小説

少年裸祭り 【壱】

西島 耕助
  • 西島 耕助
  • 2009/01/01 00:02
  • 西島家 耕助の部屋
-2008年も終わった。 気づいたら終わっていた。 例のごとく笑ってはいけないなんとやらを見ていたからだ。 …などということはどうでも良くて。 ついに来ちゃったかぁ、2009年。 いつもなら新しい年の幕開けに 意味もなく清々しい気持ちになって お年玉にワクワクして、旨い食いモンを頬張って… 特別な感情など抜きに、得することばっかりの正月を 満喫していたはずだった。 でも今年は違う。 そう、あのイベントが、祭りがあるんだ。 これもいつもなら特に気にすることもなく 1人の傍観者として参加していただけなんだけど 今回はそう、1人の出演者として 参加することになってしまったんだ…。 俺たちの地区では、毎年新年に裸祭りと題して その年の年男が選ばれて、褌姿で町を練り歩き 最後に海に浸かって身を清めると言う禊を行っている。 その年男と言うのが この地区では年齢が決まっていないらしくて 誰が決めているのかは知らないけど 毎年年齢は様々だった。 去年は確か、近所の兄ちゃんがやってたから 年男は22歳だったってことかな、多分。 で今年はその年男の年齢が12歳になって 俺たち6年生にその矛先が向けられたってワケ。 もう何十年も続いてる祭りなんだけど こんな年齢の低い子がやるのは初めてのはずって 母さんが言ってたな。 全く本当に誰が決めたんだよな、勘弁してくれよ。 そうそう今度の祭りは小学生がやるってことで 少し前から、今回は「少年裸祭り」だ、なんて 言われていたりもしてるみたいだ。 …この前ポスターも出来てたな。 全く…注目度ばっかり高くなっちまうじゃねえか。 今年6年の俺は 流石にそれが決まったあたりからそわそわし始めてたけど まさかな…選ばれるなんて思ってなかったよ。 この地区には4つ小学校があるんだけど 年男の年齢が12歳に決まったとき 各学校から小6の男子を3人ずつ、計12人を選んで 参加させることにしたらしい。 これもどういう方法で決めているのかは分からないけど とにかく、今年俺は見事、不幸にも 年男に選ばれてしまったのだ。 しかもうちの学校からの他の2人ってのが 同じクラスの鈴谷孝輔と山井浩介って奴で 3人ともコウスケって名前だってことで 俺の周りでちょっとした話題になっちまっていたりする。 「コウスケトリオ」なんてからかってくる奴らもいたな。 っつーか3人とも同じクラスから選ばれて しかも全員コウスケとか なんか意図的なものを感じざるを得ないんだけど。 まぁそんな根本部分を俺たちが知りえるわけないし 偶然の事実として受け入れるしかないんだけどね。 でもきっといろんな奴見に来るよなー。 少なくともうちのクラスの奴らはきっと。 やだなー、マジで。 何がやだってさぁ。 褌姿をクラスの奴ら、特に女の子に見られるのは もちろん恥ずかしくてやなんだけど それ以上に、着替えるときがやなんだよな。 今小6だけど、多分俺今まで誰にも 自分のアソコ見られたことない自信がある。 もちろん男にも。 プールの時間とかだって絶対スカートタオルで隠すし 修学旅行のときも 絶対見られないように上手く誤魔化した、はず。 なんでそんな見せなくないかって言ったら そりゃあ、小さいからなんだけど…さ。 ズボンとパンツのゴムを引っ張って自分のアソコを見る。 ちょろんと申し訳程度についてるだけの俺のちんこは 誰が見てもため息が出てしまうほどの、ミニマムサイズだ。 自分で言うのもアレだけど…。 なんでこんな小せえんだよなー…マジで。 将来大人になったあととかも 絶対いろいろ損しそうだよ…。 …とにかく、これだけは誰にも見られたくない。 俺にとってはこの命に代えても守りたいほどの 究極の秘密だ。 でもきっと今度の裸祭りだけは、そうはいかない。 褌なんて1人で着れるもんじゃない。 おそらく誰かに着けてもらうしかないんだろうけど そのときはきっと、その着けてもらう人に 俺のちんこをさらすことになる…。 大人の人だろうけど…さ。笑われる…かな。 でも絶対鈴谷とか山井にだけは見られたくない。 どうにかして死守しなきゃ…な。 俺のプライドのためにも。 テレビは続けざまに次のバラエティー番組へと変わった。 年末年始はお笑い番組ばっかりだな…。 …俺が笑いものになるのだけは避けなきゃいけない…。 新年から笑いを取るお笑い芸人を見て そんなことを思っていた。
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