小説

成長くらべっこ 11

-罰ゲーム 2日前-

今日は、一昨日にやった期末テストが 一気に全部返ってくる日。 当然だけど、もう、ドキドキ。 テストが終わってから全く会ってないフミちゃんにも 今日、全てのテストが返ってくる、はず。 ついに結果が出る。 勝ちと負けが決まる。 見る方と見られる方が決まる。 揺らす方が、決まる。 …触る方と、触られる方が…決まる。 1時間目、国語と漢字テスト。 「それじゃあ、返すぞ~、安藤~。」 …… … … …… 5枚の答案用紙が、一思いに朱入れをされて、 私の元へと返ってきました。 合計点を計算し…、…、そっか。 …ふぅ。…どうなんだ…ろう……、…とか。 ホームルームが終わり、廊下を見ると 3日ぶりに見る人影が、誰かを待っているその姿が 真っ先に目に飛び込んできました。 「…ふぅ、終わったな。」 「…うん。」 誰もいなくなった2組の教室で、フミちゃんと2人。 初めて入った他クラスの教室。無条件に、緊張してしまう。 「ここが俺の席や。」 「…うん、知ってるよ。」 「隣り座りぃ。」 「…え、いいの、かな。」 「いいに決まっとるやろ、誰もおらへん。」 「そか…、じゃ。」 フミちゃんの隣りの席に腰掛ける。 「実は、初めてやんな。」 「…何が?」 「…いや、隣り同士に座るんよ。」 「…あ、あぁ…、そう言えば…、そう…、だね。」 1年生から4年生まで同じクラスだったけど 隣り同士になったこと、そう言えばなかったな。 …なんか、不思議だよね。 なんでこんな関係に、なったんだろう…ね。 「…まぁ、ええわ。  でな、…いきなりやねんけどな。  明日の土曜日、野球クラブの最後の試合があんねん。  6年の俺らにとっての最後の試合やな。」 「…え?」 …ついつい、身構えていたから、不意を突かれて 変な声を出してしまった。 「…あ、あぁ、うん。」 「でな、またまたお願いやねんけどな。  最後やしな、結構大切な試合やから  出来れば明日までは野球に集中したいねん。」 「うん。」 「だからな、出来れば罰ゲーム関連のことは  全部終わった明後日の日曜日にしたいんやけど  …どうやろ?」 「もちろん、それでいいよ。」 即答、当然だよ。 「そか、そんなら良かった。悪いな。」 「全然、それの方がいいに決まってるもん。  頑張ってね。」 「おうよ!」 多分、テスト終わってからの一昨日と昨日は 極力野球のことを考えるようにしてたんだろうな。 それよりも、テストと試合の時期が近いのに あんな罰ゲームを受け入れてくれたなんて そっちの方がビックリだよね。 …と、言い出したのはフミちゃんの方か。…うん。 …と、あ、そうだ。 「明日の試合は、何処で?」 「…ん?  あぁ、うちの学校でやんで。  …お、もしかして、また見に来てくれるん?」 「まぁ、うん。暇だし。行こうかな。」 「おぅ、来い来い。  今度はギャラリーそれなりに来ると思うから  別に気まずくなったりせぇへんと思うわ。」 「それは、凄い助かる。」 「んまぁ、文弥くんを独り占めは  出来んくなってまうけどな。」 「はいはい。」 「なんや、最近のマイブームか?はいはいってやつ。」 「べ、別に…。」 「はは、まぁええわ。」 「…うん。」 「…おう。」 「……。」 「…んまぁ、とりあえず。」 「ん?」 「…とりあえず、テストは全部返ってきた。  小春もそうやろ?」 「…うん、…返ってきた、全部。」 「…おう。」 「……。」 「…で、それだけや。」 「うん。」 「とりあえず、変な詮索も心理戦も  今はなし、で頼むわ。」 「了解です。」 「素直でよろしい。」 「はいはい。」 何故かは分からない。 ずっと、フミちゃんの顔を見もせずに じっと、ただ目の前の机を見つめながら、喋ってた。 「んじゃ、俺これからみんなと校庭で  明日に備えて練習してかなあかんから。」 「うん、分かった。」 「校門まで一緒に帰るか?ちょっと着替え時間かかるけども。」 「い、いや、先帰るよ。」 「そか、悪いな。」 「いえいえ。」 ゆっくりと立ち上がり、 「じゃ、また。」 「おう、また、明日。」 何故か敬礼のポーズをされ、何故か私もそれに倣う。 教室を出て、学校をあとにする。 今はただ、ただ何も考えずに。 …せめて、明日までは、ね。
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