小説

少年裸祭り 【伍拾弐】

間宮 和子
  • 間宮 和子
  • 2009/01/03 10:45
  • 石田家の庭
禊が無事に終わった。 …無事? いや、無事ではない…よね。 今わたしの目の前には 鈴谷くんと山井くんと西島くんがいる。 ストーブの周りに集まっていた任務を終えた彼らに どうしても言わなければならないことがあって… 当然よね。 「ほんっっっっっっっっっっっとに、ごめんねっ!!」 それしか言う言葉ないわよね…もう。 ほんっとにビックリした。 わたしは役員の関係上 禊を見たかったのは山々なんだけど この石田さんの家の庭で、待機することになってた。 何事もなければいいけど… そんなことを願って待っていたんだけど …そうはいかなかったみたい。 おかしいなと思い始めたのは 庭の外の観客の方たちの声。 …いきなりもの凄い熱気に溢れたような感じで 笑い声とか悲鳴とかが凄かったの…。 何事かと思ってドキドキドキドキしながらここで待ってたら …数秒後に現れたのは 私が締めたはずの褌を身につけていない すっぽんぽんの3人組だったの。 …もう役員全員びっくり。 他の学校の男の子たちも目を点にして驚いてた…。 すぐさまバスタオルを持ってって渡した。 とりあえず…おちんちんは隠さないと…ね。 鈴谷くんは案外落ち着いてて、笑顔だった。 凄い精神よね、大勢におちんちん見られた後なのに。 山井くんは恥ずかしいと言うよりは もう寒さが限界みたいだったみたいで おちんちん丸出しのまま バスタオル持った私に抱きついてきた。 …可愛かった…けど、不謹慎ね、いけない。 で、最後に西島くんだけど… もう小さい子みたいにワンワン泣きながら来て… もうなくなっちゃうんじゃないかってくらいに 小さくなったおちんちんが もの凄い私を罪悪感で締め付けた。 さっきまで見て喜んでた私が…もの凄く情けないわ…。 私がバスタオル渡しても泣くばっかりで しょうがないから私がタオルを巻いてあげたんだけど…。 …しょうがないからってなによね、全く。 今はだいぶ落ち着いて縁側でバスタオル1枚で座ってる… もちろんもう1台縁側にもストーブを置いてあげたけど。 …ホントに全部私のせいよね。 ホントに、なんてお詫びを言えばいいか分からない。 結局私の大人気ない精一杯の謝りに 3人共「気にしないでください。」って言ってくれたけど 心の中ではきっと憎んでるわよね。 …うん、しょうがない。 むしろ憎まない方がおかしいわよね。 …私自身はもちろん、他の役員の方に厳重な注意を受けた。 ホント…反省してます。 舞い上がって締め方忘れるなんて…大人として失格です…。 ちなみに、なんで隠さないで来たの?って言う 他の役員の方の質問に対して 鈴谷くんが代表して 「伝統的な祭りの決まりですから。  肩を崩すなんてこと絶対に出来ませんでした。  …素っ裸で禊をしてはいけないって言う決まりは  なかったはずですよね?」 と受け答えしていた。 …大人ね…私ちょっと感動しちゃった。 役員の人たちも、拍手でその行為を称えてた。 …それに引き換え私と言ったら…ホントに最低ね。 ごめんねみんな…こんな馬鹿があなたたちの担当で。 …はぁ、なんか泣けてきたわ。もう…。 うん、そうよね。しっかりしなきゃ。 このあと褌で神社に戻って初めて 祭りが終わったことになるんだからね。 …もう一回締め直す役は…わたし…なのかな? それは分からないけど… とにかくみんな…ホントにホントに本当に…お疲れ様。 …そんな申し訳ない気持ち一杯で 任務を終えた3人を見てると… … …あれ? 庭の中にあの仲良し3人組が入ってきた…?
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