小説

少年裸祭り 【拾六】

西島 耕助
  • 西島 耕助
  • 2009/01/03 08:26
  • 神社裏の小屋
ついに鈴谷の着替えも終わって、俺の番がやってきた。 やってきてしまった。 つまりは、俺の長年の秘密が たった1人に解禁されるときが来たってわけだ。 心拍数がヤバイ、早く終わってくれ…。 鈴谷が戻ってくるのと同時に、山井が 「グッドラック!」 と親指を立てて微笑んできた。 …もういいよ、付き合いきれん。 「…鈴谷の奴、もう生えてるんだなwマジびっくりしたw」 さっき鈴谷が着替えてる最中に、山井が言ってきたことだ。 …やっぱりまだ生えてないのが普通だよな? 「西島は?もう生えてる?」 その質問に俺は、別に嘘をつく意味もないし 「…いや、まだ…だよ。」 と応えておいた。 「だよなーw」 そう言って嬉しそうに笑う山井。 少しだけ、本当に少しだけだけど 問題が緩和された瞬間だった。 …さて、俺は意を決して 間宮のお母さんの元へ歩を進める。 一応男としてのプライドもあるからな。 心の動揺を見透かされるような素振りは見せれない。 堂々と行く。 目の前で立ち止まり、褌を差し出す。 辞職届を上司に突きつける平社員のような気分だ。 …いや実際そんな気分味わったことないし 良くわかんないけど なんとなく、そんなイメージだ。 「お願いします。」と俺が言うと 間宮のお母さんは優しい笑顔で頷いてくれる。 絶対良い人なんだろうけどな。 今の俺には悪魔の微笑みにしか見えない。 そして少し間があったあと 死の宣告のようなその言葉が発せられた。 「…えっと、それじゃあ、パンツ…脱いでもらえるかな?」 …いやだ。 いやだいやだいやだいやだいやだ! いやだぁぁ! …なんて言えるわけないよな。 少し照れたように笑いながら そう言う間宮のお母さんの瞳が 俺のちんこを待ちわびているような ギラギラした光を宿しているようなものに見えてしまって 俺は更にたじろいだ。 …でも、もうどうしようもない。 俺は後ろの奴らを気にしながら ゆっくりと、パンツを脱いだ。 … ……手でちんこ隠しながら、な。 まぁもしかしたら見られなくて済むかもしれないっていう 薄すぎる期待をまだ捨ててなかったんだよな。 …この状況でも、充分俺としては危機、なんだけどさ…。 パンツを抜き取って隠したまま、俺は静止する。 まともに顔も見られねぇ…情けねぇなぁマジで。 しばしの沈黙の後 間宮のお母さんは少し困ったような表情で 「…あー、ごめんね。  恥ずかしいだろうけど、すぐ終わるから  ちょっと手ぇどけてくれるかな?」 その言葉で俺は最上級の絶望を感じたけど… もう、腹をくくろうと決心した。 …きっと俺が小さいのを気にしてるって伝えれば 間宮のお母さんもきっと分かってくれるよな。 …男としてのプライドはズタボロだけど…さ。…よし。 「あ、あの…笑わないでくださいね。」 屈辱以外の何ものでもなかったけど 俺はそう、間宮のお母さんに告げた。 俺の言葉に一瞬、ん?みたいな表情をする。 …意味を汲み取ってくれたかどうかは分からないけど これ以上引き伸ばすのもマズイ… 俺は恥ずかしさを頭で思いっきり振り払って 静かに…手を解いた。
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