小説

成長くらべっこ 5

- 期末テスト5日前 -

ふう。 今週も無事授業が終わり、テスト範囲も全て明かされました。 後は何処まで頑張れてるか…かな。 「小春~、帰ろっ。」 「うん、帰ろ~。」 …と 教室を出ると、そこに誰かを待ち伏せる人の姿が。 …これは多分。 「お、小春っ!!」 …やっぱり、ね。 「フミちゃん、どうしたの?」 「おう、いやな、この後ちょっと暇かな~、って思てな。」 「この後…は、」 特に用事はなくて、家に帰って勉強する予定だけど… 「…あ、あれ、もしかして私、お邪魔かな?」 「…え、あいや、別にそんなこと…」 「ううんいいっていいって!それじゃ小春!月曜日にねっ!  ばいばーいっ!」 「あ、ば、ばいばーい!ご、ごめんねっ!!」 昇降口の方へ足早に消えていく友達の女の子。 「…なんか、勘違いされてもうたかな?」 「分かんない、…けど、…でも多分、大丈夫。」 「そか。」 「…で、どしたの?」 「あぁ、今日この後なんかあるか?」 「いや、特に、勉強しなきゃ…、くらいかな。」 「そか、んじゃ、ちょっとだけ時間くれへん?」 …… ―久々に来た、フミちゃんの家、フミちゃんの部屋。 あんまり変ったところはないな~、って印象かな。 「…ん、どした?」 「いや、なんでも。」 「そか。」 「…うん、でも、なんか不思議な感じだな~、って。」 「なんが?」 「いやだってさ、一昨日までは全然喋ったりしなかったのに  急にこんなに頻繁に話すようになったから、さ。」 「そらまぁクラス違うとそんなに会わんようになるし  家が近いわけでもないしな。」 「まぁね。」 「んでも、久々に絡んでもこうやって普通に喋れるんは  いい関係なんちゃうかな~て、俺は思うけどな。」 「うん…、そだね。」 嬉しそうに話すフミちゃんの姿に、自然と私も笑顔になる。 「…勉強は順調?」 「まぁ~、せやな、お陰さまで、ぼちぼちと。小春は?」 「私は、至っていつも通り、普通、かな。」 「はは、余裕やな。」 「さぁ、どうでしょう。」 余裕なんて、そんなことあるわけ、ないよね。 …と 「それで?今日はどしたの?」 「あ、せやったな。  いやな、昨日いろいろ整理しとったらな、  面白いもんが見つかってん。小春に見せたろ思て。」 そう言って自分の机の引き出しを開け、何かを取り出す。 「…ほれ、これや。」 なんだろう…、差し出された写真…?を手に取り それに目をやると…   …!? 「…ひえぁ?!」 「ははっ、なんちゅう声出してんねん。」 「…え、で、でもこれって…」 そこに写し出されていたのは、はだかんぼ、 すっぽんぽんの男の子と女の子の姿。 カメラに向かってピースをしてる、…何も隠してない 全部、…全部見えちゃってる。 …って言うか、これって………!! 「ちょうど5年前、小1だったときの俺と小春や。」 「……ぅ。」 だ、…だよね。多分一番最初の罰ゲームを執行した あの日の写真だよね…。 そう言えばフミちゃんのお母さんが写真撮ってたような 記憶もあるような気もするけど… で、でもこれは…… 「い、いいの…?ぜ、全部見えちゃってるよ…?」 「それはお互い様やろ。大体それ、もう5年前のやで?」 「…で、でも……」 「…なんや小春。5年前の俺のちんちんに  興奮しちまったんか。」 「そ、そんなこと……!!」 そんなこと、…あるわけ…… 「…はは、ホンマ小春はおもろいなぁ。  こっちが恥ずかしくなってまうわ。」 鼻の上をさすりながら、少し照れるフミちゃん。 「…ち、違……!!」 「でもまぁ、こうやって  昔の小春のぺちゃんこのおっぱい見ながら  どれくらい大きなったんやろなぁ~って想像するんも  なかなか興奮するわな。」 「…!!へ、変態っ…!!」 「それもお互い様やろ。」 「…、も、もうっ……。」 「はははっ。」 …なんかもう、完全にからかわれてる…、私。 「…で?こんなもの見せるために呼んだの?」 「こんなものとはなんや~、結構盛り上がったやん。」 「盛り上がったって…。」 「いや、言うてもこれで最後やん?  だからいろいろやってな、派手に盛り上げて  楽しめるとこは楽しもうって思てな。」 「…うん、それは…、いいことだと、思う…けど……」 「少なくとも俺はこの写真で  テスト勉強の意欲があがったけどな。小春はどうや?」 「…、し、知らないよっ、そんなの…」 「はは、それは良かった。  お互いに利益があったみたいやな。」 …もう、勝手なことばっかり言って。 …… …、でも、そう言えば 「そう言えば…さ。  なんでこのテスト比べっこ始めたんだっけ?」 「…え?…なんや急に。」 「いや、なんか理由があったはずじゃない?  良く考えたら、あんまりそこら辺記憶にないんだけど…  フミちゃん覚えてる?」 「ん?…んー…、どやったかな。  なんか、その場のノリちゃう?」 「えー、そんな感じだったかなぁ。」 「…分からん、俺はよー覚えとらんな。」 「そっか、…なんだったかな…。」 なんか理由があったはずなんだけど… …… 「…そんなことより、小春。  明日暇か?」 「えー、明日も何かあるの?」 「だから、暇かって。」 「私は、明日は家でゆっくり…、勉強とか…」 「んじゃ暇やな。」 暇では…ないよ。…私だって結構、混乱しちゃってるんだから… 「明日、野球クラブの練習があるんや。  小春見にこいや。」 「え、…なんで?」 「そんなん、小春だけその時間に勉強とかしとったら、不公平やん。  公平を期すために、な、付き合えや。」 「…うーん。」 …まぁ、いいけど…さ。 「それに、カッコいい文弥くんの姿見て  ますます勉強したくなってまうかも!…知れんよ?」 そう言って徐に立ち上がり バットを振る素振りを誇らしげにして見せるフミちゃん。 …ふふ。…なんだかなぁもう。…まぁ 「分かった。見に行く。」 「おう、んじゃ、朝10時に学校の校庭な。」 そんなわけで、明日はフミちゃんの野球クラブの練習を 見にいくことになりました。
ページトップへ