小説

少年裸祭り 【弐拾六】

木下 奈緒美
  • 木下 奈緒美
  • 2009/01/03 09:05
  • 神社の石段
男の子たちが過ぎ去ったのを確認して 私は録画停止ボタンを押す。 と、とりあえず、良く撮れた…はず。 … …… 「先生、先生!移動しましょうよ!」 その声にハッとする。石田さんの声だ。 「…あ、そ、そうね!移動しようか。  あ、…ちょっと先行っててもらえる?  ちょっとあそこのお手洗いに寄ってからいくから。」 「ちょっとー先生。  バッチリ撮るってあんなにやる気満々だったのに。  張り切りすぎて  トイレ行くの忘れちゃってたってことですかー?w」 「あはは!先生もうドジっ子ー!w」 「も、もうしょうがないじゃなーい!  とりあえずすぐ行くから!大丈夫大丈夫。  あなたたちも早く行きなさい、見失っちゃうわよ~。」 「んふふw はーい。」 女の子3人組が石段を下りていくのを確認して わたしは神社近くのトイレに急ぎ、個室に駆け込む。 …いや、ね。 別に我慢できなくなって お手洗いに来たわけじゃないのよ全然。 ちょっと、びっくりしちゃってさ。 …だってさっきまでわたしが撮ってた うちのクラスのコウスケトリオ…。 褌姿って言うのはもちろん聞いてたけど …なんでだろう、こんなはずじゃなかったのに… すっごい、ドキドキしちゃった…。 なんて言うのかな、良く分かんないけど いつも教室でワイワイ騒いでる わたしの可愛い可愛い生徒たちが ほとんどすっぽんぽん姿で歩いてる姿を目の当たりにして その事実を頭の中で噛み砕いていく内に ドンドン恥ずかしくなって…ドキドキして… …いけないいけない! 大切な生徒を対象に何変な感情になってんのよ! 教師としてあるまじき行為よ! しっかりしなさい奈緒美! …だ、大体あの子たちまだ、小学校6年生じゃない。 まだまだお子ちゃまなのよ。 … ……きっと男の人のあんなに裸に近い姿なんて 見たの初めてだからだろうな…。 …いや、水泳の時間とかに 彼らの水泳パンツ姿は全然見てたんだけどさ。 それと大して変わんないはずなのに …なんでなんだろう。 と言うか褌姿以上の男の人の裸を 今まで見たことがないって …どんだけ男っ気のない人生を歩んできたのよって話よね。 どーせ、この年でも経験0ですよーだ…。 …と言うか、あの仲良し3人組も あのコウスケトリオの褌姿を 目の前で見てたのよね。 …何にも感じなかったのかな。 さっきの感じでは余裕綽々って感じだったわよね。 …最近の6年生の女の子って肝がすわってるのねぇ…。 …わ、私が単にそっち方面の免疫が なさ過ぎるだけ? 教え子の女の子たちより男の知らないって …どんだけよね。 …だめだめこんなことさとられたら大変。 ここは新米ながら大人で頼り甲斐のある先生にならなきゃ。 卒業直前のこの時期に変に着飾って 偽りの姿を生徒たちに見せ付けるみたいで 少し億劫だけど それとこれとは別問題よね。 いい大人の見本になってあげるのも 立派な教師の使命よね。 …って、何本気で考えてんだって話よね。 全く。 ドキドキがある程度落ち着いたのを確認して 私は腰を上げる。 手に持つビデオカメラ。 ここには さっきわたしがうつした彼らの映像が刻まれている。 …もう一回見てから行く? …駄目よ駄目駄目。 今は急いで戻って、続きを撮ること優先。 当たり前じゃない。 …家に帰ってから、じっくり見れば… …って何言ってのもう! はぁ、もう行くわよ奈緒美! … ……もぅ。
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