小説

少年裸祭り 【参拾参】

石田 佳奈
  • 石田 佳奈
  • 2009/01/03 09:35
  • 脱衣所の乾燥機の中
…はぁ、はぁ。 狭い…。 もうかれこれ10分くらいかな。 わたしは自分の家のお風呂場の脱衣所にある 少し大きめの乾燥機に中に隠れている。 ホント馬鹿みたいだけどさ。 …これが鈴谷のおちんちんを見る 一番いい方法だと思ったんだよね。 わたしの考えた計画はこう。 まず 神主さんの厄付けが行われるのが、わたしの家ってことから 見るのは絶対ウチでがいいなって思った。 いろいろと有利だしね。…有利ってなんだって話だけど。 でもきっと1人じゃ上手くいかない。 でも弟の隆が手伝ってくれれば、上手くいく気がした。 全て隆にかかってるんだけどね。 上手くやってくれてればいいけど。 まず、男の子の集団がわたしの家の庭にやってくる。 これは事前にお父さんたちの話を聞いてたから知ってた。 そこで厄付けするんだけど 1人3~4分かかって、1人ずつそれをやるらしいから 結構終わるのって時間がかかるみたいなんだよね。 だから、その時間を使って なんとか鈴谷に家の中に入ってもらえないかなって。 そこで思いついたのが 隆の『書初め中に足滑らせちゃったよ作戦』。 …はっきり言って無理やりすぎて馬鹿馬鹿しいんだけど わたしの頭ではそれくらいしか思いつかなかった。 男の子たちが 庭のストーブの周りに集まったのを確認してから 隆にその集団の中に飛びこんでいってもらう。 …そう、筆を持ったままね。 そしてそのまま鈴谷目掛けて …いや、鈴谷の褌目掛けてタックルしてもらうんだ。 それで、鈴谷の真っ白の褌が、真っ黒に汚れる。 古くから伝わる祭りの言い伝えでね。 白い褌は、汚れのない心を意味してるんだって。 そんな神聖なものを汚すなんて はっきり言って罰当たりだけど 白い褌で海に浸かることがこの裸祭りでは大事らしくって 浸かる前ならまだそんなに重大なことではないみたい。 …って完全にこれはわたしの勝手な見解なんだけどね。 今回だけはホントに、神様ごめんなさい…。 それで、そういう言い伝えとかは きっと役員の人たちも 流石に知ってることだと思うんだよね。 だから、もしそんな墨なんかで汚れたりしてしまったら そのまま海に浸かる禊に参加させるワケにはいかない。 …そう、褌を取り替える必要がある。 そこでまた隆の出番。 上手いこと誘導して家の中に代えの褌があることを 自然にほのめかしてもらわなきゃいけない。 ここは隆の演技力が試されるところなんだけど… 小3の弟にそんな演技力求めるなんて少し酷だけど ポケモンがかかってるとなれば、隆だって本気になるはず。 そのために今年のお年玉をほぼ全額投資したんだから。 …頑張ってもらわないと困る。 で、そこまでいったら あとはこの脱衣所まで誘導してきてもらえばいいだけ。 褌の代えは、この脱衣所にある鏡の下の小物入れの中に 入ってる。…というか、入れた。 なんでそんなとこに入ってるんだって聞かれたら もう答えようがないけど…ね。 きっと鈴谷と 褌を締める役員の人が1人くらいくるんだと思うけど その締め込みシーンを わたしがこの乾燥機の中から覗くって言うシナリオ。 ちなみにこの乾燥機 蓋が少し黒いガラスになってるんだけど 何故か分からないけど 外から人が入ってるのを確認するのは かなり困難なんだよね。 そのくせ中から外の景色は凄く良く見えるって言う。 マジックミラー的な感じ? とにかく今回の計画には 持ってこいのアイテムだったんだよね。 …はっきり言って全体を通して余りにも怪しすぎるし 展開も唐突過ぎるけど きっと鈴谷なら全部飲み込んでくれる…。 あいつ、凄い優しくて素直で 人を疑うってことを全くと言っていいほど しない人のはずだから …きっと大丈夫。 しかも相手が小3の男の子なら、なおさら。 …なんて、人のお人好しな性格に漬け込んで それを利用して さらに隠れて大事な部分を見ようとしてるなんて… ほんっっっっっと! わたし最低だよね。 どんな罰が当たっても、もう文句言えないよ。 でも、それくらい好きで、それくらいもう 嫌いになりたいんだよね。 …嫌いになりたい……嫌いなりたい…? もうなんか、良く分かんないけど、とにかく- 「こっちですこっちです。」 そんなことを考えていると 脱衣所の外から人の声が近づいてくるのが聞こえ始めた。 今のは、間違いなく隆の声…。 -ガチャ…。 ドックン。 来た。 乾燥機のガラス越しに 脱衣所内を観察する。 隆に続いて、鈴谷が入ってくる。 鈴谷の褌は…あ!墨で黒くシミがついてる。 そっか…隆巧くやったんだ。 その後ろには役員の人…ドキドキ… ここまで計画通りだ。 …って言うか、役員の人って…桃子のお母さんじゃない? …そうだ絶対そうだ。 びっくりしたぁ。 そっかぁ桃子のお母さんに褌締めてもらってたんだ…。 なんか凄く、意外と言うか、ビックリ。 と、そんなことで驚いてる暇もなく 目の前の光景はわたしのシナリオどおりに進んでいく。 …隆がチラチラとわたしの隠れている方を見てくる。 バカっ…!!!そんなみたら怪しまれるでしょ! …きづかれて…は、ないみたい…だな。 「…で?代えの褌っていうのは何処に…」 「あ!ここですここです。」 そう言って わたしが隠した小物入れの中をおもむろに漁り 白い代えの褌を取り出す隆。 そこはもうちょっと探す仕草とかを 織り込んでって言ったのに…! …なんて思ってもしょうがないよね。 見ちゃうかもだわ監督気分だわで ドキドキはピークに達してる…。 「おー、これなら…代えとして使えそうね。」 「そうですか、うわー良かったぁ。」 「それにしても  良くこんなとこに褌があるの覚えてたわねー僕。」 「…ですね。」 「い、いや、その…  なんとなく印象に残ってたって言うか…  と、とりあえず、代用品になるみたいで良かったです!  それじゃ僕失礼しますね!」 「おう、ありがとな。書初め頑張れよ!」 「…え、あ、は、はい!ありがとうございます。」 -ガチャ。 そう言って逃げるように脱衣所から出て行く隆。 にしてもガチガチだったなぁ隆。 自分のこと『僕』なんて言ってる隆、見たことないよ。 …って言うかそれよりも あんなことされたのに 「書初め頑張れよ。」って言ってる鈴谷に 少しジーンと来ちゃった…。 それにもの凄い罪悪感…、ごめんね鈴谷、ホントに…。 「凄い礼儀正しい子ねー。」 「そうですねーはははw」 大丈夫、どうにか怪しまれてないみたい。 「よし…と。  じゃあチャチャッと付け替えちゃおっか。  丁度いいし、ここでいいわよね?」 「あ…はい、お願いします。」 ついにこのときが来ちゃった…。 目の前に写る褌姿の鈴谷。 その中身を見るときが来た… 鈴谷の褌に手をかける桃子のお母さん。 ちょっとずつ、ちょっとずつ、褌が解けていく。 そして、あっという間に目の前の鈴谷は 産まれたままのすっぽんぽん姿になった。 鈴谷の真っ白お尻…何も着てない鈴谷… ドキドキドキドキ…!!!! …… … …って言うかちょっと待って。 ここからだと、鈴谷のお尻しか見えなくて おちんちんが見えない…。 …… …そっかぁ! アングルのこと計算に入れるの忘れてた…! こっち向いてくれないと…見れない…。 どうしよう…もちろんこれでも十分ドキドキなんだけど… …で、でも…… …おちんちんが…見たい…。
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