小説

成長くらべっこ 1

- 期末テスト7日前 -

ホームルームの終わった放課後。 2組の教室の前で待ち伏せ。 少し…、ドキドキ。なんだかんだで久々だからね。 ―ガラガラッ。 ようやくホームルームが終わったみたいで 中から2組の子たちが続々と出てくる。 あ、…と、…えーと…、 …あ、いたいた。 4人グループで教室から出てきた男の子の中の1人。 ボロボロになったランドセルで、すぐに分かりました。 「フミちゃん!」 少し躊躇いつつも、近づきながらそう声をかける私。 それに気づき、私に振り返る。 「……。  …おぉ、小春。」 なんだ、珍しいな。 みたいな顔で私の顔を見てくる。 「どしたん?」 久々の軽いノリに、安心する私。 「あ、えっとね。…今日暇?」 「…ん?今日か?今日は…  一応こいつらと野球するつもりやけど。」 待ちを食らい「なんだぁ?」と言う顔をした男の子たちを サラッと目で確認する。 あー、そっか。…どうしよっかな、…でもまぁ 「じゃー、明日でいいやっ。」 「ん?なーんやそれ、気になるやん。」 「いや、…ね。今日ちょうど1週間前だから…さ。  そろそろ決めときたいかなぁ~…って。」 別に、今日じゃなくてもいいんだけどね。 「……。  あぁ。…ん、何の?」 …え。 「何のって…、来週の今日、水曜日、テストだよ?」 「いや、それくらいは分かっとるけども。」 …… …えーっ!!! 「…え、だ、だから、テスト…、あ、あの……」 まさかの肩すかしに、その場で狼狽してしまう私。 忘れちゃったの…?今年もやるって言ってたのに… なんかずっと身構えてたのがバカみたいじゃ… 「…はは、じょーだん。」 …え? 「何をあたふたしてんねん。忘れてるわけないやん。」 ふと見上げると、そこにはいたずらっ子の笑顔が。 …やられた。 無駄に取り乱してしまった自分が急に恥ずかしくなる。 でも、相変わらずの調子とその笑顔に 自然と笑顔になっている自分もいました。 「そか。テストももう最後なんやな。」 「うん、そだね。」 …って、やっぱり忘れてたんじゃない。もう。 「おい文弥~、いつまで待たせんだよ~。」 痺れを切らせた男の子の中の1人が 私たちの方に近づいてきました。 「あー、すまんすまん。  えっと…、悪い、今日は俺パスするわ。」 「えー、なんでぇ。」 「え、いいよ、別に今日じゃなくても…」 「でも、早い方がええやろ?」 「…え、それは、…まぁ。」 ―じーっ…。 「…なになに?2人でデートでもするのか?」 「…ぇ。」 そ、そんなわけ…。 何かを感じ取ったのか、他の男の子2人も近づいてくる。 「え、2人付き合ってんの!?」 「マジで、お熱いですね~。」 「違うわっ!そんなんちゃうわっ!!」 少し照れながら、でも笑顔で、それを否定する。 …そ、そーだそーだぁ。 「ふーん、まぁ、いいや。しょうがない。  ま、ここは1つごゆるりと…、じゃーまた明日なっ!!」 「ひゅーひゅーっ!!」 「…ったく。じゃーな~。」 男の子たち3人が昇降口の方へ ときどきこちらを振り返りながら、消えていきました。 「ふぅ。」 1つ溜め息をつく。私もつられて、それに倣う。 「さて、何処で決めよか?」 「え?」 「え?って、罰ゲームを決めるんやろ?」 「あ、…まぁ、そ、そうだね。」 「教室、掃除終わった後とかやったら使えるけど…」 「…あ、私の家でもいいよ。」 そのつもりで今日、ちゃんと片付けてきたんだし。 「おー、そか。んじゃ小春の家で。」 「うん。」 「久々やな~行くの、いつぶりやろ。」 「丁度1年ぶりじゃない?」 「…そう言えばそうやな、丁度去年の今頃か。」 「うん。」 こんなにちゃんと喋るのも、1年ぶりなんだけどね。 それなのに普通に会話できているのが、本当はちょっと 不思議だったり。 「とりあえず、行こか。」 「うん。」 2人で肩を並べて、私の家へと向かいました。
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