小説

成長くらべっこ 0

―成長するって、凄く不思議なことだなぁ… ふと、そんなことを思う時があります。 そもそも、人っていつ成長するんでしょうか。 鏡の前に立って、そこに映る自分を見つめてみる。 昨日となんら変わりのない私が、そこにはいます。 それはきっと、昨日に限ったことじゃなくて 一昨日、そのまた前の日と比べたとしたって まるで変わらない私の姿が、そこにはあるはずです。 じゃあ、もっと前、更に昔の私、例えば 小学校1年生の頃と自分と比べたら。 そこにはきっと、今の私からは 想像することが出来ないかもしれないほどの 幼い少女がいるはずです。 今の私と比べると まだまだ身長もなくて、眼鏡だってまだかけてなくて 胸だって、こんなになかった。 一昨日、昨日、明日、明後日。 少しだけ過去、少しだけ未来の自分は 今現在の私と何も変わらないのに その繰り返しを辿っていけば、あの頃の私がいるはずなのに ちょっとズルをして、一気にあの頃に戻ってみると そこには、今の私とは全く別の私がいる。 ―不思議だなぁ… つくづく、思ってしまいます。 きっとそれは、外見だけに限ったことじゃなくて 中身や感情にも言えること。 例えば あのオモチャが欲しくて、お店の前で泣き叫んでいた私。 なんであんなもののために、本気で泣いていたんだろう。 数えればきりがない。 なんであんな小さなことで、悩んでいたんだろう。 なんであんなにあの遊びが、楽しかったんだろう。 例えば 昔のテストの答案用紙を見返すたびに、思う。 なんでこんな問題が解けなかったんだろう。 なんでこんなことができなかったんだろう。 考えれば考えるほど、不思議で不思議で でも、その度にいろんな思い出が溢れて なんだか凄く嬉しくて、なんだか凄く可笑しくて。 でも、ふと思うと 昔は出来ていたのに、今は出来なくなってしまったことも 出来るようになったことと同じくらいにあって、そう思うと なんだか無性に悲しくて、なんだか無性に寂しくて。 でも、そんなことに思いを馳せるたびに 自分も大人になったんだなぁと、実感出来たりするのです。 いつ成長した?いつから大人になった?なんて そんな質問に答えなんてない。 きっと自分が気付かないだけで、気付かない内に 少しずつ、成長してる。 鏡に映った私も、実は 昨日より、ほんの少しだけ大人になっていて 明日また、ほんの少しだけ大人になっている。 きっと私だけじゃない。 あの子やあの子、…もちろん、あの人だって。 心も…、体も、あの頃とはもう違う。 笑ったり、泣いたり、怒ったり、喜んだり そんなたくさんの過程の中で、少しずつ成長をして ふと、ちょっと振り返って、昔の自分と比べてみたり 現在進行形で誰かと比べてみたりすることで 知らない間に、大人の階段を登っていることに気付く。 そんなものだと思います。 …って、何を鏡に向かって 1人で感傷にふけってるんだろうね。 ……、 ねぇ小春。 明日だよ。…明日、…だよ。 どうなんだろうね、どうなるんだろうね…。 …… …なんて、ね。
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