小説

成長くらべっこ 3

「今までの罰ゲーム思い返してみて、ふと思ったんや。」 少し間を取ってから、そのまま続けるフミちゃん。 「今まで5回テスト比べしてきて、俺1回も勝ててへんやん?  なんでやと思う?」 「…え、それは…、分かんない。」 「もちろん小春のが断然頭がええって言うのはある。  でも俺やって、そんなに大馬鹿ちんってわけでもないはずや。  本気出したら結構いい点取れると思うんや。」 「何それ~。どう言うこと?」 「つまり、今までは小春とテストの点数で競う言うても  正直本気で小春に勝とうて、思うことが出来てなかったわけや。」 「ふ~ん…。」 素っ気ない相槌を打ちながらも、内心ドキドキな私。 何故かは…、良く分かんない。 「なんで、今まで俺が本気になれんかったか。  分かるか?」 「…良く分かんない、けど…。」 「それはな、罰ゲームがぬるかったからやと思うんや。」 「…うん、まぁ、ね。」 「…あれ、なんかちょっと言い訳っぽく聞こえへん?」 「ふふ、…ちょっとね。」 本来の目的は 1年間でどれだけ学力が上がったかを競うことにあったから 負けた方が何かをすると言うのは、言って見ればオマケみたいなもので でもその罰ゲームを考えたりするのが私としては楽しくて それを思うとテストも楽しいなって思えたりもしてたんだけど 結局のところ、そんな私の楽しみに フミちゃんをずっと巻きこんでしまっていた、と言う結果に なっていたのかな。 そう思うと、ちょっと申し訳なくなって ちょっと寂しくもなったりしたりして。 「別に退屈やったわけやないで?  こうして5年も続けてきてるわけやし  なんだかんだ楽しんでる自分もおったわけやし。」 私の不安を見透かすように、フォローを加えるフミちゃん。 こう言うところは、変に気が利くんですよね。 「で、続けてきたこれも、今回で最後やん?」 「うん、中学行ったら、もう無理だからね。」 「私立やったもんな。」 「うん。」 4月からは、私は私立の学校へ。 なので、フミちゃんとのくらべっこは正真正銘これで最後です。 「最後くらい、本気で競いたいと思わへん?」 「私はずっと本気だったけどね。」 「あ、すまん。」 「ふふ、謝ることないよ。で?」 「おう、でな?そのための罰ゲームやと思うねやん。」 「うん。で、どんな罰ゲーム?」 回りくどいなぁと思いながらも、でも内心バクバクしながらも その質問をフミちゃんに投げかけてみる。 自分でも良く分からないくらい緊張をする私に 返ってきたフミちゃんからのその案は… 「『負けた方が勝った方の前で、素っ裸になる。』  ってのはどうや?」 …え? ある程度身構えていたものの 単刀直入に出されたその罰ゲームに、キョトンとしてしまう。 「…す、すっぱ…、すっぱだ……?」 「そや、素っ裸。すっぽんぽんや。」 ちょっと照れながら、でもちょっと嬉しそうに、そう言う。 「…ま、またぁ。何言ってるのフミちゃん。そんなの…」 「冗談で言ってるんちゃうで?これでも結構考えたんや。」 結構考えたって…、それはあまりにも… 「昔の罰ゲーム振り返っててな。思ったんや。  小5、小4、小3、小2…  遡るにつれて罰ゲームが子供っぽくなってくけど  昔の罰ゲームほど、今やろうとすると恥ずいと思うんや。」 「…う、うん。それは…確かに…」 「その究極が小1や。  お風呂で背中流す、なんて、今やれ言われたらめっちゃ恥ずいやろ?」 「…うん。」 「でもあの頃の俺らはそれをやったわけや。  何が凄いって、風呂入って相手に素っ裸見られることは  罰ゲームん中に入ってないってことやんな。  あの頃の俺らには、それを罰ゲームにしようと思うて考えが  1ミリもなかったんやモンな。」 「そりゃあ、まだ子供だったし…ね。」 「やな。  だから逆に、大人になった今、…んまぁまだ子供やけど  小6になった今、昔やってたことを罰ゲームにするんとか  面白いんちゃうかな~、と思ったわけや。」 「…で、でも……」 なんか、想像するだけで恥ずかしくなっちゃって なんて言ったらいいか分かんなくなってしまう私。 「…でも、す、素っ裸……?」 「じゃあ小春は下はええわ。上だけ見せてくれれば。  俺は全部脱いだる。これでどーや?」 「上…?」 上って言っても…… 「あの頃よか、大分おっきなってそうやしな。」 …!? そう言いながら、私の胸のあたりをチラッと見てくるフミちゃん。 「…ちょ、そ、…そんなとこ見てたのフミちゃんっ!!」 一気に恥ずかしくなって、つい声を荒げてしまう。 「そら俺かて男や~。  あの頃と比べたら、そう言うことにそれなりに興味持っとるわ。」 反省するのかと思ったら、開き直っちゃった。 どうしよう…、なんて迷ってる暇もなく 「分かった。変態言われる覚悟で正直に言うわ。  俺は、小春の成長したおっぱいが見たい。  そのためならテスト頑張れる気ぃするわ。」 「…へ、変態っ…!!」 「何とでも言えっ。」 珍しく少し顔を染めながらも、バンバン本音を言っていくフミちゃん。 でもどこか、やっぱり顔はにやけていました。 「でもまぁ、俺1人で決められることやないしな。  小春の考えも聞いとかな。」 「そ、そんなのダメに決まって…」 「小春は興味ないんか?」 「…え?」 割り込むように質問をしてくる。 「だから、俺の裸に興味ないんかって。」 「…は、はだ……か………?」 「…ったく、だから  俺のちんちんに興味ないんかって聞いてるんや。  言わせんな、恥ずかしい。」 「…ちん……!?」 フミちゃんの口から出たそのワードに、一瞬頭が真っ白に。 フミちゃんの……?………  …!? そ、そんなの…、み、……見たいわけ……、見たいわけ…… …… 「あれ、なんや。  意外と小春もそっち系に興味持ち始めてるんか。」 「…そ、そんなことあるわけ…!!」 「…小春もエロぅなったなぁ。」 「だから違うって……!!」 「ほんなら見たくないん?俺のちんちん。  結構自信あんねんで?」 そう言って、ズボンの上から両手を押さえつけ その部分を強調させるように私に見せてくるフミちゃん。 フミちゃんのそこに、ポッコリとした山が現れる。 「おっきそうやろ?」 「やぁだぁもうっ!!!」 「一応な、宣伝しとかな。」 「興味ないからそんなのっ!!」 「ホンマか?こん中見たくないん?」 「……そ、それは……っ!!」 それは……、… 「…はは。分かりやすいなぁ小春は。」 「…え?」 「決まりやな。」 「…え。」 「今年の、最後の罰ゲームは  『負けた方が勝った方の前で、素っ裸になる。』に  大決定や。」 唾を飲み込む音が、妙に頭の奥で、大きく響きました。
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