小説

少年裸祭り 【四拾九】

山井 浩介
  • 山井 浩介
  • 2009/01/03 10:34
  • 砂浜
さみーよぉ。…でも恥ずいよぉ。 全速力で砂浜を走る俺らは 今、あろうことか素っ裸だ。 なんでこんなことになっちまったんだろうなぁ! 公衆の面前でアソコ丸出しって こんな恥ずかしいことないよな…。 しかも絶対に手で隠しちゃいけないんだ。 男同士の約束だモンな。 一丁前に承諾した鈴谷の意見だけど やっぱこうやって海から出て 自分自身がホントに素っ裸なのを感じると 恥ずかしいよなぁ。 …いや、な、見てる人が全部大人の人だったら 俺全然いいんだよ、多分。 むしろ興奮するって言うか… きっと鈴谷も西島もそう思ってるはずなんだ、うん。 でも、同じ年くらいの女子とかに見られるのって やっぱなんか恥ずかしいんだよ。 きっと2人もそれで恥ずかしがってるんだと思う。 …どうせ俺らのアソコ見て きゃーきゃー叫びながらもしっかり見るんだろうな。 …なんかすげぇ負けた気分だ。 どうせなら堂々と見ろって思っちまう。 …そう考えると やっぱり間宮さんは大人で良かったよなぁ。 堂々と見ながらも、たまに見せる恥じらい…。 完璧だった。 …やべ…だから思い出すとまた…! …まぁ、この寒さで勃つことはないか。 …いつみも多分見てるんだろうな。 あいつはそう言う恥じらいとか一切持ってないからな。 昔はよく一緒に風呂とか入ってたけど そのときも俺のアソコ、ジロジロ見てたモンな。 それこそ堂々と。 …でもあいつには たまに見せる恥じらいが足りないんだよな。 おしいんだ…おしいんだよなあいつ。 …とか何をこんな状況で俺は考えているんだか。 …ま、他でもない。 寒さと恥ずかしさを紛らわせるために わざといろいろ考えてるんだよ…!!!! やっぱ…さぁみぃよなぁぁあああ…。 でももう俺らは止まることはない。 西島のペースに合わせて全速力で走っていく。 …やっぱ西島かっけぇよな。 隣から泣き声聞こえるけど…恥ずいんだろうな。 言っちゃ悪いけど、ちっこいもんなぁ。 俺だったらきっと 肩崩して隠しながら戻るんだと思う。 …でも西島は鈴谷の意見を飲んで 観客に自分のちっさいアソコを見られる道を選んだ。 きっと俺らの何倍も恥ずかしい思いをしてるんだよな。 しかも両手が塞がってる恐怖ってのも 結構大きいと思うんだ。 えらい…えらいぜ西島! 俺はお前についてくぜぇ! 俺も恥ずかしいけど…絶対手で隠したりはしない! 男同士の約束だ!!! …気がつくと目の前には人だかりが広がっていた。 悲鳴やら歓声やら風の音やら走る足音やらで 耳から聞こえてくる音は、完全にカオス状態だ。 俺の心の中も 恥ずかしいやら実は興奮しているやらで 同じくらいにカオス状態。 でもやっぱりアソコを隠したくなっちまう衝動に駆られる。 不意に左手をアソコの付近に添えてしまう俺。 …駄目だ駄目だ! 西島には隠すって言う選択肢すらないんだ! 泣きながら、あんなちっさいアソコを丸出しで 頑張ってんだ! そう自分に言い聞かせて、震える左手を制御する俺。 …ごめんな西島、頑張る材料にお前を使っちまって。 そんな心の葛藤をしていると もう、すぐ目の前にあの家が見えてきていた。 …ふぅ…ホントに俺らやったんだな。 これは偉業だよマジで。 鈴谷…西島…あとちょっとだ…!! カオスな音とカオスな感情。 後一歩でその異次元空間から開放される家の玄関の直前。 そのカオスの 混沌とした渦をかき消すように飛び込んできたのは …あいつの声だった。 「コウーーーーー!かっこよかったぞーー!!」 … ……空気読めよあのやろぉぉぉおおおおお!!! 最後の最後で顔から火が出そうなくらいの 恥ずかしさに襲われた。 もう…俺…あいつに翻弄されてばっかだな…。
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