小説

少年裸祭り 【弐拾伍】

石田 佳奈
  • 石田 佳奈
  • 2009/01/03 09:03
  • 神社の石段
祭りが始まって、男子たちが石段を降りてくる。 鈴谷はわたしから見て2列目の左にいるはず…。 ほら、いたいた。 わたしのお父さん 実は今回の少年裸祭りの役員の1人なんだよね。 確か桃子のお母さんもそのはずだけど。 祭りの打ち合わせとか わたしの家でやること多かったみたいだから その度にわたし、隣の部屋で聞き耳立ててたんだよね。 なんと言うか…あまりいいことじゃないけどさ。 だから今回の祭りの概要は大体把握できてる。 男の子たちの配列もバッチリ。 …こうして見ると 鈴谷ってやっぱり、色白いよね。 手前から山井、西島、鈴谷の順で どんどん色が抜けていくみたい。 …別に鈴谷が色黒でも、わたしは好きだけど…さ。 目の前を通過していく褌姿の鈴谷。 …やっぱり、ドキドキしちゃったな。 教室でみんなの前に立って 学級委員としてその日の総括を喋る 私服姿の鈴谷。 体育の時間に、得意のバスケをプレイする カッコいい体育着姿の鈴谷。 着替えのとき、女子がいるにもかかわらず 平気で上も下も脱いじゃう、パンツ1丁姿の鈴谷。 いろんな鈴谷を見てきたけど 褌姿の鈴谷を見たのは、もちろん初めて。 多分おそらく絶対、今まで見てきた中で 一番すっぽんぽんに近い格好…。 それだけでもドキドキしちゃうけど わたしは今日、その褌の中身までもを見ようとしてる。 それが鈴谷のことを嫌いになって諦める 一番いい方法だと思ったから…さ。 …馬鹿だよね、わたし。 そもそもおちんちん見て その人のこと嫌いになるのかってことすら 良く分かんないのにね。 もっと好きになっちゃったら…どうしよう…。 …い、いや!そんなこと絶対にない… …はず。 通り過ぎていくコウスケトリオを目で見送る。 ふと目に留まったのは、やっぱりお尻。 初めて見た真っ白な鈴谷の綺麗なお尻。 あのパンツの中には、こんな可愛いお尻が隠れてたんだ…。 なんて、勝手に1人でドキドキ。 …ごめんね鈴谷。 多分わたし今日、その前も見ることになっちゃうと思う。 …うん、鈴谷の、おちんちんを。 わたしを、嫌いにさせて。 …と、男子集団はあっという間に石段を降りきって 木の影で隠れて、見えなくなった。 この後は海岸までの道を練り歩いて、海に浸かって終了。 …なんだけど 実は海に浸かる前に、ある場所に寄るんだよね。 海岸のすぐ近くにある民家なんだけど そこで身を清める前に、儀式みたいなことをやるんだ。 まぁ、毎年やってるみたいなんだけど。 …で、実はその民家っていうのが わたしの家なんだよね。 別にわたしの家が由緒正しき祭りに 何か関係がある家庭なのかって聞かれたら 全くそんなことはないみたいなんだけど。 ただ単に、海辺に近い家だから選ばれたってだけ。 ってお父さんは言ってた。 もちろん毎年わたしの家が使われてるわけじゃない。 今年が始めて。 多分お父さんが役員だからって理由で 単純に今年はウチになったんじゃないのかな。 …と意味もなく勝手に予想してるんだけど。 …で、この事実を知ったとき わたしの中の小さな悪魔が産声をあげてしまったわけ。 裸祭り…褌姿…由緒正しき祭り…わたしの家… このチャンスを逃す手はない。 鈴谷のことが好き過ぎるからの行動。 分かってほしい… …誰に? …知らない。 弟の隆は、もう家でスタンバイ済み。 裸祭り見に行きたいって言ってたけど ポケモン買ってあげるからって言ったら 喜んで家で待機することを承諾してくれた。 …にしても、 はぁ…こんなことしてわたし …罰当たったりしないかな…。
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