小説

少年裸祭り 【拾壱】

西島 耕助
  • 西島 耕助
  • 2009/01/03 08:01
  • 神社裏の小屋
…結局昨日は全く眠れなかった。 寝不足だぜ全く…でも眠気なんて全然ないけどな。 昨日の夜から心臓鳴りっぱなしだ、情けねぇ…。 今、神社の裏のそれなりに大きめの小屋にいる。 周りには違う学校の知らない奴ら9人に、鈴谷と山井。 いわゆる今日の裸祭りの参加メンバーってやつだな。 それに、役員の大人の人が何人かちらほらといる。 その中には間宮のお母さんの姿もあった。 女の人は…間宮のお母さん1人だけみたいだな。 やっぱ昨日の山井の電話は本当だったんだな… はぁ、もう最悪だ。 「…なんだ西島、元気ねぇな。大丈夫か?」 鈴谷の急な問いかけにドキッとする。 「…そ、そうか?俺ならいつもどおりだけど。」 「そうか、すまんなんとなく元気なさそうに  見えちまったんだ。わりぃわりぃ。  とりあえず今日の祭り  力合わせていいモンにしような!」 「…お、おう。」 …なんだい鈴谷くんその元気たっぷりのやる気は。 いつも熱い奴で こいつのそう言うとこ全然嫌いじゃないけど たまに理解できないときがあるんだよな。 …まったく、その精神構造を分けていただきたいよ。 ……ふぅ、と大きく息を1つ吐くと、隣からサッと山井が 俺の心臓あたりを服の上から触ってきた。 「…な、なにすんだよ!急に。」 「おおおおー、ドキドキしてんなーやっぱりw」 「…べ、別にしてねぇよ。  ちょ、ちょっと寒いから心拍数上がってるだけだよ。」 「まぁまぁ、別にいいじゃんか。  そっかそっか、やっぱり西島もか、良かった良かった。」 そう言って嬉しそうに笑う山井。 なんなんだよ一体、どういつもこいつも すっかりお祭りムードってか? 俺には理解できねぇな。 「はーい参加者の皆さん、ここから褌持っていってねー。  持った人から役員の人に着けてもらってくださーい。」 はぁ、ついに着たか、このときが。 俺らは3人で揃って褌を取りにいく。 …ん? 「…褌って…これが褌なのか?ただの布じゃんか。」 思わず声を出す俺。 「…確かに。  なんかもっと最初から  『褌です』みたいな形状してると思ってた。」 お前にはあまり同意したくないが、同じ考えだ、山井。 「褌って言ったら普通そんなモンだよ  これは多分六尺褌…かな。  確か長さが大体六尺くらいだから  そう呼ばれてるんだよ。」 流暢にそう語るのは鈴谷。 「おー兄ちゃん、詳しいな!その通りだよ。」 「…あ、やっぱり、…な!」 …なんだその知識は。予習か?感心だねぇまったく…。 「ほら、持ったら着けてもらってきな!  君らはえっと…第二小学校の子だよな。  じゃああそこの角の間宮さんのとこだな。」 「はい。」ととりあえず返事をしてそちらに向かう俺ら。 「…いよいよだな。くくく。」 山井がそう囁いてくる。 お前の心の中は、今一体全体どうなっているんだ? 俺としても 確かにいよいよであることには同意できるけど 語尾のその不敵な笑いは何なんだよ、気持ち悪ぃ。 間宮のお母さんのところへ行くと 優しそうな笑顔で俺らに微笑みかけてきてくれた。 「あ、持ってきた?よし、じゃあ  チャチャッと着けちゃおっか!」 軽いなーノリが、まぁ、お願いしますとしか言えないが。 「…誰から着ける?誰でもいいけど。」 その質問に顔を見合わせる俺ら。 「…別にどの順番でも問題ない…よな?」 鈴谷は相変わらずの楽観ぶりだ。 まぁ、うんとしか言えない…な。 「…それじゃあ一番右の…山井くん…だよね?  じゃあ山井くんから。  そのあとは順番に、ね。」 なるほど、着ける順番は山井、鈴谷、俺、らしい。 最後かー…っつってもどうリアクションしていいのやら…。 「他の子もすぐ着けられるように、服脱いどいてね。」 その言葉に一斉に服を脱ぎ始める俺ら。 …ゆっくりゆっくり、脱ぐ。 別にパンツ意外なら全然恥ずかしくないんだけど…さ。 そうこうしてる間に、俺らは3人全員パンツ1枚になった。 「はい、じゃー山井くん、おいでー。」 その言葉に元気よく返事する山井。 一瞬俺に向かってニカッと笑うと 間宮のお母さんの元へ歩いていった。 …だから何なんだよその笑みは。 そうこうしているうちに俺らにケツを向けた山井は 間宮のお母さんの目の前で、サッとパンツを脱ぎ去った。 マジかよー、あいつやるなぁ… 山井なんかに感心している俺…情けねぇ。 でも少し男気感じちまった、丸出しとはあのことだな。 …俺ももうすぐアレをしなきゃいけないんだな…やだなぁ。 はぁ。 気晴らしに鈴谷に話し掛けよう… と、そちらを向いた瞬間…! まだ鈴谷の番じゃないのに 鈴谷はパンツを脱いじまいやがった! ちょ…おま…! その光景に驚く間もなく さらに驚く光景が俺の目に飛び込んできた。 俺の2、3倍ある鈴谷のちんこにも驚いたけど その上には…ちょっと毛が生えてた。 …マジかよ!早くね!? …ってか小6ってもう生えてるモンなのか!? もしかして、山井もじつは生えてて 今さっき間宮のお母さんはそれを見たのか!? …ちょっと待てよ、待て待て!また問題増えたじゃんかよ! 小さくて無毛…それが異常なら とんだ笑いモンじゃないかよ…。 おーおーマジかよー、泣きそうだよ俺、逃げてぇよぉ…。 「…あ、あんまジロジロ見んなよ…な。」 俺の視線に気づいたのか 鈴谷が恥ずかしそうに忠告してきた。 照れるなよな…気持ち悪ぃ。 「西島も脱いどけよな、すぐくるぞ。」 すまん、その言葉には絶対に賛成できない。 …はぁ、頭痛くなってきた、事態が更に悪化するなんて… とにかく…精神的ダメージをいかに小さくするか…だよな。 なんとか、切り抜けなきゃな…。 …そう言えば今気づいたけど、さみぃ。
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