しい笑顔で わたしたちを見てくる看護婦さん。 「はい、お見舞いに。」 わたしも満面の営業スマイルで対抗する。 「そか、じゃーまた後でいいかな?  そろそろかな~と思ってきてみたんだけど。」 その言葉に顔を真っ赤にしてする野村。 「だ、大ジョブですっ!!平気ですっ!!!」 「そ、じゃ、お友達もゆっくりしていってね。」 「はーい。」 -ガラガラガラ。 そう言って、ものの30秒程で出ていった看護婦さん。 「……何しに来たの?看護婦さん。」 「…、な、なんでもねぇよっ。」 「そんなワケないじゃん、何か用があったんでしょ。」 「ないって!!」 「…ふーん。」 何怒ってるんだか。…あ、そう言えば 「そ言えば野村さ。」 「…なんだよ。」 「…トイレとかってどうしてんの?」 「!?」 頭の上に!マークと?マークを同時に浮かべ 確実にそれを聞かれたくなかったと言う顔になる野村。 冬なのに、汗が顔中を覆い始めている。 ふふん、ビンゴ。 「…もしかして  おしっこ手伝いにきてくれたんじゃない?  さっきの看護婦さん。」 「…!?」 「…分かりやすーい、別に隠さなくたっていいのに。」 「…う、うるせー!!」 照れちゃって、可愛いとこあるじゃん野村。 「…じゃー、看護婦さんたちには  もう全部全部見られちゃってるんだ。」 わたしの言葉に、顔が面白いように染まっていく野村。 隣りに座る夏帆も、顔が赤くなっている。ウブなんだから。 「…もしかして  おしっこ我慢してるんじゃないの?野村。」 「…し、してねぇよっ!!……ん。」 …ふふ、分かりやすーい。 駒はすべて揃ったね、もう逃げられないよ、野村。 「…はいはい、お姉さんが出してあげますね。」 「!?」 「…な、何言ってんだよっ!!!」 多分ここら辺に…、あったあった。 ベッドの下に置いてあったお小水の瓶を手に取る。 「…じょ、冗談だよ…な?」 「ん?何が?手伝ってあげるって言ってるだけじゃん。」 「だ、だけって…!!うぅ。」 「ちょっともう、漏らさないでよ?」 「…く、な、なんで急に…!!」 「おしっこってそう言うもんジャン。じゃ。」 ゆっくり立ち上がり、ベッドの真横に立つわたし。 夏帆は、信じられないことが起こりそうな現実を ただただ口を押さえて見つめている。 横たわる野村を、瓶片手に見下ろす。 ゆっくりと掛け布団をまくる。 パジャマ姿の野村が現れる。 「…じゃ、脱がすね。」 そう言って、本当は震える手で、野村のパジャマの下に 手を伸ばす。 -ガシッ。 足は動かずとも、手は動く。 わたしの手に掴みかかって来る野村。 「…何?」 「…しょ、正気かよっ…!?」 首元まで染まった野村。我慢の限界だけど わたしの行動にも信じがたいものがあるのだろう。 …当然だよね。 …でも ……でも …わたしだって… 昔見られたんだ…!!! 「これで…、おあいこっ!!!!」 野村の手を振り切り、思い切りパンツごと 膝辺りまで引きずり下ろしてやる。 「…きゃっ!!!!」 夏帆の悲鳴とともに、ベッドの上に現れた 野村のおちんちん。 …ぴょこんっ!!! 我慢の限界のサインか、それとも元々なのか わたしにはそれが、小さく、もの凄く小さく感じた。 突然の仕返しに驚き、隠すことも忘れて わたしの顔をマジマジと見つめて来る野村。 …どんな顔してたんだろう。 まだそんなこと覚えてたのか…!? 野村の顔は、そんな風に言っているように見えた。 ……良く分からない沈黙が流れる。 その間、野村がずっと隠すことなく、小さなそれを 恥じらいながらも丸出しにしていたのは わたしへの懺悔の表れだったのかな。 「…これで、おあいこ。」 「…そ、…そうかよ。」 丸出しの野村が、顔を真っ赤にして呟く。 きっとわたしも、顔が真っ赤だったに違いない。 夏帆はただただ、モジモジ。 「…よしっ!気が済んだっ!!夏帆、帰ろっ!!」 「…え、えぇ!?」 「ちょ…!!」 片手に持つお小水の瓶を、野村のアレに近づけることなく 野村の手に届かないであろう、花瓶の横に置いてやる。 「ちょ、こ、こらっ!!おあいこじゃねーのかよっ!?」 「おあいこだよ、さっきのでおあいこ。  これはまた別。わたしのただの悪戯~。」 「あぁ!?」 いつものぶっきら棒野村に変わる。 「だって、別におしっこしたくないんでしょ?  さっき言ってたじゃん。」 「…くっ。」 「ってか、はやくその小さなおちんちん隠せば~?」 わたしのその言葉に、顔を爆発させて恥じらい 急いで両手でそれを隠す野村。 「…くそぉ!せっ、せめてその瓶近くに置いてけっ!!!」 「やなこった~!!夏帆っ!帰ろ~!!」 「え、え?えぇ!?…う、うん…!!」 「…て、てめぇ!!!」 「お大事に~、学校で待ってるよ~!!じゃねーん。」 …ガラガラガラッ-。 ガラガラガラッ。 …病室の廊下を、全速力で駆けていく。 「ちょ、ちょっと~!!!」 夏帆の声が聞こえる。 …わたしサイテーなことしちゃったかな。 サイテーなことしちゃったよね。 …でも、なんだか胸のツッカエが取れたような 良く分からないけど、清々しい気分。 …これでおあいこ。 …にしても、野村のちっちゃかったな~。 あんな可愛いの付いてんだ。 …わたしの裸じゃ、割りに合わないっつーの。 -でも、そんな野村が、本当は好き。 …なんて、死んでも言えない。
-おしまい-
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